肝障害患者さんが購入した市販薬をトレーシングレポートにて報告した症例

こういうケースは決して少なくないなぁと思って・・・
この患者さんとのかかわりは数年前から。
新生児期に胆道閉鎖症を患い、現在高校生となり、胆汁性肝硬変と戦っている。食道や胃静脈瘤破裂により吐血して入院もあったが、現在見た目には全く病気を感じさせない普通の高校生。ただ、食道に刺激を与えないようにポテトチップスなどは控えてなどの指示はあるものの、とくに食事制限はない。
リーバクト、グリチロン、ウルソ、ビタミンD、パンビタンを継続中。
幼い頃から薬を服用していたためか、薬に対しての抵抗はなく、
アドヒアンスは良好。ほんとに、えらいなぁ~って毎回思う。
お母様も来局されるので、色々お話を伺うのだけど・・・
きっと、想像超えるほどの辛い思いを抱えて・・・ お母様の話を伺うと泣けてくる。
病気と長く戦ってきたから当然なんだろうけど・・・
ここ2年ほど生理が来なくなり~ 
担当ドクター(とある大学病院の専門医)から同大学病院の婦人科に紹介。
婦人科での検査結果より、ストレスが原因?って事でルトラール2mg投与となり、10日間継続後2週経過して生理が始まった。
で・・・ 過去には経験しなかった生理痛と遭遇! 
その時にご本人が市販薬を買いに行って・・・ 
ナロンエースを購入し2日で計3回服用(通常量)
そっか・・・ 想定しておくべきだった。
その服用回数で、肝不全誘発や消化管出血や腹水出現のリスクは高くないと考えるが・・・
その時の状態によっては全く無いとは言えない。
Child-Pugh分類で考えると~ 直近の採血結果より
脳症ない(血中アンモニア濃度基準内) 腹水ない 
血清ビリルビン値2.0未満 プロトロンビン活性値70超えてる
なので、今のところ心配なさそうだ・・・
だけど・・・今後再び鎮痛剤服用の可能性はある。
じゃぁどうするべきなのか・・・
以前にも、アルコール性肝障害から肝硬変になった患者様の鎮痛剤服用で色々調べたのだが・・・ NSAIDsよりアセトアミノフェンの方が肝臓への影響が少ないという事だったのだけど~
再度調べることにして・・・
見つけました!その資料によりますと~
肝疾患の患者研究によると、アセトアミノフェンの半減期は延長する可能性はあるものの、CYP活性が亢進することはないので肝毒性のある中間物質NAPQIの生成自体は減少。NAPQIはグルタチオン抱合を受けて無毒化され、グルタチオン貯蔵が枯渇するとNAPQIが蓄積する。
だけど~ NAPQI生成が減少するのだから、肝毒性は回避できるって事のようだ。結果として肝硬変患者におけるアセトアミノフェン投与の安全性及び有効性を評価とある。
投与量はどうなのか?
FDAガイドラインに基づいて、肝硬変患者(アルコールを常習的に飲んでいない)でのアセトアミノフェンの使用(14日未満)は2~3g/日に減らすよう推奨。この投与量なら、肝硬変の急性代償不全は誘発されないと示唆されている。って事ならしい。
なるほど・・・
では・・・NSAIDsはどうなのか・・・
NSAIDsは主にCYPにより代謝され、蛋白結合率が高い。
肝硬変患者はCYP活性が低下し、蛋白の産生が障害されているわけだから・・・
血中濃度上昇し、プロスタグランジン産生阻害により輸入細動脈が拡張抑制され、RAS系が亢進しナトリウムや水が貯留され腹水が発生しやすくなる。
やはり・・・ 市販薬でも注意が必要なわけで~
今後購入されるなら、アセトアミノフェンにして頂くようお伝えし、次回受診の際に、担当ドクターにもご相談してほしいとお伝え。
こちらからも、担当ドクターに報告する旨を患者さんのお母様に伝え、了承して頂いた。

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