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ナースのお仕事?〜プロフェッショナルに、出会った〜

全国的に新型コロナウイルスの感染者数が減少し、第5波と呼ばれた波はさざなみくらいになったので、私のコロナ支援は終わった。
沖縄のコロナが鎮静化しているのはとても喜ばしい。
でも、沖縄は人口における感染者数の割合が全国1位(ぶっちぎり)でまだ“収束した”と言い切れないところが悲しいし、そのうえ今度は軽石漂着問題が起きている。
次から次へと怒る被害に、現地の人、対応に当たる現場の人達のことを思うと悲しくなってしまう。

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コロナ支援ってことで、最後の夜は関係者とCoronaビールで打ち上げ。
沖縄のコロナ支援でどんなことをしてきたのかということについては、扱っている内容がナイーブなだけに支援事業の契約書に「業務請負内容をSNSなどに投稿しないこと」と書かれていたので私の胸の中に閉まっておこう。
だけど貴重な体験だったので忘れたくはないし(忘れっぽいんで)、数年後に「あんな事もあったなあ」と思い返したくなる日がくると思うので日記帳にでもつけておこうかな。
Face Bookで自分のみ閲覧できる様にしておけば“○年前の今日はこんなことしてました”って教えてくれるからその方がいいか。

今、看護師業界ではいろんな分野で専門家が活躍しているし、看護師の専門性が求められてもいる。
診療看護師、専門看護師、認定看護師など臨床で実践経験を経て大学や認定教育機関で勉強して認定資格を取得した看護師や、糖尿病の指導に特化した資格や、内視鏡検査に特化した資格など様々ある。
例えばER(救急救命室)や、ICU /CCU/NCU/NICU /HCUなど救命現場や重症患者に対応する部署には経験年数があってある程度の技術がないとその場で看護どころか医療を提供できない。
TVドラマの影響などでERとかICUは花形部署なので、新人には人気が高いけど現実は、新人を教育する人がいなければその現場で業務を行いながら新人育成などできないし、コロナ禍で耳にする事が多くなったECMOを使用している患者の対応など熟練の看護師にしかできない。どんな現場でも専門職は貴重な存在になるわけだ。
看護師経験10年目くらいで管理職を目指すのか専門職を目指すのか考えなければいけない岐路に立たされる。
例えば「外科病棟で5年看護師をしてます(してました)。」って言うのはもちろん経験値として評価の基準となるし、本人のキャリアではあるけれども経験年数だけではこれからの看護師は、看護師として正当な評価をされなくなるという現実もある。
当の私はと言えば、恥ずかしながらある分野の認定看護師なのでその分野のプロフェッショナルではある。
“恥ずかしながら”と控えめに出たのは、心身のバランスを崩して休職中の私がプロフェッショナルを名乗れないなあという事が理由。

私の事情は置いといて、コロナ支援ではいろんな職種の方と一緒に働いた。
この支援事業がなければ出会わなかったし、一緒に働く事のない方達だった。
同じ看護師であっても、年齢も出身地も経歴も様々だった。
何よりも気楽だったのは大雑把な履歴書(しかも写真なし)だけしか提出していないので、一緒に働く人たちがどういう経験のある人なのか、お互いに全く知らないので先入観がなく付き合えるということ。
皆んなが皆んな「初めまして」だった。

そこで私が出会ったプロフェッショナル看護師さんは、名前は“穏やかさん”としよう。
“穏やかさん”呼びづらいかな?まあいっか。
そのまんま、とても穏やかな人だった。本人は「低血圧で朝は元気がないから穏やかに見えるだけ。」と言っていたけど、声のトーンが少し高めで、優しい口調で話す人だ。
かと言って動作がゆっくりかと言えばそんなことはなく、気がついたらサラッとやるべきことをやっておいてくれたり、仕事に余裕ができると「何かやることないですか?」と事務方さんの仕事を手伝うなど気がきく人だった。
「何かやることないですか?」と声をかける時も、ふんわりと優しい口調だから、全く嫌味が感じられない。
そもそも嫌味を含んだ「何かやることないですか?」なんて声をかける人なんていないと思うけど・・・。
私が「何かやることないですか?」と声をかけたとする。そうすると穏やかさんが言うより棘が出ちゃうんだろうな(たぶん)。
その穏やかさんは、看護師経験は推定10年くらいで、難しい疾患を抱えた患者を看る忙しい病棟で働いていた人だった。
専門の資格は持ってないけど、十分なキャリアのある人。
私が穏やかさんのどこにプロフェッショナルをみたのか?

