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Dalton小学校視察記録:Dalton教育で見た「サイコロ」の役割

このマガジンでは、オランダにあるDalton小学校を学校見学させていただいた時のことをまとめています。

今回は学校施設を見学させていただいた中で、校長先生に教えていただいたDalton教育のこと、そして私が見て感じたDalton教育についてお伝えします。

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4人1グループに配置されたクラスと、そうでないクラス

最初に訪れた教室はGroep5、日本で言う小学校3年生が在籍する教室でした。そこで、放課後に掃除当番として残っていた生徒は3名。

彼らの教室内の座席は4人1グループになっていました。校長先生いわく、この小学校では必ずしもこのかたちを取らなければいけない訳ではないそうです。例えば、別の学年で教室の雰囲気や行動に少し問題が見られるクラスでは4人1グループではなく、2人1グループのかたちに整えてあるとか。

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「4人1グループにするメリットのないクラスでは、このような机の配置にする必要はありません。全ては担任の判断です」

と、校長先生はおっしゃっていました。

教室にある「ランプ」と「サイコロ」

そのgroep5の教室で、机に置かれたサイコロについて聞きました。1人ひとつ用意されたサイコロの役割、そして使い方とは...?そこで分かったのは、「すべての生徒の学習環境が等しく確保されるための仕組み」でした。

まず、この教室にあるものは、
・1人ひとつのサイコロ
・黒板の隣にある信号機のようなランプ

です。

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「ランプ」と「サイコロ」の関係

まず、教師が使う「ランプ」は生徒に指示を出すためのもので、このランプの指示を守ることが前提となっています。ランプの色が意味するのは、

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そして、サイコロが意味するのは、

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ということでした。

「その人の学習を邪魔しない」という配慮

例えば、教師のランプが緑だったとしても、私が個人的なサイコロを赤にしている場合、私の周囲の人々は私に話しかけることができません。

その時にクラス全体がどのようなスタイルで学習を進めているかにもよりますが、個別学習のような時間の場合に教師のランプが例え青であったとしても、他の生徒は「赤」を示している生徒に話しかけることはできません。

これはつまり、「自分にとっての学習機会」が優先されることであり、他者からしてみれば「他人の学習機会を冒さない」ということでもあります。

「青」は「話せます」という意思表示であることを周囲に知らせることで、自分の学習機会の判断が自分に委ねられているという実感を持つことができ、自分が守りたい学習に対する姿勢を周囲に知ってもらうきっかけにもなります。

「どこで、いつ、どのようにして学ぶかを自分自身で判断する練習をすることは、同じ権利を持つ他の生徒のことを尊重することにもつながります。自分の学習機会を大切にすることで、他者と共存するために必要なことを実感し、それを外向きの行動に変えていくということですね」

特性のある生徒にも一眼で見てわかるランプの色

このランプは児童生徒の学習機会を守るためにあることが前提となりますが、それはつまり特性がある生徒にとっても「わかりやすい」ということかもしれません。

学習の中で生まれた疑問などを他者と共有する時の状況を判断するために、一眼で見てわかるランプは使いやすいかもしれません。つまり、俗に言う「空気を読む」ということのハードルが低くなると思うのです。

もちろん、生徒自身がこのランプとサイコロの使い方を習得するまでに時間がかかることはあると思いますが、それでも習得することができれば、ある特定の時間であったとしても、生徒たちの学習機会は保障されます。

そういった意味でも、このランプとサイコロは有用であると校長先生は話してくれました。

長い時間をかけて生徒たちに伝えていく

「このサイコロを用いた学習は、一朝一夕で出来上がることではありません。特に特性がある生徒がいる場合や、学校の国際色が豊かになれば、使いこなせるまでのハードルは高くなります。それでも、ゆっくりと着実に生徒たちに伝えていくことが大切です。いつか自分を大切に、人も大切にできる生徒を育てるために」

この小学校で使われているサイコロの意味が私が思うよりももっと深いところにあるということを実感した瞬間でした。

次は「校長としての立場や教職員との関わりについて」

次の記事では、アネットさんが教職員をまとめる立場として、どのようなことを意識して仕事をされているのか。どのような想いの中で仕事をされているのかなどについて書きたいと思います!

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