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元気な店で。

昨年の秋に花粉症にかかった。
春の花粉にはもうずいぶん長くやられて
いるけれど、秋の花粉にやられたのは初めての
ことだった。しかも師走に入ってからも暖かな日が
続いていたせいか、いつまでも収まらず、鼻をぐずぐず
させていた。年が明けた一月、さらに輪をかけて、
目がかゆくなり鼻水が止まらない。
これはもう春の花粉が舞っていると察しがついた。
おかげで日に何度も目薬をさして、鼻をかんでいる。
この頃は薬を飲んでも以前ほど効かないときもあり、
歳と共に抵抗力が落ちているのを実感している
ありさまだった。
おまけに昨年ひいた風邪の余韻で、いまだに咳が出ていた。
コロナやインフルエンザが流行っているさなか、
飲み屋に出かけてゴホゴホしたら、まわりのお客も
気にする。飲み屋通いも控えていたのだった。
一月半ばを過ぎて、ようやく治まってきた次第だった。
仕事を終えた夕方、新幹線に乗って上田へ出かけた。
上田の町が好きで月に何度か出かけている。
駅を出て、別宅に荷物を置いて、寿司屋の萬寿に
おじゃました。親子で営んでいるこの店は、いつ来ても
くつろいだひとときが過ごせるのだった。
お通しの、菜の花と数の子のお浸しで黒ラベルを酌んで、
白海老のから揚げで長野市の地酒、十九を酌んで、
なまこ酢で木曽の九郎右衛門を酌んで、握りをつまみに
上田の亀齢を酌んでいたら、旦那さんに、塩田屋は行かれた
ことがありますかと尋ねられた。
上田駅のそばにある蕎麦屋で、ご主人は塩田屋のお母さんと
知り合いとのことだった。
塩田屋、しょっちゅうおじゃましています。お母さんも
娘さんと一緒に元気に働いていますと伝えた。
翌朝、東宝シネマ上田でゴールデンカムイを観たあとに、
蕎麦屋の昼酒に塩田屋におじゃました。
遅ればせながらの新年のあいさつを交わし、お母さんに、
萬寿の旦那さんのことを伝えたら、旦那さんは
若かりし頃、塩田屋のそばの寿司屋で修業をしていたとの
ことで、その時からの知り合いだというのだった。
萬寿の旦那さんは、確か今年御年八十二歳。
塩田屋のお母さんも同じ歳くらいだから、もう六十年ほどの
顔見知りとうかがえた。元気なお年寄りが現役で頑張っている
姿を眺めていると、こちらも元気をもらえることと、
それぞれの店におじゃまするたびに感じていることだった。

寿司屋酒蕎麦屋酒にて春を待ち。






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