穏やかさんは一般社会人、事務職のスキルも持ち合わせていた。
まず、電話対応がめちゃくちゃ丁寧で、相手から自分たちの上司に当たる人に取り次ぐように依頼されても電話相手に「〇〇はいま席を外していまして。私でよければご用件を伺います。」など敬称を付けない、など「アナタは電話対応のプロですか?」って感じだった。一般社会では電話対応の常識ではあるけれど、看護師はそれを知らない人が多いし、私は上司であっても敬称をつけないくらいの電話対応はできるけど、+αで代わりに要件を聞くなんて技、出てこない。事務方にかかってきた電話なんて要件がわかるわけない(私が聞いても答えられない)と思ってしまう。
患者さんと話すときには、薬や治療について患者に合わせて、わかるように言葉や表現を変えて話していた。私はそれを横で聞きながら、「そうやって説明すればいいんだ」「こういう表現もあるのね」とすごく勉強になった。
とかく看護師は治療やそれに伴う検査や薬について“説明する”場面に多く遭遇するし、それをしなくてはいけないことが多い。
だからか、相手にわかりやすく説明しなくちゃと思っていても、“説明する(した)”ということで自分が満足してしまって、相手がちゃんと理解したのか確認できていないことも起こる。
今回の業務では、あることを患者に伝えるための対応マニュアルがあった。
それは、必ず伝えるべきことや確認すべきことがあって、その上で患者に選択してもらう(患者の意志を確認する)必要があったから。
対応マニュアルを読んでみると、理解はできるんだけどそれを相手に伝えるとなると、とても難しい。伝える相手の殆どが一般人だからだ。
伝える相手(患者)の年齢、特に理解力は人によってまちまちだし、ましてやコロナなんて誰にとっても初めてのことなので、コロナに関する知識だけではなく意識や考え方も様々。
それなのに穏やかさんは、その患者に合った言葉選びや対応ができていて、しかも話し方に焦りもないし、相手を急かしている感じもしない。
私もなるべく専門用語は使わないように、端的にわかりやすく伝えようと思って、対応マニュアルを自分用に修正して臨んだけど、焦ってしまったり「えっと、」とか「あのー」とか詰まったりすることが多かった。
穏やかさんの足元にも及ばない。
電話対応だけではなく、穏やかさんはPC操作にも強かった。Excelやwordを使った資料やアンケート作り(集計ではなく、作成まで!)などもできてしまう。
穏やかさんが、他の職員に「何かやることありませんか?」と聞けるのはどんな仕事を振られてもできるからなのではなかったか?
逆に言えば、私ができることは医療や看護の領域だけで、医療分野における周辺業務、例えばデータを取ることだったりアンケートの集計などのいわゆる雑用に関してはいちいち誰かに教わらないとできない。
つまり、手伝う気はあるんだとアピールするけれど、実際手伝いにもならないという現象が起きてしまう可能性が高い。
だったら、「何かやることありませんか?」なんて口に出すのも申し訳ない。

穏やかさんに出会って思ったのだ。
看護師というだけでも専門職で、その中でもある分野の認定看護師という肩書きは、肩書きだけで本当の意味でのプロフェッショナルって、どんな場所でも働けるスキルを持った人なのではないか?と。
認定看護師であることや認定看護師の諸先輩・同朋を「プロフェッショナルではない」と言っているわけではないし、それぞれの分野のプロフェッショナルであることは間違いないと思っている。

でも穏やかさんの仕事ぶりや取り組む姿勢を見ていて、看護師としての患者に対する接し方(話し方)に見習うことが多かったし、どんな仕事もできるスキルを身につける事は、どんな場所(病院や施設など組織)でも働くことができるという強みになると思った。これぞプロフェッショナルだ、と。
穏やかさん、1ヶ月間ありがとうございました。こんな私&45歳ですが、ちょっと成長できた気がします。

余談ですが、
太った患者さんにBMIが30以上だとコロナの重症化リスクが高いということを伝えなければいけない場面で、本人に「あなたは太っていますので重症化するリスクが高いです」とは言えず、どう伝えようかと考えて発した言葉が「ふくよかな方はコロナが重症化しやすいというグループに入ってしまうんです」だった。
それを偶然聞いていた看護師(穏やかさんではない)が、「そーやって言えばいいんですね。“アナタ太ってますから”なんて言えないからどうやって言えばいいのか横で聞いてたんです。」とか「重症化リスクに該当するって言われてもわかんないですもんね、“グループに入る”って言うのもアリですね。」と言ってもらえるくらいには成長した。
穏やかさんには感謝しかない。

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沖縄最後の夕陽。
貴重な体験をさせていただきました。ありがと〜。

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