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amazonレビューの人格攻撃を見ながら「エッセイまんがを描いても傷だらけにならない方法」を考える

私も含めてですが、エッセイまんがを描いて傷を負う(?)マンガ家は結構いると思います。それは読者からのレビューで人格攻撃までされるからです。
私の「わが家は今日も建築中!」という作品についたAmazonKindleのレビューをひとつ参照してみますと・・・

★1
「途中までは楽しく読めましたが、夫が実家に盆と正月の年2回帰ることに不満を持っているのがびっくりしました。しかも嫁も毎回連れて帰っているわけでもなさそうなのに。てゆーか嫁に行ったのでは…??愛知に家を建てろと言われているわけでもなく好きな場所に建てようとしているのに、旦那のこと勘ぐりすぎです。可哀想」

 これを取り上げたのは、このレビューを書いた方が、
「嫁は頻繁に夫の実家に帰るのは当然であり、「嫁に行く」とはそういうことで、なんなら夫の実家の近くに家を建てることも辞さないのが普通である」という自分の価値観を作者である尚桜子に否定された、と思っているであろうことが推測されてとても興味深いからです。
(何はともあれレビューしていただきありがとうございます!)

 エッセイまんがというのは、身近なテーマであればあるほど、読者が「自分の価値観とのすりあわせ」をしやすくなります。
それ自体は決して悪いことではなく、あるある!と共感したり、自分とは違う経験や捉え方に新たな発見をしたりすることで、作品をより楽しめることにもつながります。
ただ、身近なテーマはみんな心のどこかで「ひとこと言いたい」と思っていることも事実で、とくに不満をもっていることや日頃からモヤモヤしている部分を一度刺激されてしまうと、そこから先は冷静に読み進めることができなくなってしまうのでしょう。「作者は間違っている」という証拠探しのためだけに読まれてしまっては、作品本来のテーマもなにもあったものではありません。

そして、こういう方は最後まで読まずに白黒つけてしまうので、余計に誤解が生じます。
多分、いえ、この方も絶対に最後まで読んでいないのがコメントから分かります。

なぜならその後の巻で、夫自身が実家へのこだわりや葛藤を吐露する場面が出てきて、実はそのことがとても大きな問題だったと夫自身気づく場面が物語の山場になるからです。そしてまた私自身も自分の問題に気づき、葛藤し、心を改めて、夫婦が家づくりを通して再出発するという結末だからです。

私は専門校でエッセイまんがの描き方を教えるとき、「本当にそう思ってる?」としつこく学生に問いただすことがあります。
「雨が降るとイヤ?本当に?雨が降ってホッとすることってない?」
「こういうとき本当に泣く?すぐ涙出る?」
「うれしいだけ?不安な気持ちは少しもない?」
そうやって問い続けると、学生たちも黙~って、これまで経験した様々な場面に思いをめぐらせ、絞り出してきます。
エッセイは自分の心の奥底になにがあるか、深く深く見つめて描かなければ決して良い作品にはなりません。自分でも気づかなかった感情にスポットを当て、なぜそんな気持ちになったのか・・・場合によっては自分の生い立ちまで遡って分析する必要があります。

見たくなかった自分まで掘り起こして、だからといってゴミ箱の中身をすべてぶちまけるのではなく、エンタメとしての許容範囲などを客観的に判断しながら作品にしていく・・・。

 そこまでして描いた先に待っているレビューが、作品の一部分を読み、自分の価値観との相違だけで人格を攻撃してくる(と本人は気づいてもいない)レビューであれば、作者は浮かばれないなと思うわけです。

もっと言えば、私の作品に★1をつけたその方にも是非一度ご自身を見つめていただけたらと思います。忙しい中わざわさ「てゆーか嫁に行ったのでは・・・??」と打ちながら、誰の顔を思い浮かべ、どんな記憶をたどっていたのか・・・。
(あくまで私の推測ですが、女性ならご自身が2世帯同居で苦労しているとか、男性なら自分の妻がこんなことを思ってたらどうしようと不安になったとか・・・何かあるんでしょうね。感情をもろに出したレビューをいただくとついいろいろ想像しちゃいます。)
 
 それはともかく、私の作品のレビューなんてまだまだかわいいものです(笑)。amazonを見ているととんでもない人格攻撃を受けていて、作者は大丈夫かなと心配になる作品を見かけます(特に夫婦関係を扱った作品に多い気がします)。

 もちろん読者の多くは賢明な方々だと思いますが、人格攻撃されてへこみたくなかったら、マンガ家も身を切った深いエッセイまんがは描かないことです(笑)。私はamazonレビューは購入から2週間ぐらいたたないと投稿できないシステムにしたらいいと思っていますが(レビューする人が冷静になる時間が必要)、とてもそうはなりそうもないので・・・。

かわいい猫とか犬とか・・・そういうのを描いているのが平和です(笑)あと矢部太郎さんのように、個性的でかわいいおばあちゃんとの交流を描くとかもいいですよね。大好きですよ、矢部さんの作品。

私も次にもしエッセイまんがを描くのなら、自分に火の粉が降りかからない内容にしたいですね~っていいつつ、結局掘り下げちゃうんだろうな(笑)。ま、度が過ぎる人格攻撃はともかく、辛口レビューも「何かが心に残った」証ですからね。ありがたく頂戴しましょう!(マンガ家の皆さん、お互い頑張りましょう!)

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