未来2017年5月

行き違う人の靴底濡れている朝の市場のさざめきにいて
ポストイットを机の上に散らばらせ珈琲が届くまでを待ちおり
彫刻の蔦植物の表面に背骨のようなざらつきがある
スプーンにのせられている角砂糖のふちがかすかに欠けていること
読み終えてハードカバーの本の帯のゆるいたわみをなぞる指先
ポストイットの最後の方の数枚をうまく剥がせず折り曲げている
男子トイレの個室の壁から削れゆく座る姿勢の青い人型
Take freeの聖書を配る男女みなトーテムポールのように立ちおり
夕暮れの大樹にもたれかかる人のたちまち消えてゆく輪郭の
踏み込めば畦をかすかに削りとる鱗の形の車輪の窪み

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