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<<創作大賞 恋愛小説部門>>連載小説「憂鬱」-5 ネットワークエンジニアに女性が少ないことは幸運で女子トイレで一人

美里はIT企業の女社長として、オフィス内での彼女の雰囲気は常に厳しかった。ネットワークエンジニアの若い男性たちが彼女の目の前でミスをすると、彼らをしばしば叱責した。

「森本くん、前にも私が説明したわよね。ここのところの設計は、もっと慎重にやらないと。後からネットワークセキュリティーに問題がでるかもしれないのよ。」

彼女は仕事に厳格なフリをしながらも、身体のどこかで、バレエのレッスン中であるユリアのことを思い描いていた。サーバールームの冷たい風に吹かれながらも、ユリアが腰にあててきた温かい細い手を思い出していた。

別の日には、社長室でZOOMの会議に出ている傍らで、美里は突然ユリアのことを思い出した。

彼女は突発的にネットワークの仕事の世界から離れ、バレエの記憶が心を満たした。目を閉じると、彼女は再びバレエのスタジオにいるような錯覚に陥った。

しかし、ZOOMでミーティング中だったラリーが、突然ラップトップの向こうで咳き込んだとたん我に返った。

「ラリー悪いんだけど、少しだけ時間をもらえるかな?この続きは、休憩をはさんで5分後にまた同じZOOMでいいかしら。」

彼女はオフィスの一角にあるトイレに駆け込み、そこで数分間、静かに立ち尽くした。思いがけない感情の波に襲われ、彼女は自分の中へ生温かく広がる、ユリアとの甘美な世界への葛藤に抗うのだった。

下着を下ろすと、ベージュの細い部分はべっとりと美里の液体で濡れていた。思わず美里は、濡れてしまっている自分の部分へ左手の人差し指と中指、そして薬指まで入れていた。

くずれおちないようにトイレの壁にもたれかかりながら、喘ぎ声を押し殺して、何度も指の出し入れを繰り返した。

ネットワークエンジニアに女性が少ないことは幸運であった。そのせいか、オフィスビルとはいえ、あまり女子トイレには人が入ってこない。

ユリアの指が腰からアソコへと入ってくる空想を働かせると、美里はもっともっと、さらに奥深くへその指を沈めていったのだった。

絶頂に達すると、ガクガクと美里の身体が痙攣し、トイレのドアが軋んで音を立てた。女子トイレの外までドアの軋む音が漏れるのではないかと、美里は心配しながらも、その動きを止めることができなかった。

呼吸が荒くなり、快楽に溺れながら、狭くて暗いトイレの中にも、閃光が走り、太陽の光が見えた気がした。

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