「イルミナ」創刊号 感想note

こんにちは、菜央こりんです。
noteを更新するのは久しぶりです。
なぜなら長い文章を書くのが苦手だからです。(だから漫画を描いています)
しかし、これはnoteでアツく語らねばという出来事があったので
久しぶりに更新しました次第です。

というのも、11月1日おもしろ同人誌バザールにて、
”ストリップと社会と私を考えるZINE イルミナ”創刊号が発行されました。
こちらのZINE、制作されている方々はストリップのお客さんとして仲良くさせていただいている方々ばかりであり、昨年末刊行された”準備号”ではロゴを提供しました。(今回の創刊号でも使用されています)

イルミナ_note

〜偶然このnoteにたどり着いたストリップのことをよく知らない・菜央こりんの作品も読んだことないよという方のために一応解説〜
「イルミナ」を作られている方々は女性で、今回文章を寄稿している方々も女性ばかりなので、有り体に言えば「ストリップが好きな女性たちが作ったZINE」になるのですが紋切り型で「”女性”ならではの視点〜」とか「”女性”だからこそ〜」と語るのは失礼にあたることだと思います。
ですが、とはいえ今のストリップのことをよく知らない方からすると「女性がストリップに⁉︎」だと思うし、そこから「イルミナ」やストリップに興味を持ってもらえたらそれが一番だと思うので一応ここで言及させてください。
(その前提をすっ飛ばして書くことも考えましたがせっかく興味を持って記事を開いてくださった方に不親切かと思い)

そして、以下の2点を踏まえると読みやすい記事なのではないかと思います。

①女性がストリップ劇場に行っても良い空気である(演者や劇場が歓迎している)
とはいえ「男性客が迷惑するのでは!?」とよく言われることがあるし、
私もストリップ劇場に行った当初そのことを心配していたのですが
思った以上に男性客は紳士だし、
100回以上劇場に行ってますが「来るんじゃねえ!」みたいなことを直接言われたことはないです。
思った以上に男性客が紳士だよ、ということは拙作「女の子のためのストリップ劇場入門」
ねとらぼさんで公開されたインタビュー記事を読んでいただきたいと思います。

②ストリップのファンが同人誌を作るくらい盛り上がりを見せている
今回感想を書く「イルミナ」さん以外にもストリップを取り扱ったZINE・同人誌は色々と出ています!私が観測しているここ3年くらいはコミティアやコミケや文フリにスペースがあります。

長い前置きになりましたが、
今回発行された「イルミナ」の創刊号の表紙をご覧ください

イルミナnote用2

うーんキラキラで素敵…同人誌の醍醐味ですね…

イルミナnote

!?(最近ずっと見てるからかノリがYouTubeっぽくてすみません)

なんと、拙作「女の子のためのストリップ劇場入門」への
書評を 坊主ストリッパーの清水くるみさん渋谷道頓堀劇場所属の踊り子さんである宇佐美なつさんのお二人が書いてくださっているとのことで!!!
今知った風に書いてますが事前に「清水くるみさんと宇佐美なつさんから寄稿をしていただく」という旨を連絡はされていましたが、こんなに表紙にドドドンと載るとは知らず、とても恐縮な気持ちですが、この豪華な方々から寄稿をいただくのですからドドドンと載るのはなんら不思議でない現象でしょう。

こちらは書評を書いていただいた拙作のリンクです

ステージ上の方は、観客にとっては雲の上の人物であるので
そのような方々から長文の書評をいただけるということは身に余る光栄です…
という気分です。漫画を世に出すにあたって、いろんな方から感想いただき、その度に恐れ多く思うのですが
私の生活は9割の時間を一人で過ごしているので自分や作品について他の人から言及されると驚きます。(もちろん、嬉しい感想に喜んでいます)
他人に対する過剰な反応と表現をお許しください。

ということで、このお二方から寄せられた書評の感想を中心に
それ以外のコンテンツについても魅力的なものがたくさんなのでいくつかピックアップして書いて行こうと思います。

・清水くるみさん「ピンクの照明が照らす未来」
温泉場の劇場への出演を経て、現在は配信に現場にと、マルチな活躍をされている清水くるみさん。
くるみさんが劇場でストリップの魅力を伝えるために孤軍奮闘していた頃に同人誌時代の私の作品に出会ったとのこと。(とのこと、とか書いてますが本文で言及されているように私が劇場にて差し入れたのです。)
作品を描いていて嬉しいことは沢山ありますが、中でも嬉しいことは「自分の作品を読むことで他人にポジティブな影響を与えること」だと、それはハッキリと思います。
そして、くるみさんが拙作に触れて「自分が信じるストリップの良さ」に自信を持つことや前向きな気持ちになれたというようなことが書かれていて純粋にとても嬉しかったです。
「ストリップ」という単語に対して、世間からいろいろなイメージがありますがマイナスなものの方が多いです。でも実際のストリップを観ると価値観がひっくり返るのですが「観に行く」までがなかなか難しいです。
でもストリップを伝えるときに100%ポジティブで美しい言葉で伝えるのは何か違うところもあって、その塩梅はかなり難しいところです。
何より劇場・演者・観客のスタンスが様々で、ストリップを表現するときにピッタリと当てはまる言葉が無いのです。「ベストはこれ!」という指標もなく、誰が一番/どこが一番というのをあえて決めない、それぞれが違っていて良い、という空気がストリップ界隈には漂っていてそれがとても素晴らしい所です。が、この情報溢れる社会に於いて「キャッチーに一言で言い表せない」というのは伝達のスピードに欠けます。ですがそれでもストリップの力を信じる同じ志の人たちがいるのであれば、泥臭く色々な側面を発信して行きたいと思います。(後半から感想ではなく決意になってしまいました)

