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おばあちゃんとお布団

昨日、施設に住む母方の祖母と久しぶりに会った。


家購入の資金援助のため、銀行に来てもらった。(本当にありがたや)


3歳で母の実家の近くに引っ越してきてからは、すごく頻繁に会っていた祖母。
生まれた時から自己主張の強い私は、よく家出と称して、祖母の家に1人で行った。


そんな祖母は、とにかく色々強烈な人だった。とにかくあれこれ強かった。
母は一人っ子で色々苦労したんだろうなと簡単に想像できる。


昨日も、「これからは年金は期待できないから、なおちゃんも子どもがもう少し大きくなったら外に働きに行きなさいね」と言われた。

「今も自分でお仕事をしているよ」と伝えたら(何度か話したことあるはずなんだけど)、今はいろんな変な詐欺がたくさんあるとニュースでやってるから、のめり込み過ぎないように、ほどほどのところで辞めなさいと。笑

母はこの会話を「私はこうやって小さい頃から色々ネガティブワードを刷り込まれて生きてきたんだわ」と笑っていた。

確かに、私も子どもの頃から、母は心配性すぎるといつも思っていた。
親の言葉はしっかり染み付くよね。


確かに思い込みと押し付けがすごく強いんだけど、たった2人の孫である姉と私のことは、本当にすごく可愛がってくれて、愛されているという記憶と、楽しかった思い出に溢れている。

いつも祖母の鏡台に姉と2人で座りおしろいで真っ白になったり、コレクションの宝石を見せてもらったり、得意なお裁縫を教えてもらって、よく針やミシンで縫い物を楽しんだ。

特に、お料理上手だったから、美味しい手料理もたくさん食べた。

祖父の駐在でシンガポールに住んでいたときに、現地で中華系の方から習ったものをアレンジしたという、祖母の春巻きは世界一美味しいと思う。実家で何がいい?と言われると、ついつい食べたくなる春巻き。
私も娘たちに受け継ぎたい味。

あとは、そうめんの薬味がいつもすごく豪華で、私もそうめんと言えば当たり前にアレで、結婚してから夫に出したらすごく驚かれた。


そんな祖母はコロナの影響でなかなか会えなくなり、最近は年1くらいしか会えてない。
昨日久しぶりに会ってみると、なんというか想像以上に、老いが進んでいて、正直すごくショックだった。


私の知っている祖母じゃなかった。


最近は、原因不明の痛みが身体中にあるらしく、いつも母が病院に連れて行っている。
(先生からは、全部気持ちの問題と言われているらしいけど、本人は本当に辛いから原因を知りたい。と病院に行くらしい)


車で銀行に向かう間も、痛い痛いと座っているのもすごくしんどそうで、書類を書くのも一文字一文字しんどそうで、そんな祖母の姿を見るのがとてもつらかった。


銀行での手続きを待っている間、祖母がポツリ
「おじいちゃんに早く迎えにきて」って毎日ずっとお願いしているの。
と言った。

祖父はコロナ真っ最中に、さらりと亡くなった。
施設で朝、目覚めなかったのだ。

どうやら前日の夕飯のかぼちゃの煮付けが喉に詰まっていた疑惑で、残るから最後に食べて!と祖母が、寝る前に食べさせたものが詰まっていたらしい。

(その流れが、いつものおじいちゃんとおばあちゃんの関係って感じで、いつも通りの最期だったねと、不謹慎だけど私たち家族は泣きながらみんなで笑った)


確実に死が近付いているとは思うけど、表現が直球すぎるけど、祖母は絶対にしぶといタイプで、そう簡単におじいちゃんはお迎えに来ないんじゃないかと思った。笑


帰りの車で祖母が「薄い羽毛布団はまだ?」と母に何度も訴えていた。

話を聞くと、施設が暑いらしく薄い羽毛を探しているけど「いいお布団に包まれて死にたい」とこだわりが強いらしく、なかなか納得してもらえないらしい。

母も母で、8月に出産した姉の産後のお世話とパートで忙しく、全然探せてないとのことだった。


ふと、私の家の近くの百貨店に、「西川」が入っていることを思い出した。

西川の布団なら、祖母も納得する「いいお布団」だろうと思い聞いてみると、西川ならいいと了承を得た。

(家を探していると相談している時も、施工業者が大手がいいと「ブランド志向」高めな祖母ということは、バッチリ把握済み)


そこで、祖母にプレゼントしよう!とすぐに西川に買いに行った。
噂には聞いてたけど、本当に布団はピンキリで、お店の方に事情を話して相談すると、6万円のお布団をおすすめされた。

聞けば聞くほど、「いい布団に包まれて死にたい」という祖母にぴったりな気がした。


でも母に電話で相談すると「それはやり過ぎだから大丈夫です」と言われたので(正直ちょっとホッとして。笑)、次におすすめのもう少し安いものを買った。

本当は電話せず(母に止めて欲しくて掛けたんだな、私)、値段も言わずサラッとカッコよく買ってあげたかったけど、布団に6万の勇気が出なかったです。
ごめん、おばあちゃん。

そのお詫びじゃないけど、店員さんからゴリ押しされたガーゼのカバーもセットにした。(西川の布団カバーは5千円もするのね)


さて、この布団を今からどうするかな?と考える。
いつもの私なら、次実家に行く時に持っていくだろう。

でも祖母の様子を見ていて、今夜から使って欲しいと思った。
そう思ったら、今すぐ持って行こう!と決めた。

母に電話すると、祖母と施設近くのスーパーで買い物中ということだったから、そこまで持って行く!というと、母に散々止められた。

私は5年くらい長女の保育園送迎で平日は車に乗っているけど、永年ペーパードライバーを自負するくらい、実家と保育園の行き来以外、断固として挑戦を避けてきたから、母は「無理だろう」と心配したのだと思う。

でも昨日は朝一、運転免許証更新のために、人生で初めて有料道路に1人で乗って、無事帰ってこれたを経験したばかりだったから、今ならどこでも1人でいける気がした。


とても単純だから、たった1回の挑戦で、永年ペーパードライバーから卒業した!(気が、すごくした)


早速ナビを設定して、ドキドキしながらスーパーに向かう道中で、急に視界が曇り始めた。涙だった。

私は本当はいつもこうやって、「やりたい!」って思ったことを、素直にシンプルに「じゃあやってみよう!」ってやりたかった。

それができている今、じわーっとしあわせを感じたみたい。

大好きな祖母に、自分の力でお布団を届けることができる。

やりたいと思った時にやりたいことができる、時間がある。
欲しいと思った時に欲しいものを買える、お金がある。

本当はあるかないかじゃなくて、やるかやらないかなんだけど、そんな細かいことはどうでも良くて、とにかく私は、今すごく豊かな気がするー!!
そう感じて、感動していた。


無事、祖母にお布団を届け、「おばあちゃん、すごく喜んでいたよ!」と後で母から連絡がきて、私もすごく嬉しかった。


なんでもいちいち大袈裟なんだけど、家族の中で、晩年末っ子の迷惑かけても役に立たないキャラの私が、こうやって家族の役に立てた!と思うと、自分を誇りに感じた。


その豊かな気持ちが、少なくとも寝るまで続けばよかったんだけど、1日外にいて家事を何もせず、そのまま保育園にお迎え行って溜まった家事をこなしながら、速攻鬼婆に変身しましたとさ。笑

おわり。

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