7月4日に生まれた話
7月4日
と聞いて、何の日、と思い浮かべるでしょうか?
世界中にいる、ある物語の愛好家にとっては、7月4日の午後は特別な呼び名をします。
ある男性が、ゆったりと川をゆくボートに3人の女の子と乗っているのですが、その3姉妹から「なにかお話して!」とおねだりされてしまいます。
長女に「さあ、はじめて」と命令されたり、次女に「おもしろいことたくさん言って」と無茶ぶりされたり、ことあるごとに三女に口を挟まれたりしながらも、なかなか楽しそうに創作話をしてきかせる男性。
次女はその日の話を特に気に入り、自分のために物語を書き留めておいてくれるよう男性にせがんみます。男性はピクニックの翌日からその仕事に取り掛かり、さらに自分の手で挿絵や装丁まで仕上げたうえで、次女にこの本をプレゼントしました。
この男性の名前はイギリスの数学者チャールズ・ラトウィッジ・ドドソン。
ペンネームのルイス・キャロルの方を知っている方が多いでしょうか?
せがんだ次女の名前はアリス。
そのアリスを主人公にした作り話はのちに、「不思議の国のアリス」として世の中に出版されました。
キャロルが現実のアリスたち3姉妹にこの話をしたのは、1862年7月4日の午後、舟遊びをしながらのこと。この日のことはよほど心に残ったのでしょう。1865年に出版された『不思議の国のアリス』の序詩は次のように始まります。
All in the golden afternoon
Full leisurely we glide;
For both our oars, with little skill,
By little arms are plied,
While little hands make vain pretence
Our wanderings to guide
ものすべて 金の光の昼下がり
我ら舟こぐ ゆたゆたと
二人の漕ぎ手は つたなくて
か弱い腕で オールこぐ
小さな両手で でたらめに
我らの遊びを 案内する
この1862年7月4日の午後のことをキャロル・ファンは「The Golden Afternoon」と言います。その日はまさにアリスの物語の誕生であるのです。
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