・宇佐美なつさん「視線の中で生きる私たち」
元ストリップ劇場のお客さんから踊り子としてデビューした宇佐美なつさん。
(お客さん時代から絡みがあり、踊り子さんとしてデビューした際はかなり驚きました。)
舞台上から受ける可憐な印象とは少し違う、クールな文体で語られる書評は、とても励まされる内容でした。
自分がストリップについて作品を作る時、「踊り子さんを尊敬するあまり神格化してしまったり、望まないイメージを押し付けて発信してしまったりしないだろうか」、と悩むことは少なくないです。今でもそう思います。そこに宇佐美さんは観客が”見る”ということ、それに対してどう受け取っているか、ということを文章化されています。
ストリップの観客が”見る”という暴力性を自覚して向き合い、それでも良い関係を探り続けている、というところはストリップの大好きなところの一つで、それが観客の幻想ではなく踊り子になっても実感できることであるのならば励まされる人も多いのではないかと思います。
普段の生活で他人に無遠慮に浴びせられる”視線”が、なぜか性風俗であるストリップ劇場で、丁寧にコントロールされているという不思議な現象を沢山の人に実感していただきたいです。そしてその現象は、これからも互いが探りながら続いてほしいと思うことです。

・菜央こりん同人誌レビュー
なんと編集部のあいださんによる、今まで制作した同人誌の一つ一つに対するレビューまでついていました。
今まで制作したストリップについての同人誌は7冊というのが感慨深いです。
全部読んでいただけて、レビューまでしていただいてありがたいです。そして本の中で伝えたかった魅力が伝わっているんだな、ということがレビューから伝わり、本を作っていてそれはとても嬉しいことです。
発行時系列順に振り返る機会はあまり無いので
振り返ってみると「あの時だからこういうことが描けたな」ということが多いので漫画的に不出来でも・ストリップの理解が充分に深まっていない状態でもパッションで本にしていくことは大切で、それこそ同人誌の醍醐味だなと思いました。(勿論無理解で界隈の人たちを傷つける表現には気を付けるべきです)

一部は講談社から出ている「女の子のためのストリップ劇場入門」に収録されていますが、
未収録のエピソードの方が多いのでぜひチェックしていただけると嬉しいです。
在庫がある分は下記の書店さんで取り扱いがされています。
「菜央こりん」で検索すると出てきます。

・タコシェさん
http://taco.shop-pro.jp/?mode=srh&sort=n&cid=&keyword=%BA%DA%B1%FB%A4%B3%A4%EA%A4%F3
・シカクさん
https://shikaku-online.shop-pro.jp

以上が「女の子のためのストリップ劇場入門」刊行にあたっての記事になります。
書いていただき本当にありがとうございました!

以下、「イルミナ」に掲載されている記事の中でピックアップして感想を書きます。(本当は全部に対して書きたいのですが、既に長すぎワロタなので一部で失礼します。)

・インタビュー メイキング・オブ・ノーナレ「裸に泣く」
2018年10月2日にNHK総合にて放送された、ストリップを取材したドキュメンタリー、ノーナレ「裸に泣く」。
ストリップの踊り子と観客にフォーカスを当てたドキュメンタリーで、「なぜ、女性がストリップに?」という答えの一つに辿り着いている映像だと思います。そして、NHKで「猥雑」や「昭和遺産」という切り口ではない方向性でストリップの映像が作られたという点も快挙だと思います。
有料ですがたったの110円で今でも見ることができるので是非見ていただきたいです。
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2018092179SA000/

