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夏の果てに。

迎え盆の朝、友だちからメールが届く。
昌禅寺、百日紅が見ごろです。よかったら写真撮りに。
おっ、もうご両親の墓参りに行ってきたんだね。
友だちが檀家の昌禅寺は、曹洞宗の古刹で、
広い境内は、初夏の頃は新緑の鮮やかな緑に、
秋になると、まるでここは京都かと思うくらいの
見事な紅葉に包まれる。
何度も足を運んでいるのに、百日紅が咲くとは
知らなかったのだった。
メールをもらった一週間後、カメラをぶら下げて
訪ねてみた。日中はまだ暑いものの、お盆を過ぎて
朝の風がずいぶんと涼しくなった。
自宅を出て氏神さんの境内を抜けて行くと、眼下の
城山小学校のプールの水が緑色に濁っている。
通っていた子供の頃は、体育の授業の時だけでなく、
夏休みにも泳ぎに通っていた。
しばらく前まで、夏になるとプールの手入れをしている
先生がたの姿を見かけたものだった。
ところが、老朽化が進み、今では使っていないという。
子供たちが授業でプールを使うときは、
わざわざ公共の施設まで連れて行くのだという。
夏の青空の下、プールではしゃぐ子供たちの声が
聞こえてこないのは、さみしいことだった。
友だち宅の在る城山団地を抜けて行くと、長野高校の
野球部のカバンを背負った女の子が、自転車で坂道を
上がっていく。マネージャーかな。
道路の向こう側では、おなじカバンを背負った
いがくり頭の男の子も自転車を飛ばしていく。
浅川の専用グラウンドで、朝から練習に励むとわかり、
頑張れ高校球児と見送った。
湯谷団地の坂道を上がっていくと、広い曇天の下に
町なみが広がっている。上がって下りて昌禅寺に着き、
百日紅はどこかときょろきょろしたら、
本堂の右手の住居の前に咲いていた。
あいにくと、昨夜の強い雨に打たれて、
花がだいぶ散っていた。
もっと早く来ればよかったと、教えてくれた友だちに
申しわけないことをした。
境内は、夏でも新緑の頃と変わらない、
もみじやかえでの爽やかな緑に包まれている。
ぽつんと一輪、紫陽花がまだ咲いていた。
墓地の方へ向かって行くと、左手に、高々とした杉林が
ある。
本堂裏手の竹林に行ったら、足元の草が深くて
入れなかった。
緑の中に、すでに少し朱色を帯びた葉もあって、
今年の紅葉は早いかなとうかがえた。
色づきはじめから落ち葉の頃まで、
この秋も、また幾度と足を運ぶことだった。

百日紅雨に散りぬる古刹かな。

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