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【詩】虹のかがやき


あの頃はできていた感謝とか
「ごめんなさい」って言葉とか


あの日 憧れたはずの大人なのに
口にできなくなっていた


あぁ あの日の自分なら
いまのボクを指差して

一体 なんて言うんだろう

キラキラ輝く眼差しに
ボクは返事ができるかな


濁った瞳に映るのは
灰の空から降る雨と
暗く淀んだ深い沼


沈んで 沈んで 沈んでく
抜け出そうにも 抜け出せない
もがいて もがいて もがくほど
深い底へと沈んでく


あぁ ボクはただの落第者
あの日に目指した大人じゃない

ごめんなさい、あの日のボク

こういうときだけ 謝れちゃう

そんな自分を嫌悪して
首まで沼に沈んでいく


最後に空でも見上げよう


そうしてふっと目を開けた


そこに 


『あの日のボク』が立っていた


キラキラ輝く眼差しを
真っすぐ ボクに向けていた


白くて小さな手を伸ばす

淀んだ沼に手をつけて
『大きなボク』を引っ張った


「まだやれる?」


キラキラ輝く眼差しが
真っすぐボクに問いかける


煌めく瞳に映るボク
目指した大人じゃないけれど 
全てが終わったわけじゃない

諦めるには まだ早い

精いっぱいの強がりで
ボクは笑って こう言った

「やってやる」

重い両足 持ちあげて
ボクは 沼から抜け出した

空に広がる青い空
だけど変わった雨が降る

雨は泥を拭い去り
淀んだ心を洗ってく

そして 変わった雨が止み
前を向こうと目を開ける

あの日のボクは いないけど
あの日のボクに 胸を張ろう


空に輝く虹を見て
「やってやった」と胸を張ろう

ふっと吹いた強い風
ボクの背中を押し出した




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見出し画像には、『ひらめの音』様の写真をお借りしました!

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