甦れフェニックス!

 30数年前、ルールも何もわからず、その立ち振る舞いの格好良さから興味を持ったアメリカンフットボール。衛星放送もネットがなかった当時、住んでいた八代市内の書店には一切ルールを知る術がないぐらいのマイナースポーツでした。

 想像してみてください。
1年間で受動的に入ってくる情報は、1月末のスーパーボウル(深夜のテレビ)、1月3日のライスボウル(NHK)、12月の甲子園ボウル(NHK)の3試合のみ。だからこそ、強烈なチーム、強烈な選手、強烈なプレーだけが刷り込まれたスポーツという印象です。
 ・サンフランシスコ49ersのQBモンタナ-WBライスのホットライン
 ・京大ギャングスターズのIフォーメーションとQB東海
 ・篠竹監督(故人)率いる日大フェニックスのショットガン
   フォーメーション
時代は変われど、アメリカンフットボールの魅力は変わらず、毎年楽しみにしています。

 そんな、大好きなスポーツで起こってしまった今回の悲しい事件。
両チーム、協会、メディアが行うべき対処が、とにかくお粗末な感がしてなりません。必要なのは「今」という「点」ではなく、これからに向けた「線」を見なければいけないということ。
 このままいくと、日大アメフト部に入部を希望する新入生が激減するでしょう。特待生の勧誘もままならなくなるでしょう。プレー自体も色眼鏡で見られてしまうでしょう。
 本来、作戦としてQBに急襲をかけるブリッツという正当なプレーがあります。ボールを持った投げる前のQBを追い込んでタックルを成功させるQBサックというプレーは、ディフェンスの花形プレーの一つでもあります。もしかすると、それすら「危険なプレー」とみられてしまうことを懸念してしまいます。

 何が問題だったのかは明らかでシンプル。
それを踏まえてこれから何をやるべきかは明白です。
 悪いのは内田監督です。指示していたとすれば言語道断、仮に監督の指示ではなく示唆であったとしても、はたまた選手の勝手な独断だったとしても、次のプレー以降も同選手をフィールドに立たせたこと自体が罪です。コーチも同罪です。極論を言えば、同じ選手が相手側の11人に立っているのであれば関学側の選手やコーチはタイムアウトを取ってでも抗議すべきだったのではないかと思います。もちろんレフリーの責も非常に大きいと思います。

 これからやるべきことは、ファンを含めた全ての関係者がもう一度アメフトの魅力を指差し確認することです。
 数百といわれるプレイブックからその局面で最良のプレイを選択し、デザインされたプレイ通りの行動をとり、1ヤード1インチを奪い合う、守りあうというその原点に立ち返れば、今回の映像に映った間違ったベクトルへのタックルは今後二度と起こりえないでしょう。

 「激しいタックルは危険だ」「潰せ・壊せなんて野蛮だ」そういう安直な言葉は聞きたくありません。アメフトは非常に強い接触が多く、防具をつけているとはいえ怪我を避けられないスポーツです。だからこそ、プレー中のルールは非常に厳格であり、7人ものレフリーが存在し、些細な故意の反則にも厳格です。反則の内容は、マイクでスタジアム中にすぐさま公表されますし、ビデオ判定はどのスポーツよりも早く導入されています。
 また、どのスポーツでも当たり前になっている怪我の予防措置のテーピングが発明されたのもアメフトが起源であり、全てのチームが大人数のマネージャー・メディカルスタッフを備えて選手をバックアップしています。
 ここまでシステマチックで合理的なスポーツですから、自浄努力も必ず備わっていると強く信じたい。

 今回の事件はわずか3プレー、時間にして数秒の出来事ですが、日本のアメリカンフットボール競技の歴史の中で最大の汚点になったことは否めません。
 だからこそ、日大のアメリカンフットボールは、このまま疲弊して弱体化すべきではなく、強くあり続ける力を身に着ける必要があると思うのです。

  甦れよ。フェニックスだろ。そう言いたいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?