2021年日本は『コッペリア』の当たり年?
ふと気づくと今年の日本公演は『コッペリア』が沢山。
一時あまり上演されなくなったな、と思った時期もあるのですが、今年はまず5月に4配役無料ライブ配信を行った新国立劇場の『コッペリア』がありました。
こちらはローラン・プティ版という、日本のダンサー、カンパニーにとってはなかなかハードルの高いバージョンでしたがダンサー毎の個性も見えて楽しい舞台でした。
COVID19で無人での公演となったのは残念でしたが、配信で見た人が実際に劇場に足を運んでくれたらと思っています。
プティ自身が演じたコッペリウスをご覧になっていて "理想" とするとこれではない…となった方もいらっしゃるのかもしれませんけれど。ですが、プティは存命中からダンサーに合わせてかなり振付を変える方でしたし、(『若者と死』などが映像で比べやすいかなと思います)作品は生き残るためには上書きされ続けるものだと私は思っています。
ついプティ版について長くなりましたが、次はスターダンサーズ・バレエ団。バーミンガム・ロイヤル・バレエ団との提携による公演で5月15日(土)、16日(日)予定だったのが6月12日(土)、13日(日)に変更となりました。
こちらはピーター・ライト版。
ちなみにこの延期、実はスエズ運河で3月に愛媛県の正栄汽船所有の大型コンテナ船「エバーギブン」が座礁した事故の影響によって舞台美術が間に合わないという事での決断でした。こんな形でもバレエは社会情勢ともつながっているのだと感じてしまいました。
そして7月31日(土)17:30 開演、8月1日(日)15:00開演は井上バレエ団『コッペリア』がひかえています。こちらはピーター・ファーマー美術。衣裳、関直人振付を石井竜一が再構成・振付したバージョン。
そしてボリショイ・バレエ in シネマにも『コッペリア』がラインナップされています。こちらは歴史的な再現上演に力を注いだセルゲイ・ヴィハレフバージョン。
来日公演が実現するのは少し先になりそうですが、こうしたいくつかのカンパニーの同じ作品を見るのもバレエの愉しみです。
劇場に行かれる方は是非そんな愉しみに出会っていただえたら、と思います。
歴史の事も少しだけ。
『コッペリア』はしばしば「ロマンティック・バレエ時代の最後の作品」といわれる作品でもあります。
初演は1870年5月25日、パリ・オペラ座での事でした。オペラ座と言っても今の劇場が開場したのは1875年ですので、その前のパリ・オペラ座、ペルティエ街にあった時の話です。
音楽はレオ・ドリーブ、振付はアーサー・サン=レオン。
主役のコッペリアを踊ったのはイタリア人バレエ・ダンサー、ジュゼッピーナ・ボザッキでした。
ジュゼッピーナ・ボザッキ(1853~1870)
『コッペリア』が最期の作品となり、この年の11月に17歳の誕生日に死去、モンマルトル墓地に葬られています。
イタリア人?と思われた方、さすがです!
バレエは「イタリアで生まれて、フランスで花開き、ロシアで完成した」と言われますが、ロマンティック・バレエ時代にもテクニックを持ったダンサーといえばイタリアのダンサーが筆頭に上がったのです。
(また別の日に書きますが、ストとCOVID19で延期された最後の公演に今日出演したエレオノーラ・アッバニャートは久しぶりのパリ・オペラ座の最高位のダンサーとなったイタリア人でもあります。先日初めて韓国人エトワールセ・ウン・パクが誕生したばかりですけれど、それもまた改めて。)
話を戻して…初演の時のパリ・オペラ座は女性だけがいればいい、という状況でしたので、フランツも女性ダンサー、ウージェニー・フィオークルが踊っています。(このダンサーはドガの『泉』にも描かれています)
私は見たことがないのですが、以前バレエ史家の薄井憲二氏に「1980年代までは時々女性が踊っていた」と聞きました。どんなだったのか気になります。