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【デビッド・ボウイとアート】

僕にアートの素晴らしさについて教えてくれたのは、デビッド・ボウイです。現在に至るまでの僕の音楽、文学、絵画、アートへの情熱は間違いなく彼から学んだものです。
デビッド・ボウイはスターダムにある人間の儚さや心理を、自身が創作したキャラクターを演じながら歌にして観客に伝えようとしました。そして、彼はひとつの成功に留まることなく、確立した自分のスタイルを否定して新しいことにチャレンジし続けました。70年代の彼は毎年のようにスタイルを変えながら、全てのスタイルで一定の成功を収めました。彼の生き方を通して、僕は変わり続けながらチャレンジする姿勢こそが「アート」だと学びました。
デビッド・ボウイの数ある作品の中でも、僕は「ベルリン時代」と呼ばれる時期の作品が特に好きです。アーティストとして最も革新性のあることにチャレンジしていたと思うからです。手に入れた「成功」や「名声」に苦しみながらも、次のステージを模索している彼の姿が作品に刻み込まれています。
この時期、彼は落ち目にあった親友のイギー・ポップとベルリンに移り住んで創作活動をしていました。イギー・ポップのために曲を作り、自身のベルリン3部作と呼ばれるアルバム「ロウ」、「ヒーローズ」、「ロジャー」の製作と同時進行で、彼のために2枚のアルバムをプロデュースしました。
デビッド・ボウイが「ロウ」と「ヒーローズ」を発表した1977年はイギリスでパンクが勃興した年です。その中心はセックス・ピストルズでした。そして、同時期にはシンセサイザーを用いたニュー・ウェイブ音楽も流行るようになります。ドイツ出身の「クラフトワーク」はこの時期のデビッド・ボウイに多大な影響を与えました。クラフトワークの影響を受けてデビッド・ボウイが作った曲は、後にも先にも聴くことのない革新的なものでした。その音楽を聴けば、彼がメロディが良い曲とは別のもの、よりアーティスティックで哲学的なものを目指していたことが分かります。

デビッド・ボウイは、惜しくも2016年1月10日に69歳で亡くなりました。彼にとって最後のアルバムとなった「ブラック・スター」を、69歳の誕生日(1月8日)に発表したわずか2日後のことでした。遺作となったこの作品は彼にとって初の全米チャート1位を獲得、グラミー賞では最多の5部門を獲得しました。デビッド・ボウイの生涯にわたる一貫したテーマは「異端者」ではなかったかと想像します。

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