ショートショート「感想文部」
たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加してます。
今回のお題は「感想文部」です。
感想文部
感想文部の部長が卒業する。
わたしが次期部長となった。
この感想文部とは、「亡くなった人間の物語」の感想を書く部だ。
部員が「興味深い人間だな」と思った人物を選び、生から死まで、その人生を読んでいくのだ。
そして感想文を書く。
卒業する部長がわたしに言った。
「君、この青木という人物についての感想文だが、褒めすぎではないか?この人物は肝心なときに逃げることが多かったぞ」
「でも」
「でも?」
「逃げることで自分の体と心を守り長生きした。そして孫を可愛がり、孫の前では決して逃げなかった。悪くない人生です」
「そうか―自分の前世をそう言われると、悪くない気持ちで地上に降りれるな」
「いよいよ卒業ですね。生きることを楽しんでください」
「ありがとう、次期部長」
わたしたちは生を終えた後、新たな命に生まれかわる日までいろいろな場所で過ごす。感想文部もその場所のひとつだ。
たくさんの人の物語を読もう。
わたし自身の、卒業の日まで。
***終わり***
読んでくださってありがとうございました。