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原作者を“泣かせた”舞台

「この小説を舞台にしたい」
と、とあるミュージカル劇団が、小説家の方にお願いをしたところ、
「好きにしたらいいよ」
みたいな感じで言われたそうです。

その小説家の方は、今までも映画化など、いろんな作品が実写化されるたびに、
「あれは別物だ」
という意識が積み重なっていたので、この時も
「はいはい。どうぞ、どうぞ。」
という感じだったのだそうです。

そして、そのミュージカル劇団の初演の時、その小説家の方も奥さまとともに招待で観に行かれたそうです。

そして舞台が始まり、一幕と二幕の幕間に、ふと奥さまが小説家の方を見ると、号泣されていたそうです。
その小説の女性主人公が舞台に出てきたときに
「彼女が居る・・・」
ともつぶやかれたそうです。

あまりの号泣っぷりに、奥さまが自分の手持ちのハンカチを差し上げたほどだったそうです。

そして、舞台が終わり、小説家の方と主人公を演じた役者さんとがお会いになったとき、すごく感動されていたそうです。
その証拠に、男性の主人公を演じた俳優さんを「キッ」と睨みつけたくらい。
「お前はなんてひどい奴だ」
と言わんばかりの目線に、
「あなたが書いた小説なんですけど・・・」
と、その俳優さんは心中複雑だったそうです。

その小説家さんは、自身の最期の病床でも、そのミュージカル舞台のサウンドトラックを聴くほどに、すごく気に入っていらっしゃったそうです。

そんな、原作者が絶賛する舞台を他にも創り続けているミュージカル劇団が、確かに存在します。

だから。
一概に、原作者を納得させるような実写化・映画化が難しい、とは言えないことを、知っている私はしあわせなんだなぁ、と思います。

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