イルミナでは、この「ノーナレ」の番組制作のディレクターのSさんに対してインタビューの形式で
「なぜ、ストリップを題材として扱ったのか」「制作のメンバー内でのストリップに対する反応は?」「アイドルとストリップの違いは何だと思いますか?」ど気になるところを聞きながら、制作が決まってから放映後のことまで幅広く伺えます。
踊り子さんの素敵なエピソードもてんこ盛りなので、ストリップのファン必見。
中でも好きな部分は、
【最初に私が頭の中で描いていたストーリーは、ある種典型的な「男性がスケベな目で見ているストリップに、実は女性のファンが…」というものでした。でも、取材していくにつれて、「男性がスケベな目で」っていうのはこちらのステレオタイプだったとわかった。】
とSさんが回顧しているところです。
今のストリップを伝えるにあたって、「女もストリップに行く」よりも伝わりづらくて、これは実際にストリップに連れて行っても伝わらないことが多くて歯痒く思っているところの一つなので、それに気付く方がストリップに出会ってくださって良かったなと思います。
あと、「特に印象的だった出来事」の一つとして私が大和ミュージックにSさんを連れて行ったときに観た、私の推しのお姐さんである時咲さくらさんについて言及されています。(番組制作の際、Sさんから「フロリダ」で取材を受け、その後大和ミュージック劇場へ案内したのです。)時咲さくらさんは引退されたのですが、一眼観ただけで凄みが伝わるお姐さんであった記録が文章に残ったのでファンとして純粋に嬉しかったです。(やっぱり私たちの観ていた”おときさん”は凄かったんだぞ!と胸を張れます)

・踊り子へのラブレター to黒井ひとみ
2020年某日にWEB上で繰り広げられたという黒井ひとみさんを愛する女たちの集会の記録。
文章なのに参加者の盛り上がりが伝わって、その勢いに「この人たち好きすぎるだろー!!」と思わず何度も笑った。
「黒井さんのこんな演目・こんな衣装が見たい」と語っている部分は黒井さんの魅力を踏まえた上での妄想1000%で大好きです。黒井さんがなぜこんなにも女性を魅了するのか…という理解が深まりました。
この記事に加えて、黒井さんの「踊り子万葉集」がイルミナ内に散りばめられているので、黒井さんを見たことがない人にもご本人の魅力の欠片が伝わるようになる構成になっていてすごい(小並感)

・踊り子へのラブレター to武藤つぐみ
表紙のイラストも描かれているひなさんによる武藤さん愛に溢れた6ページ!
ひなさんのイラストはステージを見ている時の感動をそのまま切り取ったようで、再現度が高くてびっくりします。
見たことがない演目も、こういう魅力があるんだ…という説得力に溢れていて、観てみたいなと思いました。武藤さんを見たことがない人も、ひなさんの絵を見たら絶対に興味を持ってもらえる…そう確信します。
私が感じている武藤さんは飄々としていてミステリアスかつピュアな方という印象で、演目について多く語る方でもないので「武藤さんのことが大好きな観客はこう感じている!」というのの解説は武藤さん観を広げられます。

・踊り子へのラブレター to友坂麗
言葉にできない友坂麗さんの魅力を紐解いていく座談会のタイトルは「友坂麗とは何者なのか」。(本当にそう!)
私は友坂さんといえば「ムンムン」な踊り子さんだなと思います。
色気や、女っぷり、踊り子然とした空気が「ムンムン」としている…と感じているのですが、そんな言葉だけじゃ表しきれないよ〜!と思っていた痒いところを掻いてくれる…そんな座談会。
友坂さんの名前が完璧だ、という話で【「友」で親しさ・暖かさ、「坂」で求道、「麗」は字のまま】と語られていたのが、
その解釈があったかー!よく考えたらそうじゃん!というのと、そんなんめっちゃ好きじゃないと名前の意味とか考えないやん…!と感動しました。

・ストリップに行ったらドキドキとキラキラが大洪水な件
にゃがたさんによるストリップに関する文章です。
にゃがたさんと面識は無いのですが、あいださんから「にゃがたさんは面白い人ですよ」というのを伺っています。
劇場の中で感じることにおいて「わかる!」という表現が多くて、「イルミナ」で書かれている文章の中で感覚が一番私に近いと感じて、(勝手に…すみません)私もこういう面白くて熱っぽくてわかりやすい文体で語れる人でありたいと思いました。

最後に…

「女の子のためのストリップ劇場入門」の連載中から何度も思っていたことがあります。
それは、「私はストリップの魅力を全然伝えられてないんじゃないか」ということです。
連載中に趣味かつ取材を兼ねて劇場に行くたび、劇場での美しい光景に、画力的にも表現的な意味でも全く追いついてなくて、私が作品を描くのに相応しくないのではないかという想いは募るばかりでした。
単行本を出した後、浅草ロック座に行き、やはり素晴らしいその光景に「やっぱり私はストリップの素晴らしさを100分の1も描けていません」と見知った常連さんに弱音を吐いたところ、「100分の1でも描くことが大切なんだ。それは誰でもできることじゃない。」と声を掛けられました。
うまく言えませんが、同人誌を作ること・作品を作ることは総じてそういうことだと思います。(上の方の文章でも同じようなことを何度も言及していてしつこいかもしれませんが…)だから、不完全でももがきながら作品を作っていくべきだと自分に言い聞かせます。「イルミナ」の趣旨とは違うかもしれませんが改めてそう思ったので必要ないかもしれませんが追記します。

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