未来2016年7月

明け方の東京にある影はどのビルのものかを分からずにいる
人混みを少し離れてブルドッグ真昼の薄い雲のほう見る
傾きの急な石段おりる時二の腕うごく参道の春
境内のしきりの奥に残されてみかんいくつかかすかに揺れる
春風の入る訪問介護所の壁に脚立のかけられている
銭湯はカフェへと作り変えられてタイルの一つ一つに陽差す
空の色うっすら映すガラス張りの花屋にモネのポスター揺れる
夕暮れの門を閉ざした聖域に猫が時々おっこちてゆく
ラーメンを食べそこなって路地裏のか細い明かりをなんとなく行く

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