見出し画像

「まるで戦時中」オランダも夜間外出禁止令

12月中旬からロックダウンが続いているオランダでは、1日の新規コロナ感染者数が年末の1万人から徐々に減少し、5000人前後まで下がってきているが、コロナでICに横たわる人は600人以上で高止まりしている上、イギリスからの変異種の拡大が懸念されていて、ロックダウン期間はとりあえず2月9日まで延長されることになってしまった。

さらに、先日は「夜間外出禁止令」が出されてしまい、今晩から夜9時~朝4時半まで原則、外出はできなくなった。不要な外出が見つかった場合は、95ユーロの罰金が科されることになる。

風邪を引かない冬

「僕はこの冬、ぜんぜん風邪を引いてないんだ。すごく調子がいいよ!」

先日、子供の友達のパパがこう言った。いつもだったら、この時期に風邪を引いて3~4日寝込んでしまうこともしばしばなのに、今冬は健康を維持できているという。

「コロナのおかげで、すごく気を付けているからじゃない?こまめに手を洗ったり、マスクをしたり……」と言うと、

「それ絶対あるね。あと、挨拶のキスとか握手とかがなくなったのも大きいかも」という答えが返ってきた。

考えてみれば、欧米人の肌のコンタクトは随分と多かったなあ、と思う。なかでも特にオランダ人は仲のいい友人や家族に会ったときは、チュ、チュ、チュっと3回も頬を付け合うのだから、誕生日や結婚式の忙しさといったらない。ビジネスの場面でも、相手と必ず握手をするし、誰とも肌を触れ合わないで過ごす日は1日もなかったと思う。おまけに手洗い習慣もあまりなかったので、ばい菌やらウイルスやらはトラベル三昧だった。

コロナが広がって、「キスをしてはならない」「握手をしてはならない」「1.5mのソーシャルディスタンスを取らなければならない」となったことで、コロナ以外のウイルスやばい菌も拡大が抑えられている。

「日本人はもともと、挨拶のキスとか握手とかしないから、私にとっては普通なんだけどね!」と言うと、彼は、

「僕たちも日本人風にやらなくちゃね!」

と言って、両手を胸の前で合わせてお辞儀をした。

夜間外出禁止令に抵抗感

上記のパパは、キスや握手の習慣がなくなったことを肯定的に捉えているみたいだったが、毎日肌を触れ合ってきた習慣が強制的に止められ、互いに1.5mの距離を保つというのは、オランダ人にとっては寂しさや物足りなさを伴うものらしい。それでも、この「ニューノーマル」はかなり浸透していて、3~4月頃にはよく間違えて握手の手を差し出してしまう人もいたが、今ではこういう「うっかり」もほとんど見なくなった。どうしても握手をしたいような場面には、みんな距離を保ちながら肘をくっつけ合っている。

しかし、先日「夜間外出禁止令」が出されると、「これ以上、まだ禁止事項が出るのか!」と、抵抗感を露わにする人も。実際のところ、商店はスーパーマーケット以外閉まっているし、夜9時~朝4時半までの間、外出する人はほとんどいないと思うのだが、禁止されると、なんだか威圧感を感じてしまう。オランダ人の義理の母は電話口で、「恐ろしくひどいわね。まるで戦時中みたいだわ」としきりに嘆いていた。地元紙『Eindhoven Dagblad』によると、明日(日曜日)にはこの禁止令に反対するデモがEindhovenの街で行われるらしい。

外出禁止の夜を楽しく過ごすために…

一方で、大多数の人は政府の通達を粛々と受け止め、この暗く、寒い冬の夜を家族で和やかに過ごす構えでいる。同地元紙では外出禁止の夜を楽しくすごすためのアイデアも掲載されていた。以下にその一部を紹介しよう。

「外出禁止の夜に何をするかって?勉強ですよ。昨年9月からフルタイムの仕事の上に大学のマスターコースを受けています。今はとにかく、“ちょっと街に行ってテラス席に座る”のと、勉強の間で選ぶ必要はないですから。時々、すべてをうっちゃりたい気もするんですが……」

「私たちのキッチンでは、壁の一部に黒板ペイントを施しました。2x2メートルで、幅広いものです。そこにお絵かきしたり、デザインしたり、手紙を書いたり、インスピレーションを生む引用の言葉を書いたり、お絵かきゲームをしたりしています。あなたの家庭でもいかが?」

「コロナの感染が広がった当初から、私は子供や孫たちと8人でチャットアプリを使って『アート・チャレンジ』をやってますよ。私たちは交代でテーマを決めて、週に1度そのテーマで絵を描いたり、何かを工作したりします。これは競争じゃなくて、やりたい事をやるのです。自分の作品を写真に撮って、アプリでチャットグループに送り合います。すごく楽しいですよ。ほかのみんながどんなものを作ってくるのか興味深いし、こうやってコンタクトを保っているんです」

「思春期の息子2人がゲームばっかりしている中、私は新しいホビーを見つけました。石の装飾です。石は、道とか森とか自宅のフラットな屋根から拾ってきます。それを洗って干して、コーティングして、アクリルで絵を描くんです。自分で言うのもナンですが、すごく素敵な創造物が生まれます。私はそれを森や公園に置いておきます。いちばん楽しいのは、それを見つけた人の微笑み!その人はそれを持って帰ってもいいし、またそのへんに置いていってもいい。私は楽しくてカラフルな絵を描きますが、ポジティブな言葉を書くこともあります。この最小限の貢献が、世界に小さなポジティブを与えられますように!」

みんな地味に楽しんでいて微笑ましい。私自身はこの冬、ネットで新しくダウンロードしたボサノバのピアノ曲を練習しようかと思っている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?