未来2017年3月

まひるまの紅葉の道を踏んできてかすかに濡れている靴の底
歩くたびひそやかに鳴る各々がひっさげているビニール袋
保津峡をだらだら歩く白滝の気配に濡れる道をたどって
切手を貼るためにしめった指先はひだまりのなか気づけば乾く
ぼんやりと退社理由の空白にでかでかと書く卒業の文字
検尿の提出チェック欄の隅に引退と書く夜勤のさなか
新人指導したくないなあ最後までのんびりシフトし続けたいな
洗剤をぶちまけて床磨きゆく雪の予報の京都のまちで
水を張ったシンクの隅に数粒の気泡が浮かぶ冬の真夜中
一晩を越してしまった白米は炊飯器のなかかすかに乾く

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