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「〇〇さんが秘書だったお蔭で自分の能力以上の力を出すことができました」

私が最初に秘書になった時、その場所はシンガポールでした。当時シンガポール在住だった私は新規に現地法人を立ち上げる日系企業に秘書として入社しました。まだオフィスもなく、他の会社さんの会議室を1つお借りして「立ち上げ準備室」みたいな環境でした。

秘書ってなにするんだ?

秘書未経験で入社した私は、なにはともあれ東京の本社へ2日間出張。
大急ぎで前任の秘書さんから引き継ぎを受け、本社の主要人物にご挨拶して目まぐるしい2日間を終えてシンガポールに戻ってきました。
おおよその仕事の内容は分かったのですが、その時点では、どうも自分の目指すべきところというか、秘書って何の目的にいるのか、という大きなイメージが描けないままでした。

そういうことか!と一言で腑に落ちる

そのモヤモヤが一発で払しょくされることが起きたのです。
シンガポールに戻ってきてすぐ、前任の秘書さんが上司メールを送っていました。私にはCCを。

「これまでお世話になりました。もう笹木さんへの引継ぎも全部終わりました。今までありがとうございました」みたいな内容だったと思うのですが、それに対する上司からの返信がその後の私の秘書生活を支えるものとなるわけです。

「こちらこそお世話になりました。〇〇さんが秘書だったお蔭で自分の能力以上の力を出すことができました。ありがとう」

これを読んでものすごく腑に落ちたのを覚えています。なるほど!秘書というのは上司が持っている能力以上の力を引き出す存在なのだな、と。

そこから先、仕事で迷った時には「えっと、どうすればこの人の能力以上の力を引き出せるんだっけ?」と原点に返って考えるようにしていました。

最後にオチを…

このメールを見た時から「いつか自分も、次の秘書さんに引き継ぐときには、前任の方のように言ってもらえるようにがんばろう」という思いで働いてきました。
そして、月日は流れ…ついに自分も退職することとなり、後任の秘書さんに業務を引き継ぐときがきたのです。私が秘書になってから約5年が過ぎていました。

「ついにこの日が来た!」
秘書としてお世話になった旨を伝えるメールを想いを込めて送りました。すると送信すること30秒で返信が!

「了解!」

え?まさか!
スクロールしてもこれ以上の文字が出てこない…。

このメールからすでに数年が経っている今では「あの時のメールひどいじゃないですか!」と上司に言いながらお互いに笑い合えるようになりましたが、この時はさすがに脱力したなー。

こんなこともありましたが、今でも「秘書は上司の能力以上の力を引き出す存在」という原点は大事にしています。



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