ひとり旅
週末長野の松本十帖へ行った。
思えば、私のはじめてのひとり旅は、ロンドン行きだった。
それ以降、フランスやイタリア、台湾など、時々、ひとり、ふらりと出掛けるのが好きだったが、結婚して子どもが出来て10年近くひとり旅というのをしていなかったことに気がついた。
この週末は金沢へ行く予定だった。仕事のためもあって作家さんを訪ねに行く予定を組んでいて、能登空港に金曜の朝9時ねと、友人と待ち合わせをしていたところだったが、諸事情によってそれが突然延期になった。予定変更だ。
主人と息子は、二人で仲間達とキャンプの予定を組んでいると言っていたし、それに参加する事も出来る。
自宅に1人残り、気ままに過ごす事も出来る。
けれど、「行き先を変更して、お友だちと旅行してきたら」と主人にその気にされた。ただ、「能登で会おう」と約束していた友人は京都に住んでいる事もあって2人旅というのが考えづらく、ひとり旅に出ようと思った。
先日箱根に行ってきたばかりで、その時に運転中に通った「箱根本箱」を予約しようかと、予約サイトを見ていた。
結局、「せっかくだから主人の設計した松本十帖に行こう!」と決め、予約を頼んだ。
箱根なら、車でぶーんと行こうと思っていた。18歳で免許を取ってから、車の運転はずっと好きなものだから。
松本となると、車という訳にもいかず、列車で行くことなる。
新宿駅からあずさという列車が出ていて、2時間半で松本駅に到着する。
松本駅からはバスもあるけれど、
癒しの旅と心に決めたので、タクシーに乗ることにした。2500円だった。
「おやきと珈琲」という名のカフェがレセプションを兼ねており、そこでチェックインをする。
スーツケースはそこからそのままお部屋に運び入れてくれる。
あずさは1時間に1本くらいしかなく、
ちょうどいい便は1時半に松本駅に着いてしまうので、カフェには2時頃到着。
結構待たされるかな、と不安に思いつつ到着するも、珈琲や蒸したてのおやきを出してくださるのでいただいているとあっという間に3時になる。快晴の午後、アイスコーヒーが清々しく喉を通り抜けた。
ほのぼのとした空気の路地を、てくてくとホテルまで歩くと5分もしないうちにホテルエントランスに着く。
向かって右手にベーカリーと雑貨店があり、選ばれた洗練手仕事系の生活道具たちが並ぶ。
私は金属製の菜箸を3つほどと、
撮影用のテラコッタの小皿を1つ、
ちょうど探していた木の柄のフォークナイフを8セット購入した。
(私は自宅用の皿やカトラリーを買うときは8セットと決めている。)
夕飯も早いだろうし、
私は炭水化物をあまり沢山摂らないので、パンは買わずに、部屋へ向かう。
このホテルは全室かけ流し温泉つきらしい。調べたらかなり古いお宿を改装したらしく、要所要所、渋くてかっこいい。
一階スペースは本屋さんであり、レストランでもある。「本箱」と名付けられ、聞くと一万冊を超える本が並んでいるとのことだった。
ひとり旅なんて、何していいか手持ち無沙汰で…!と思っても
一万冊もあれば、大丈夫。暇になることはありません。
食事は外国の方がシェフなので、和食材を使った洋食で、地元のお野菜や畜産物を存分に使ったものだった。
薪料理もふんだんに取り入れていて、5階に居てもレストランからの薪の香りをほんのりと感じる。
夕飯には長野の日本酒を頼んだ。
意外と甘く感じたので、邪道かもしれないけれとも氷を一粒入れたグラスに注ぎ、キンキンに冷やして飲む。
お食事は外はかりかり、中はふかふかのサワラなんかをふき味噌なんかと共にいただいた。人工的な味は一切なく、野菜はおそらく30種は使われていた。
松本十帖には、4つの幸せがあった。
一つ目は、温泉の幸せ。
お部屋に温泉が常に暖かい状態で湧き出ているので、気が向いた時にささっと靴下を脱いで、足湯を楽しんだ。
二つ目は、本の幸せ。
滞在中、辰巳さんの本や犬山さんの本、「私の名前は本」、「あなたのことがだいすき」「内臓とこころ」エインリッヒフロムの「生きるということ」など、薄い本も含めて合計10冊近く読んだ。
三つ目は、食の幸せ。
朝食は無添加のにんじんジュースからはじまり、自家製ジャムの乗ったヨーグルト、10種類くらいのフレッシュな野菜が使われたサラダボウル、隣のベーカリーの焼き立てパン、珈琲など、「まずは生の野菜を摂りたい」わたしにはぴったりのラインナップだった。
(キッシュやハムもついてくるので、男性も満足する量だと思う)
どこかに泊まりに行くとき、野菜不足がイヤなので、いつも青汁を持って出掛けるのだけど、このお宿に関しては、青汁の出番が無かった。そのくらいふんだんに野菜をいただける。夕飯のお味は複雑で繊細。だから、化学調味料のお味に慣れてしまった人には、いいリハビリになると思う。
さて、4つ目は、というと、やはり空間。
個人的に
すっきりとしていて、
色数が少なく、
どこかほっこりとした
落ち着く場所が好きなので、
コンクリート打ちっぱなしはそんなに好きではないけど、開放感が心地よいお部屋でゆっくりできた。
ホテル自体がサスティナビリティに重きをおいていて、アメニティは共有部分にピックアップしにいかないと無い仕組み。
これを面倒と捉える方もいるのかもしれないけれど、わたしに取ってはすっきりとしてむしろありがたい。
歯ブラシや魔法瓶なんかも、いつも持っていくタイプだし、ペットボトルや使い捨て歯ブラシが置かれているよりも、スッキリしてずっと気持ち良い。
そんな訳で、
おこもりをテーマにしたステイには最適過ぎるお宿で、脳味噌には本、胃袋には野菜、皮膚には温泉でたっぷりと潤いを与えて帰ることとなった。
ここのオーナーの岩佐さんという方は
魚沼にも魚沼十帖というホテルをしてて、以前から存じ上げていた。
ローカル意識、温故知新意識、SDGS意識。
常に最先端に挑戦していて尊敬です。
「ひとり旅」というのはハードルが高いと思われると思うのだけど、
たまには話し相手が本しかいない環境も悪くないのです。
たくさんのアイデアが浮かび、本を通して自分と会話ができた、そんな週末でした。
おいしかったカレー
6年使ってるマグボトルはお水を入れて使う。
フェイシャルマスクは必ず旅に持っていく。
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