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舞台公演のはじまりかた

舞台創作と舞台監督について。

「舞台監督」を探す旅、のシリーズです。舞台監督としてはたらいている僕自身が納得できるような、見つめ直す"言葉"を探しています。

今回は「舞台公演を企画して動き出す」一連の工程を整理して、舞台監督の役割と関わりかたを考えてみたいと思います。

「舞台やりたい!」と主催者が思えば、企画が生まれます。だれかに話せば、企画が動きます。
プロデューサーの最初の仕事は、だれかに話すこと、伝えることだと思います。

どうして舞台公演を企画したのかといえば、
「創作活動をして作品を世の中に発表したい」か、
「興行収入で利益をあげたい」かのどちらかでしょう。ほかの動機はあまり思いつきません。

動き出した企画の、まずは何から手を付けるか。
何から決めていくか。

場所と日程。
演目。

人。
作家や実演家、そして技術スタッフ。

ほぼ同時進行で決めていかなくてはいけない、というか決めざるを得ない、関係性です。

アーティストのコンサートとなれば、そのアーティストのスケジュールに合わせて、かつ音楽ジャンルに適したホールが候補にあがりますし、
海外ミュージカル作品を上演しようとなれば、やはりその作品に適したホール、人、に決まっていきます。

あるいは演出家がまず決まって、適した作品を探す、という順番もあり得ます。

ここでひとつ問題になってくるのは、会場側と人間のスケジュールが一致しない場合です。
前述のコンサートの例だと、アーティストのスケジュールは空いている日程が限定されているのに、最適なコンサートホールが空いていない、というパターンです。

企画を取りやめるのか、妥協して別の演目や会場に落ち着かせるのか。
さらにスケジュールの問題だけではなく、費用面の問題もありますので、動き出した企画を具体化していく作業は高度な判断とスピード感を必要とします。

さて、諸条件をなんとかクリアして、企画取りやめに陥ることなく
・会場
・日程
・演目
が決まると、より本格的に人員を固めていくことになり、多くはこの段階で「舞台監督」も選定されていくことになります。

従って舞台監督としては、受注の段階でその企画、団体の背景を推察する必要があります。

なぜか。
企画の動き出しの部分で、どの程度の熱量を持っていたかということや、下方修正や妥協を経てきたのかということは、今後の企画運営の円滑さに影響を与えると思われるからです。

現段階で決まっていることは
・会場
・日程
・演目
だけだったとしても、実はこの三項目の時点で、公演の大枠の形はほぼ決まっていると言って良いかと思います。

つまり、
"会場"によって空間的制約が、
"日程"によって時間的制約が、
"演目"によって技術的要素が、

これらによって実現可能性の範囲がおおよそ定まってくると言えます。

この"範囲外"を希望する場合には、特別な方法を模索する必要があります。
多くの場合、予算枠の拡大の必要が出てくるのですが、そもそも"金銭で解決できない"部分があるときは、企画そのものに抜本的な変更を加えないとなりません。

そうしたリスク回避のために、
「いまならまだ間に合う」うちに手を打てるように、"背景を推察"することは大きな手掛かりになります。

こうした、ある種"深読みする能力"というのはそれなりの経験を必要としますし、意識的に頭を働かせないとならないので大変ではあります。
ですが、取り返しのつかないような事態を避けるためにも、最優先とは言わないまでもやはり身に付けておいたほうが良い"思考法"になるでしょう。

カンパニーの一員となった「舞台監督」は、公演の実現に向けてより具体的に動いていくことになります。

"決める"
ことと
"指示する"
ことが舞台監督の仕事だと考えますが、まずは"決める"ための材料集めから。

こうして、プロデューサーとともに舞台監督にとっての舞台公演もはじまり、動き出しました。


丸山直己

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