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オーギュスト・ヴェストリスはご存知ですか?

まず、この肖像画。

女性に見えるでしょうか?男性に見えるでしょうか?

正解は男性。

Auguste Vestris (27 March 1760 – 5 December 1842)
『ジゼル』や『コッペリア』が生まれる少しまえの時代のスターダンサーです。

跳躍力でも知られたダンサーで、バレエ・リュスでニジンスキーがデビューした際には「ヴェストリスの再来」と新聞に書かれました。

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パリ・オペラ座図書館の公開している(一般の見学券で見られる部分)に展示されています。

これは1800年頃の作品だそう。

(ガラスケースに反射して照明の白やら私やらが写り込んでしまっていますが気にしないで見て下さい)

とても美しい男性で、実力もあり、人気もあったダンサー。

ある時公園を散歩しているとご婦人とぶつかってしまいました。
当時の常識では「お嬢さん、お怪我はありませんか?」と男性から問いかけるもの。ところが、ヴェストリスが何と言ったでしょうか?

なんと「お嬢さん、貴方はもう少しで世界中の女性を泣かせるところでしたよ」と言ったとか。

それだけの人気だったのでしょうけれど、性格的にはどうだったのかな?と色々想像してしまうエピソードです。

ただし、マリー・アントワネットの「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」というのがフィクションであったようにこのセリフも本当だったかどうかは分かりません。

また、バレエ史的な視点から見ると、あまり注目されませんが、彼はバレエ教師として非常に有名なダンサーを多数育てています。デンマークのバレエ史で決して忘れることのできない重要な存在である、オーギュスト・ブルノンヴィル、ロシアに渡ってチャイコフスキー三大バレエを振付けたマリウス・プティパ、その兄リュシアン・プティパ、さらにロマンティック・バレエ時代の最強の女性ダンサー、ファニー・エルスラーにマリー・タリオーニ。教育者としても才能があったのでしょう。

そして彼の最後の舞台は何と!75歳タリオーニを相手にメヌエットを踊ったそうです。

バレエを踊ったというわけではありませんが、その年齢で踊れた、見たいと思う観客がいたことがさすが大スターの貫禄、といったところでしょか。


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