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酒トラップへ。

毎年六月になると、長野駅前の居酒屋のかたがたと、
酒を卸している酒屋のかたがたが、「酒トラップ」という
イベントを催している。
各居酒屋に県内の酒蔵さんが詰めて、ちょっとしたつまみと、
それぞれのお蔵の酒を、スタンプラリーをしながら味わうと
いう催しだった。
今年でちょうど十回目ということで、何年かぶりに仕事を
さぼって足を運んでみたのだった。
このたびは十二店の居酒屋と二十三のお蔵が参加しているといい、
けっこうな量の酒を利くことになる。
昼間の酒はまわるから、酔いつぶれぬよう言い聞かせた。
当日飲み仲間のかたがたと待ち合わせをして、駅前をうろつくと、
お猪口を手にしたかたがたが、あちこちに徘徊している。
いちばん遠くの店から回ろうと一軒目に訪ねたら、
みな考えるのは同じこと、すでに店の前には順番待ちの長い列が
できていて、ここは後回しと、別の店から回り始めた。
太田和彦さんというかたがいる。全国あちこちの銘酒や居酒屋に
精通したかたで、これまでに酒や店にまつわる著書をたくさん
出している。長年テレビでも居酒屋巡りの番組をされていて、
この頃は日曜日の午後九時に、BS11で居酒屋百選という番組に
出演されている。長野県松本市のご出身で、今回酒トラップの
スタッフの中にご身内がいらっしゃる縁で、太田さんも
このイベントに顔を出してくれたのだった。長らく著書を愛読して、
長らく番組も観ていたから、初めてお会いできるのが楽しみなこと
だった。
店を回って、顔なじみのお蔵さんと久しぶりに言葉を交わしたり、
飲み仲間と遭遇したり、ほろほろ酔いながら、賑やかなひとときに
駅前が包まれる。
十二店のうち、馴染みの店は三軒だけ。初めての店が多かったから、
それはそれでなかなか新鮮な気分になったのだった。
長野駅前から一キロほど善光寺に向かって上がった場所に、
権堂と鶴賀という東西に延びる古い飲み屋街が在る。
次回の酒トラップはこの界隈で催すという。本日一緒に回ってくれた
浩ちゃんの梅岡旅館も、あゆみさんの豆腐とお酒・まほろばも
この界隈に在り、参加してくれるという。
なんとも楽しみなことだった。
初めて言葉を交わした太田さんは、テレビで拝見するのと同様、
朴訥とした気さくなかただった。

日盛りや酒徒の群れなす駅の前。


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