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かっこうが聞こえる朝に

明け方、外から鳥の声が聞こえると、
あ、朝が来たのだと、ほっとします。

私の育った場所では、
朝になると、かっこうが鳴きました。

大人になって、いろんな場所に住み、
旅もしたけれど、
私がかっこうの声を聞くことが出来たのは
故郷以外では北アルプス山中だけでした。

北国の小さな借家住まいの我が家では、
毎日かっこうの鳴き声が聞こえました。

小学校時代、運動会の日の早朝は、
いつもより2時間早く、家を出ました。
3キロ離れている小学校のグランドに、
親が座る場所を確保しに行くのが私の役目。

石がゴロゴロある土煙の道を歩くので
運動靴はいつも土ぼこりで汚れていましたが、
しばらくして坂道を上ると国道に出ました。

そのままずっと歩く間、国道沿いの森林から、
もっと大きくかっこうの声が聞こえました。
そんな所の国道は、
時々大型トラックが通るくらい。

聞こえるのは、自分の足音と、
かっこうの声くらいしかありませんでした。

子どもの足で急いで40分ほど。
ようやく校舎の赤茶色の屋根が見えて、
肌色のコンクリート壁の建物が見えると、

一瞬ほっとして、次には、
場所はあるかな、というドキドキ。

こんな時、学校に家が近い人が羨ましかった。
いくら早く出ても先を越される。

スタートに近い場所や、
リレーのトラックギリギリにロープが張られた
一番前の席は、すでに随分取られていました。

うちは観にくるのが親二人、小さな敷物1枚。
余っている所で一番良さそうな場所を探して
敷物を敷き、風で飛ばないように押さえる
大きな石を探して四隅に置いて帰ろうとする。

見ると、先生たちはもう、
いろんな準備を始めるところでした。

帰りは、通学路じゃない川沿いの堤防を通り、
雑木林を抜けて戻りました。
その方が近いからです。

その道は危ないから通学路に使ってはならない
と言われていたけれど、
子どもたちは親に内緒で皆、友達と一緒に、
そこを通っていました。

ひとりで、ちょっぴり怖いので、
早足したり走ったりして、通りました。
だって私は家に帰って朝ごはんを食べて、
また学校へ行かなくてはなりません。

近道の終わりは、
国道沿いの森の裏側に合流しました。
そこでも相変わらず、
かっこうが鳴いていました。

家に近づく頃にはもう太陽がだいぶ上がって、
私はちょっと慌てました。

家に戻ると、日頃は私に、
ご飯支度を任せている母も、
酢飯の匂いがする手で、重箱にお稲荷さんと
唐揚げを詰めてくれていました。

早く食べて学校行きなさい、と
リレー選手の私の走りを楽しみにする顔でした。

かっこうは、他の鳥の巣に、
ちゃっかり自分の卵をしのばぜて、
育てて頂くという習性があるようで、それを
ズルい鳥のように言われることもあります。

はっきりした原因はわからないようですが、
体温変化が激しく、
卵を温めるには適さないため、
というのが有力な説とのこと。

それも自然の中で生まれた仕組みなら、
かっこうのせいだと言う気にはなれません。
人間の基準では図れないものを組み込むのが
自然の中にはあるのでしょう。

今住む場所は、
ウグイスや野鳥の声が美しく響いてきます。
ウグイスの声には暖かさと優雅さ、
ゆとりを感じさせてもらえる。
日本情緒というのでしょう。

閑古鳥がなく、の閑古鳥というのは、
かっこうの事だとか。
日本人にとってのかっこうは、
寂しさを代表する音なのかもしれません。

北国から本州へ来た私は、
未だに日本情緒や文化が、
異国のもののように感じるところがあります。

とても魅力的に思えるのは、
別の国の文化のように
憧れを感じているからかもしれません。

かっこうは朝日、朝露、運動会の朝の声。
そして故郷を思い出させてくれる、
私が一番、愛着のある鳥の音です。

かっこうの動画がありましたので、
ご興味あればご覧ください。

本日も、お読み頂きありがとうございました!



いただいた、あなたのお気持ちは、さらなる活動へのエネルギーとして大切に活かしていくことをお約束いたします。もしもオススメいただけたら幸いです。