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Dalton教育と学校施設見学<その2>

このマガジンでは、オランダにあるDalton小学校を学校見学させていただいた時のことをまとめています。

今回は学校施設を見学させていただいた中で、校長先生に教えていただいたDalton教育のこと、そして私が見て感じたDalton教育についてお伝えします。

\ 前回の記事はこちらからどうぞ /


「遊び」からも学ぶ、4歳と5歳混合の異年齢クラス

オランダにおいて多くの子どもたちは4歳から小学校に通います。義務教育は5歳からで、5歳から小学校に入ることも可能です。イメージとしては小学校に幼稚園の年中&年長クラスがくっついて8年間の小学校になっているという感じでしょうか。

小学校によっては、4歳クラス(groep1)や5歳(groep2)クラスを異年齢混合クラスとしているところも多くあります。このDalton小学校も例外ではなく、4歳クラスと5歳クラスを異年齢クラスとしていました。

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この、イスをサークルにして1日を始めるというのはオランダの小学校(特に4歳、5歳クラス)ではよく見られる風景で、イスには自分の名前が書かれていて、毎日座る場所が違うというのもよくあります。この小学校では生徒の椅子を3つに色分けしていますが、校長先生からは、
・赤 → 最近4歳になって学校に通い始めた生徒
・青 → groep1
・黄色 → groep2

という説明を受けました。(名前を消すため、上から塗り直しています)

教室内をいくつかご紹介します。

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「4歳、5歳の子どもたちにとっての学びはいつも"あそび"と一緒にあります。室内の遊びだけでなく、外遊びもとても重要です。何かを詰め込むのではなく、自分を開放させるために、豊かになるために"あそび"が必要です」

"あそび"が子どもたちの発達の基盤になる...これはオランダの多くの先生が口を揃えて言う言葉かもしれません。オランダという地で小雨の中でも遊ぶ。手を泥だらけに、チョークだらけにして、砂の感触を手で脳で味わう...あそびの中で育まれる感覚を大切にする教育は、この国ではとても大切にされているように思います。

移民や母国語をオランダ語としない生徒たちのクラス

前回の記事で、校長先生が"国際色豊かな学校"と表現したように、私が訪れたこのDalton小学校には、国籍が異なる生徒たちが多く在籍しています。それはつまり、オランダ語を母国語としない子どもたちが大勢いるということです。

日本にある公立小学校において、日本語の通じない子どもが多数いる...それは多くの日本人にとってなかなか想像し難い状況ではないでしょうか。もちろん日本全国を見れば、そういった状況にある小学校はあります。しかし、オランダでは「オランダ語を母国語をしない生徒が1人もいない」という状況こそ稀かもしれません。オランダの小学校にとって、学習言語をオランダ語としない生徒児童がいる状況というのは当たり前であると言う人もいます。しかし、その「当たり前」の中で教育活動をするということがどれほど大変なことか...「子どもは自然と言語を身につける」と言う人がたくさんいますが、私自身は言語習得をそこまで楽観的に見つめることができません。

「母国語を、学習言語をオランダ語としない生徒を教育活動の中で共に育てることはとても大変です。本当に」

校長先生はその意味を噛み締めるように話をしてくれました。

校長先生が紹介してくれた教室には、さまざまな文化や言語のバックグラウンドを持つ生徒たちがオランダ語に特化して学ぶ部屋で、教室には"taalklas(言語クラス)"と書かれていました。

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ここではオランダ語を母国語しない生徒たちに対して、特定の曜日の放課後や、特定の授業の時間に生徒が移動してくるというかたちでオランダ語を学ぶ機会を与えています。校長先生が見せてくれた生徒たちのノートには、自分自身の似顔絵と、どこで生まれたか、誕生日、年齢など、簡単なオランダ語をプロフィールで表現しているページや、外で摘んだ花とともに、その名前がオランダ語で書かれているページがありました。

オランダで生まれ育っていなくても、どのようなバックグラウンドがあったとしても、そのことを誇りに思えるように。そんな想いがそこにはあるように感じました。

校長が大切にする"ドラマ教育"

校舎の中心にある学習用のテーブルが置かれた場所の頭上には、スポットライトや壁掛けのスピーカーがありました。

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「この学校では最終学年になると卒業制作としてドラマを発表します。その時、ここは大きな舞台になります。そうじゃなくても、学習成果の発表などにここは使います。ドラマ教育には力を入れているのは、生徒たちが自分を表現することを身につけて欲しいからです」

アネットさんは、話の所々で「アート」や「表現すること」を大切にし、学びをかたちにしたり、何かを残すことを大切にしていることを伝えてくれました。

「私は、子どもたちが自分を表現して残したものが大好きです。子どもたちが描いた絵や、作った作品、それら一つひとつがとても好きなんです」

校長が挑戦したい「学校内Technolab」

アネットさんは公募校長制度を通してDalton小学校の校長になりましたが、それまではLeidenにある"Technolab"という場所で働いていました。

Technolabについては、後日訪問する予定なので、ここで詳しくは書きませんが、教育×企業でテクノロジーやサイエンス教育を発展させるために作られたイノベーションを生み出すための施設と言えます。

「私はこの学校の中にTechnolabを作りたいと思っているの。子どもたちがサイエンスやテクノロジーの面白さをもっと身近に感じられる場所を。そのために人材を集めたり、予算で学校をTechnolab風にしたりする計画を練っているところなの。それが、私が校長としてこの学校に持ち込みたいもの。夢の実現に向かってこれからも頑張るつもりよ」

アネットさんは、この学校にTechnolabを作る計画を目をキラキラさせながら話してくれました。校長として、子どもたちにとって「あったら良いな」と思う教育計画を推し進めることにワクワクしている様子でした。

そこには、彼女がさまざまなキャリアを通して感じてきた「教育に不足しているもの」や「教育にあって欲しいもの」があり、そこに向かって校長という立場から戦略を練って実現に向かわせることが彼女の抱く夢なのだと感じました。

次回は「生徒が持つ1人ひとつのサイコロ」について

次の記事では、この小学校で採用されている「生徒1人ひとつのサイコロ」についてご紹介したいと思います。

生徒が1人ひとつ持っているサイコロの役割とは?
教育の中でどのように使われているのか?

ご興味があればぜひ、お読みください!

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