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シャショクのひと

私たちのお店のある場所は、印刷業が盛んなところでもあります。
以前ほどではないものの、今でも大手の印刷会社があります。
また、そういった土地柄、出版にかかわるさまざまなお仕事の方もお客さまでいらっしゃいます。

昔は、小説なども、作家は原稿用紙に書き、それを活版印刷で本にするのですが、手書きの原稿を活版印刷にするために活字を取って並べる仕事を“写植”と呼び、人の手の仕事でした。

印刷業界のお客さまで大手印刷会社に出入りされていた方が、かつて自分が見せてもらった文豪の話をしてくださったことがあります。

三島由紀夫さんの原稿は原稿用紙にペン習字のお手本になるくらいに丁寧にきれいに書かれていて、そのまま印刷して本にできるほどうつくしいものだったそうです。

一方で、川端康成さんの原稿は悪筆で、何が書いてあるか判読するのに困る字もあったそうです。ですが、その川端康成さんの原稿を一字一句間違えることなく写植する職人さんがその印刷会社には居たそうで、川端康成さんはその方をご自身の写植に指定されていたそうです。

今は昔の職業ですが、その道のプロという方が居た、というお話でした。

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