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Cattell-Braasch, Mattox(腎損傷症例)

本日はちょうど昨日経験した腎損傷の症例で、
上記タイトルである
Cattell-Braasch maneuver
Mattox maneuver
が有用だったので、記事を書きます。

一般外科では
耳にすることの無かった言葉ですが、

Cattell-Braasch maneuver
Mattox maneuver

共に外傷の世界では有名な言葉です。

そもそも前者は何て読むのかというと、
Cattell-Braasch(キャトル ブラッシュ)
です。
ケトルでもブラッキーでもありません(笑)
*最近息子がポケモン好きになってきました。
 イーブイからの進化系ポケモンが好き

これを知っておくと何がいいかというと、
Cattell-Braasch maneuver→下大静脈
Mattox maneuver→大動脈
が見えるようになります。

つまり
下大静脈損傷があれば縫合できたり、
動脈根部を確保しProximal Controlができる、
これがメリットになります。

*Proximal controlとは
→動脈系出血がある場合、
 損傷部位より近位側を確保し、
 損傷部位への血流遮断を行うこと。
 同時に遠位側であるDistal controlを
 得ることも必要。

どんな手技か簡単に説明しますと
Cattell-Braasch maneuverは
小腸間膜から十二指腸2nd portionまでを授動します。

Mattox maneuverは
S状結腸(総腸骨動脈)から脾臓頭側までを授動します。

症例ベースにこの2つの有用性を紹介したいと思います。

10歳代男性。
2人乗りの原付バイク走行中に車と衝突。
ヘルメット着用なし(タイのデフォルト笑)
同乗者は現場で心停止の状態であり、
極めてhigh energyである症例。

他院に搬送となり
ショックバイタル、意識障害あり気管挿管。
FAST陽性で腹腔内出血が、
また見た目からも頭部外傷が疑われました。

当院到着後に一度心停止し、
蘇生後に患者さんと外科医が接触。
急いで手術室に向かいました。

開腹すると大量の血液が溢れ出てきます。
出血部位を探ると、
右Zone 2(腎臓周囲含む後腹膜)に
高々と膨隆する血腫を認めました。
右腎損傷を疑います。

ここでCattell-Braasch maneuverで
腎臓にアプローチします。
腎臓はまだGerota筋膜を被っていますが、
血腫を拭っても同部位が膨隆してくるので
出血源と判断しました。

Gerota筋膜を腹側から切開すると、
腎門部から血液が流れてきます。
腎損傷Grade4と判断し、
腎臓摘出を行うことにしました。

尿管を切除し、
損傷を認める腎静脈を結紮し、
、、、

あれ、腎動脈が、、、ない!?

これを見て
「腎動脈が引っこ抜けてしまったのか」
と思いました。
しかし右腎動脈は下大静脈(IVC)の
背側を通るため、
非常に見つけにくいです。

どうするか。
奥から血液が湧いてきます。

こういう時はひとまず
ガーゼでパッキングして、
皆で
「は〜〜。。」
と一息つき、お互いの顔を見合います笑
アイコンタクトで
「何て症例だ!こっから頑張るぞ」と笑
これで時間稼いで、戦略を練ります。

そして腎動脈の根部を見つけるために、
Mattox maneuverをすることにしました。

メッツェンバウムで
左結腸および脾臓を授動します。
その後お師匠さんは指をグワーっと使い(笑)
大動脈をあらわにしました。

見ると予想通りといえば予想通りなのですが、
ポツンと右腎動脈の断端が!
「結紮してください」と言わんばかりに、
ちょうどいい長さで
右腎動脈くんが待っていました。

。。。

さて、今回は
ちょうど昨日経験した症例をベースに、
Cattell-Braasch maneuver,
Mattox maneuverを
紹介しました。

少しでも
外科研修医、
一般外科医の皆様に
役立てれば幸いです

日本全体の外傷診療が向上することを目指して

【追記】
本症例に対して
日本であればREBOAを使い慣れている
ドクターが多いので、
MattoxせずにREBOAで
proximal controlを考えても
いいかなと思います。
※thank you, bro

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