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時 ②

“幸福の硬貨を手に入れたら、あなたは何を買いますか?”


幼稚園の頃、近所に住むなおこちゃんとよく遊んだ。砂遊びやかくれんぼをよくしていた。“なおこ”と“なおみ”よく似た名前だけれど、性格は違った。

なおこちゃんは活発でいつも外で走り回ってるような子。私はというと、教室で絵を描いたり本を読んだり。ストーブの前で絵本を読むのが好きだった。

夜眠る前に母親が絵本を読んでくれたのをかすかに憶えている。

『ぐりとぐら』や『11ぴきのねこ』の話が好きだった。


最近『マチネの終わりに』がとても読みたくなって、単行本を引っ張り出してきて読んでいる。

東京、パリ、ニューヨーク

遠く離れていても静かに相手の幸せを願う。そんな物語。

このコロナ禍で皆がリモート会議などを始めた時、私の中で最初に思い浮かんだのは『マチネの終わりに』だった。去年の小雪の頃、映画館に観に行った。

涙が止まらない私を、隣に座っていた大学生らしきカップルはなぜそこまで泣けるのか不思議に思っていたと思う。

蒔野の音楽家としての苦悩、洋子の孤独感、リチャードの嫉妬から生まれる憎しみ、三谷の愚かさ、様々な感情が交差する映画だった。自分の知っている感情とリンクする部分が多かった。

映画の中で、蒔野と洋子がSkypeで会話するシーンが描かれている。

離れていても相手を想う気持ちがあれば、それは届ける事ができるし、ちゃんと届く。感じる事ができる。同じ時を生きる事ができる。

そう信じているから、あの映画のワンシーンが私の中で思い浮かんだのだと思う。


随分前にIT関係の友人が、「世界中がこんなに簡単に繋がれる時代に、それを使わないなんてもったいない!人生がもっと豊かになるよ!」と話してくれた事があった。


私は誰かとつながってたくて

新しい世界に勇気を振り絞って飛び込んだ。そこはとても純粋であたたかく、そして感情豊かな場所だった。忘れかけていた感情を思い出させてくれるところだった。

“未来は過去を変えられる”

それは私の過去が変わり始めた瞬間だと信じたい


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