放射性廃棄物の問題

【設問】放射性廃棄物(核ゴミ)の問題を取り上げ,著書,公的刊行物等で調べ,①現状の問題点,②取り組み及び解決策,③自分の意見などの3点について,2000字以上で考察しなさい.


1.はじめに

(一)放射性廃棄物は「高レベル放射性廃棄物」と「低レベル放射性廃棄物」に大別される。高レベル放射性廃棄物は、使用済燃料の再処理により生じる放射能レベルの高い廃液をガラス固化体にしたものである。再処理せずに使用済燃料を直接処分する国の場合、使用済燃料そのものが高レベル放射性廃棄物となる。高レベル放射性廃棄物の放射能レベルが低下するには長い時間がかかり、その間、人が近づかないようにする必要がある。そこで、高レベル放射性廃棄物を地下深くの安定した岩盤に閉じ込め、人間の生活環境から隔離して処分するという、いわゆる地層処分を実施する必要性が取りざたされている。
(二) 問題は、この地層処分を申し出る地方自治体、地域住民が極端に少なく、国民や地域住民の理解が得られていないということである。2011年の福島第一原子力発電所での事故から放射能汚染に対する被害が現実のものとされる状況において、あえて自分が住む地域に放射性廃棄物の地層処分を申し出る自治体、地域住民が少ないというのも当然である。そのため、本格的な地層処分を開始することができず、各原子力発電所で地上保管が継続している状況である。

2.取り組み及び解決策

(1)日本の取り組みについて
 放射性廃棄物を排出する電力事業者が場所の選定を含めて最終処理をするべきだということで、10社の電力会社が国の認可を受けて最終処分の事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)という組織を2000年につくった。同機構は2002年から、全国の市町村を対象に、文献調査を行う地区の公募を行った。2007年に高知県安芸郡東洋町が応募を行った。しかし、応募を巡って賛成派と反対派で町内を二分する議論となり、計画は白紙となった。2015年、政府は最終処分に関する基本方針を改定し、従来の公募方式から調査対象となりうる自治体に国が申し入れる方式に転換した。そして2017年、資源エネルギー庁が処分地の適性を4区分で示す「科学的特性マップ」を公表した。2020年、北海道の寿都町と神恵内村が応募の意思を表明、それを受けて文献調査が開始されている。
文献調査とは、最終処分事業について関心を示す市町村に対して、市町村の住民が地層処分についての議論を進めるための資料として役立てられるよう、全国規模の文献やデータに加えて、より地域に即した地域固有の文献やデータが調査・分析された上で、提供されるものをいい、処理場選定のための資料とされる。

(2)海外での取り組みについて
 現状、放射性廃棄物の地層処分を開始できている国はなく、まだ準備段階にすぎない。世界で唯一、処分場の建設を開始しているフィンランドや、処分場を選定し安全審査中のスウェーデンにおいても、地元の意見を聴きながら、段階的に調査を進めている。各国とも、処分地を決定するまでの数十年間、処分事業についての理解をみんなで深めていく努力を続けながら、段階的な調査を進めているのが現状である。

(3)解決策
 国民の理解を慎重に得ながら、文献調査やボーリング調査により安全性を確保できる地盤や岩盤に放射性廃棄物を安全性が担保できるまで保管すること。

3.おわりに
 現時点で生じている放射性廃棄物については、人類に影響を及ぼすおそれがある以上、なんらかの処分の方法を考えなければならない。宇宙や海への投棄が現実的でない以上、地下深くいわゆる地層処分を行うことが最も現実的ではある。しかし、日本の場合、環太平洋造山帯に位置し、多くのプレートが重なるところで地震や火山活動が多い問題を抱えている。さらに無数の断層が縦横無尽に存在して、そもそも現存の原子力発電所の立地や再稼働さえ争われている現状で、このうえに、放射性廃棄物を地層処分できるのかどうか、著しい疑問が生じる。この点をふまえ、政府は文献調査を実施遂行しようと考えているのだろうが、国民の不信を払しょくできているようには見えず、理解は不十分のままだ。地層処分を行うためには、放射性廃棄物の処理が現在喫緊の課題であること、地層処分が現行では最も現実的で安全性が高いものであることを国民に対して理解を深める努力が必要なのではないだろうか。そのためには、有利な情報だけではなく、不利な情報も含めて透明性のある情報開示とともに、国民の信頼を確保することが必要であると考える。フィンランドやスウェーデンなど地層処分に向けて着手できている国は、国民の政府に対する信頼が強く、最終処理施設に参画する人間も中立な専門家が多いと聞く。原子力発電を運営する側の人間が最終処理施設へ出向するなどの状況では、国民の不信を招くのではないだろうか。大学での研究者など純粋な専門家が放射性廃棄物の最終処理に向けて参画できるような環境の整備が必要である。
 一方で、このまま放射性廃棄物が増えつづけようなエネルギー政策を採るべきではない。持続可能な再生エネルギーである太陽光や風力、地熱などを利用したエネルギー開発を早急に実施し、これ以上処理しきれない放射性廃棄物を生産すべきではない。(2100文字)

参考文献
(1)資源エネルギー庁 「放射性廃棄物について」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/  2024年1月17日アクセス
北欧の「最終処分」の取り組みから日本が学ぶべきもの②
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/hokuou_saishushobun_02.html 2024年1月17日アクセス
(2)原子力発電環境整備機構ホームページ
https://www.numo.or.jp/ 2024年1月17日アクセス

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