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「育児のエッセイまんが」はこれからもずっと売れ続けると思うわけ。

岡田斗司夫さんが、コロナ後の社会の「ホワイト革命」について解説されている動画を見ました。とても興味深く腑に落ちる点がたくさんありましたので、興味のある方は是非ご覧になってみてください。

「ホワイト革命」とは、私なりの解釈で恐縮ですが、簡単に言ってしまえば「ネガティブなものを排除し、美しいものを愛でて共有する傾向が強い社会」への変革です。ネガティブなものに該当するのは、不潔さや、暴言、悪口、他者とのあからさまな対立・・・などです。

コロナの感染対策の流れから、人との距離感や誰かと物を共有することへの抵抗感など、私たちの「不潔さ」への感度は確実に増しました。また、男性脱毛が一般化したり、性差にかかわらず清潔感や美しさの基準がどんどん上がっていることも感じます。
こうした「不潔さ」への嫌悪感は言動も含みます。芸能人の不倫が執拗に非難されたり、テレビのコンプライアンスが厳しくなったりしたことは多くの人が感じていることと思います。逆に「人を傷つけない笑い」や「悪人が誰も出てこないドラマ」に高い評価がつくことが「ホワイト化」の現れだとも言えます。

こうした傾向はマンガの世界でも見て取れるなと思っていたので、妙に納得してしまいました。

今人気の「スパイファミリー」も、その意味ではとてもホワイトな作品です。戦いのシーンでちょっと残酷な場面もありますが、異国の地の異国の名前の登場人物たちのストーリーという設定によって、読者とほどよい距離感を保つことができていますし、登場人物たちの抱える葛藤も非現実的で、読者のコンプレックスや弱い部分をリアルに揺さぶるようなものでありません。
コロナ禍で心身ともに疲れ切った私たちには、安心して読める作品なのです。
ムダに心を揺さぶられない、「不快」にさせられない安心感・・・今後もきっとこういう「ホワイトな作品」がヒットするのではないかと思います。

また、年齢が若い子ほど、こうした「ホワイト化」が進んでいると岡田さんはおっしゃっています。私もそれは実感していて、マンガ学校の学生さんを思い出しても、大学生の甥っ子などを見ていても、確実にそういう傾向を感じます。波風たてることなく周囲と仲良く共有する文化、傷つけ合ったり対立したりすることを時間とエネルギーの無駄と嫌悪する文化なのです。

ただ、こうした「ホワイト化」が進んでいく社会で、どうしてもホワイトでいられないのが「育児」です。

みんなが一様に清潔で、あたりさわりなく、穏やかに過ごしたいと願っている中で、育児の生々しさは「どぎつい蛍光色」と言えるかも知れません。

育児の大変さについてあえてここでは書きませんが、自分ではコントロールしきれない赤ちゃん(子ども)という存在が、嵐を巻き起こし、まさに波風をたてまくります(笑)。

これまで避けてきた・・・または「すでにホワイト化されていた」自分の中にも他人と比較する気持ちや嫉妬心があることに気づかされたり、無力感や訳の分からないイライラ、怒鳴ってしまったあとの絶望感、そして「うちの子もしかして天使ですか?」というキラキラした誰かのSNSをそっと閉じる時の空しさを突きつけられたりします。

また対立を避けてきた人にとって、子どもとの対峙は一種の対立でもあり、大きなストレスになり得ます。子どもを教育すると言うことは面と向かって間違いを正したり、説得したりなだめたり、時には厳しく叱らなければならない場面の連続だからです。

ですからこの先、社会や人がどんなにホワイト化されていっても、こと「育児」に関しては簡単に変化しないだろうと私は思います。心の奥に隠した、または自分でも認識できていなかったような生々しい感情をかき立てられる営みとして、育児は「ホワイト化」から取り残されていくのではないでしょうか。

そんな母たちの戸惑いや葛藤、孤独感や絶望感を代弁し、笑いに変えてくれるような赤裸々な育児のエッセイまんがは、これからもきっと需要があると思います。キラキラしたSNSをあげている人も、実は次の瞬間「それやめて~!」って怒鳴ってたりするんですからね(笑)。

社会全体のホワイト化は確実にマンガ業界にも波及していると感じますが、すべての作品が「可愛い子犬と赤ちゃんの動画」みたいになっちゃったら、ホント、つまんない世の中になっちゃいますもんね(笑)。

時代に合わせて適度にホワイト化させた、でも、ちゃんと心を揺さぶる育児エッセイまんががこれからもたくさん出てきて欲しいなと思います。

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