Naoko@日本語文法研究×日本語教師

日本語の文法を研究しながら、大学とオンラインで日本語教師をしています。学習者の「なぜ」…

Naoko@日本語文法研究×日本語教師

日本語の文法を研究しながら、大学とオンラインで日本語教師をしています。学習者の「なぜ」に答えられる教師を目指し、これまで20年以上日本語研究と日本語教育を続けてきました。気持ちだけでは人の役に立てません。日本語学習者のさまざまな疑問に答えるために、これからもがんばります。

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大学教員の私がnoteに記事を書く理由

 私は大学教員になって13年目になりますが、最近思うところあって、noteに自分の研究分野に関係する記事を投稿することにしました。私の日本語教師人生後半の大きな挑戦なので、ここに私の思いを書いておきたいと思います。私自身の自己紹介にもなりますし、もしかしたら同じ志を持つ人が読んでくださるかもしれません。 1. 日本語教師を目指すまで  私が日本語の文法研究を始めたのは2001年です。1998年に大学を卒業した後、いったん一般企業に就職しましたが、大好きな語学を仕事に

    • 練習の目的を考えよう:学生がスマホを見ると言う前に

      先日、日本語を教えている先生がこんなことをおっしゃっていました。  授業で文型作文をさせようと思っても、スマホで例文を調べて答えてしまうんですよ。スマホを取り上げるしかないですかね。 この記事を読んでくださっている皆さんはどう思われますか。 何のための練習か伝わってないんじゃないですか。そもそも文型作文が必要なんですか。 私はそう思ってしまいました。  日本語学校などでは、初級の文法がひととおり終わり中級以上のレベルになると、「~を限りに」「~をよそに」「~かたわ

      • ら抜き言葉は間違いか?

        (1) A.もうおなかいっぱいで、食べられないよ。    B.もうおなかいっぱいで、食べれないよ。 (2) A.明日の午後3時に面接をしたいのですが、来られますか。    B.明日の午後3時に面接をしたいのですが、来れますか。  上記(1)と(2)のAとBの文は動詞の形が少し違います。皆さんならどちらを使いますか。日本語の先生や日本語を学習している方の中には、「Bの動詞の形は間違いなのでは?」と思われた方もいらっしゃると思います。Bの「食べれない」や「来れます」は

        • AI時代に外国語を学ぶ意義~学習経験こそが財産~

           私は現在、外国人の方に日本語を教える仕事をしていますが、もともと大学の専門は外国語で、ペルシア語を専攻していました。高校3年生の時に進学先を決める時には、好きな外国語を勉強したいということだけ考えて大学を決めましたが、大学4年生になって就職を考え始めた時にどう仕事に結び付けたらいいかわからず、困ってしまいました。就職に有利にならないような専攻を選んだ私がばかだったのか。そう恨みたくなる日もありました。  最近、海外の大学で日本語を専攻している学生さんたちが、AI翻訳が発達し

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          研究テーマはゼロから考えない

           大学生の学業の悩みといえば、レポートや卒業論文などのテーマ選びではないでしょうか。「国際法のレポートが出たけど、何を書いたらいいかわからない」「ゼミで卒論のテーマを発表したけど、先生に全否定されちゃった」などなど、学生たちの声をよく耳にします。成長につながるなら悩むことが悪いことではないかもしれませんが、「私は批判ばかりされるようなダメな人間だ」と自己否定につながる危険性もあります。学生たちがもう少し気が楽になるような研究指導のあり方はないかな、と私自身悩んでいて、初めて研

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          日本語教師が教えるキャリア科目

           私は大学で留学生に日本語を教える仕事をしていますが、私の担当科目の中で日本での就職を目指す留学生のためのキャリア教育の科目があります。このような留学生だけを対象としたキャリア科目があるのはおそらく全国的にも珍しいと思います。大学のキャリア支援の対象者は主に日本人学生(中でも新卒生)であり、留学生への支援は不十分であると指摘されています(寅丸、他2018)。また、私自身がこの科目を5年間担当してみて、大学も留学生自身も、留学生が必要とするキャリア支援やキャリア教育のあり方につ

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          日本語教師の採用試験としての模擬授業

           私はこれまで日本語学校、専門学校、大学で日本語教師として働いてきました。それぞれ一般の公募に応募し、模擬授業や面接を経て、採用を勝ち取ることができました。その経験から採用試験としての模擬授業では「瞬発力」が高く評価されると感じましたので、その経験を共有したいと思います。 1. 私が受けた模擬授業について  最初に経験した模擬授業は日本語学校の非常勤講師に応募した時で、予め日本語学校から教材(助詞の穴埋め問題のプリント)が送られてきて、これに基づいて45分の授業を組み

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          レッスン料を値上げする意義

           私はオンラインで日本語を教えていますが、春からレッスンの料金を値上げすることにしました。日本における近年の物価上昇率や日本企業の賃金上昇率に合わせて適正価格でのご提供が必要と考えたからです。しかし、日本語教師の報酬適正化は、私個人だけでなく日本語教育業界全体にとって重要な意義があると思ったので、ここに意見を書いてみることにしました。    「日本語教師の報酬適正化がなぜ必要か」について、次の2点を挙げたいと思います。 1)外国人労働者との共生を目指した社会インフラ整備として

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          レッスン料の半分は自分がコミットする時間に払っている

           私はオンライン日本語教師をしながら、同時に生徒としてもオンラインで語学を勉強しています。その時私が心がけていることは、最低でもレッスン時間の倍の時間を自主学習にあてることです。前回のレッスンノートや講師のフィードバックを読み返したり、テキストを予習したり、作文を書いて講師に送ったりします。そして、そのような自主学習の時間を得るためにレッスン料を払っていると考えるようにしています。物価高の折、安くはないレッスン料を払って学んでいるのですから、成果には固執します。そのおかげでレ

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          中級文法の教え方~初級とどう違う?

           日本語教師として教えていらっしゃる方の中にも、初級レベルの人には教えられるが、中級以上の人の教え方はよくわからないという方がいらっしゃいます。初級と中級の教え方の違いはいろいろとあると思いますが、私が一番大きい違いだと思うのは、中級以上の人は既に日本語の知識を持っているということです。たとえば、「大人-子ども」という語を初めて習う学習者なら、彼らが母語で持っている[adult-child]という概念を日本語の「大人―子ども」に結び付ければよいのですが、中級で「成人」や「幼児

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          「プチっと弾ける新食感」という不思議な名詞修飾

           「プチっと弾ける新食感」って英語で言うと何ですか?  日本語の食レポは「プチっと弾ける食感」とか「とろける口あたり」とか、表現が豊かだなと思う一方で、食感が弾けたり、口あたりがとろけたりするわけではないのになぜこんな表現ができるのかと不思議に思うことはありませんか。英語に訳そうとすると、“new texture that pops(ポンと破裂するような新しいテクスチャー)”とか、 “food that melts in your mouth(あなたの口の中でとろける食材)”

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          日本語を教える上で専門知識がなぜ必要なのか?

           日本語学校などの教育機関で日本語教師として働くためには、日本語教育能力検定試験に合格していることや、大学などで日本語教育を専門的に学んでいるなどの資格が求められます。  日本語教師になるために、なぜ専門知識が必要なのでしょうか。実際に外国人に日本語を教えるときに使うことがあるのでしょうか。  私は日本語の文法を研究しているので、文法知識について述べますが、専門的な文法知識は日本語を教える際に必ず必要だと思っています。それは、学習者が同じ間違いを繰り返さないようにするためです

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