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ファストコミック全盛期突入?・・・縦読みフルカラーマンガはどこに向かうのか・・・?

私がフィクションのストーリー漫画から離れてもう10年以上たってしまいました。ブログで無料発信し、まとまったら電子書籍として販売するという方法をとろうとすると、ノンフィクションのエッセイや自伝的マンガが一番マッチしていたというのが一番の理由です。
でもそろそろオリジナルストーリーの、"ちゃんとした”マンガを描きたいなと思ったとき、どんな形式で描くのか・・・というところで迷いが出ました。

マンガ業界は今、スマホで読みやすいウェブトゥーン形式の縦読みマンガに可能性を見いだそうとしています。私を含め、マンガ家やマンガ家志望の人の多くがその波に乗るべきか迷っているのではないでしょうか。

始めに言っておきますが、マンガの新しい流れを否定する気は一切ありません。私はWEBコミックが普及したことで恩恵を受けてきたマンガ家だし、これからもWEB中心で発信するでしょうし、縦読みフルカラーマンガがこれから時代の主流になるゾと言われたら、その通りかもねと素直に思うからです。

でもこの2年間、マンガ学校の先生として若い世代と交流したり、様々なマンガを読んで考えた結果、どうしてもひっかかることがあるので書かせていただきます。

縦読みマンガは「ファストコミック」?

読者としてまず感じたのは、縦読みフルカラーマンガは確かに読みやすい、ということです。それは「早い・うまい・安い!」のファストフードのよう。多くの作品がフルカラーにもかかわらず週一回更新され、ほぼ無料で、スマホでいつでもどこでも読めてしまうからです。
最初は私も「すごい時代になったな~」と感動しつつ読みあさりました。(お気に入りは「先輩はおとこのこ」です💖)
でも、「面白い!」と思った作品でも、何度も読み返そうという気持ちにならないんですよね、なぜか。

縦読みマンガって、「あのシーンは何話のどのあたりだったかな?」と遡るのが意外と面倒くさい、ということがまず一つ。
スマホでさらさら読めて、ほぼ無料だったり無料のような感覚(月額制など)で読めてしまうということが、作品への特別な愛着をわきにくくさせている気がする、というのが二つ目の理由かなと思います。

もちろんそれはWEBコミック全体に言えることかもしれませんが、私は特にウェブトゥーンのような縦読みフルカラーマンガでそれを感じました。
実は私、気がついたら作者の名前を全然確認してないんですよね。
誰が描いているかより、タイトル画像のパっと見と、2~3話読んでノって行けるかどうかが判断基準で、ダメなら見切りも早く、次から次へとあさっていく感じで読んでしまうのです。
それを意識してか、タイトル(画像)と中身のギャップが激しい作品もかなりありました(笑)。まずはクリックしてもらわなければという、作者の必死な思いを感じます。。。

マンガ家側から見た縦読みマンガ

では、マンガ家側から縦読みフルカラーマンガを考えてみるとどうかと言えば、フルカラーで背景まで細かく描かねばならないというのはかなりの労力です。しかも、コマと吹き出しのレイヤーはきっちり分けて描かねばならず、「背景のややこしい部分は吹き出しで隠しちゃえ!」みたいなことができません(笑)。
もちろん、一度描いた背景や人物は簡単にコピペできる上、左右反転や拡大縮小、細かいアレンジ等で手間を省くこともできるのですが、それでもフルカラーで週一回更新を続けようとすれば分業制が妥当で、結果、そもそも少ない原稿料がさらに減ってしまいます。(少なくとも現状の日本では)

知人が縦読みフルカラーマンガの世界に少し関わっているのですが、ネームを担当した場合の原稿料を聞いて「絶対私には出来ない・・・」と確信しました(笑)。

さらに、私のように電子書籍化されてはじめて収入に結びつくスタイルのマンガ家にとって分業制は難しく、少なくとも人気が出て軌道に乗るまでは、すべてひとりでやることになります。単行本に再編集する作業も自分でやるとなると、それはそれはとんでもない労力です。

つまり、どこかに所属して描こうが個人で描こうが、読者にとっては「ファストコミック」的な位置づけになりやすいのに、作者には見返りが少ない「やりがい搾取」の世界なんじゃないかと危惧するわけです。

作者だけがツライ?青田買いシステム

もうひとつ、縦読みフルカラーマンガを読んでいて思ったことがあります。誤解を恐れずに言わせてもらえば、フルカラーの美しい画面、少なめの分かりやすいセリフ・・・それらが描き出す世界はどこまでも読者にやさしく、読者を甘やかしているな、と(笑)。

私も含め、読者は欲張りで飽きっぽいです。
フルカラーで週一回読めるのが普通だと思うと、より美しい画面や面白さ、間隔の短い配信をのぞむようになります。それに応えられないマンガ家は早々に激しい競争から脱落していくことになります。

そして出版社や制作サイドは、今がチャンスとばかりにくすぶっているマンガ家たちに声をかけ、「お試し期間」と称して何話か連載させ、人気が出たら囲い込むという青田買いスタイルを堂々と提案してきます。

なんだかねぇ・・・と、思いませんか?

ま、こういう不満を言うと「だったらやらなきゃいい」という自己責任論で一刀両断されそうなのでこの辺にしておきますが・・・。

「よし!私も縦読みフルカラーマンガの波に乗っていくぜ!」とはとても思えない今日この頃。結局、従来のスタイルで描こうかなと思ってます(笑)。




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