一般社会には権利商売でないお仕事のほうがたくさんあります。そういうのを知るのも社会性。

この投稿に対する一部の方々の反応がちょっと酷いかなあと思って記事を書きます。曰く、「“本当の絵描き“からすると大爆笑案件」「Aiイラストに著作権ないから普通に使われても仕方ない」「AI絵に著作権は無いんだよ残念ながら」「AI出力で自分で描いてないのに イラスト依頼を有償でうけててイラストをパクられるという発言しているの本当に意味わからん」

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あのね、作業が生じたらお金払うのは社会のルール、当たり前だからね? 納品まで済ませてるんならなおさらだ。そこに著作権は関係ない。例えば、ほとんどの工場労働者は(ええと、“本当の芸術家“の仕事とは違って?)作ったものに対して権利を持たないが、だから金払わなくてもいいということになるかい? ならないよね、この社会においては。お絵描き以外の社会一般の仕事についても知識と社会経験と想像力が普通程度にある大人なら分かるよね?

漫画やアニメやゲームに関わるスタッフにだって、商品・成果物について権利を持たないであろう分野担当の人はたくさんいるわけです。運用サポートデバッグ事務、そういう人はロハで働けとでも?

発注者はAI作業が自分で出来ないから頼んだのでしょう。AIのオペレーションにも知識と経験が必要で一定の手間と時間がかかるからね。自分で車が直せないから整備工に頼むのと同じ。そうして発生した作業にはお金を払うのが社会一般の常識です。

作業者が成果物に権利を持つかどうかと発注元の報酬を払う責任とは別問題です。

それこそエンジニア的にはオープンソースの話ですな。利用権フリーで出してても、それでお金儲けてる人はたくさんいます。実作業者として誰かの発注で他の人がやらない作業をこなしたらお金はもらえて当然なのです。納品されて金が払われなかったら発注者が罪に問われるか賠償させられるか少なくとも代金は払わされるべき。

で、元のポストをもう一度読んで欲しいのですが、「イラスト依頼受けていたのですが」。新規にその発注に対応するための作業が発生しているのだから、当然お金は払うべき。踏み倒していいどんな理由があるというのか

オペレーターがタダで働くのが当たり前だと思ってはいけませんよ。努力を積み重ねた手でなした成果物の権利で食べているという認識とは裏腹に、企業がクリエイターに仕事を発注する場合、その報酬は結構な割合で、作業上の確実性と柔軟性に期待されて払われてますからね。

作業的なもの全部無視して好きに描いた絵を納品したらそれで終わりみたいなのは、まあ普通はない、「異常」な仕事です。芸術家先生ならそれでもいいのかもしれませんが、それを基準で社会一般の労働や事業を考えてはいけませんね。

工賃とか拘束時間とか工数というような概念を持ちましょう。個人事業主の方も多いと思いますが、「本来は」個人事業主ってそういうところまで自分で管理しないと行けないんですよ。

これは芸術家と職人職工の違いという話でもあって。

柳沢教授で、大学の新学舎を建てに来てる大工さんたちと大学生の交流のエピソードがあったんですが、彼らは建物に対して権利を持たないので、建て終わったらそれで「終わり」。建物との縁は切れ、次へ行くことになるんですね。大学生とかはそこに寂しさを感じるわけですが、大工さんは、そういうもんだ、でも建てたのは俺達だ、誇りを持ってる、と。

オタクならこういう漫画から色々学んで欲しいところではあります。

自動車整備工も、直した車になんの権利も持たないけど、直す時には愛情込めて直してるんじゃないのかな。たいていは好きで始めた仕事だろうし。そして、工賃はちゃんと払おうね。結果的に部品一個の交換で済んだからって値切ったりするもんじゃない(そういう漫画もありましたな)。

僕はクリエイティブをオペレーションするという大目標を立てて創作活動してる人なわけですが、オペレーターであることに誇りを持ってるし、オペレーターをバカにする考え方は嫌いですね。


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