全曲チェックのすすめ
こんにちは、NaOHです。
普段はニコニコ動画でボカロ曲の新着曲チェックをしております。(平日はなかなか時間が取りづらいので、主に週末に、1週間分をまとめてチェックするようにしています)
今回はボカロ曲の「全曲チェック」について書きたいと思います。
■はじめに
「ボカロ曲をもっとたくさん知りたい!聴きたい!」
その衝動の行き着く果てが「ボカロ曲を全曲聴く」ことではないでしょうか。
タイトルを「全曲チェックのすすめ」しておりますが、私はそれをあらゆるボカロファンに勧めるつもりはありません。
ひとまずこの文章は、あくまでも音楽優先のボカロファンがハマる、いわゆる【沼】のひとつの姿として捉えてください。そして、(私なりの)やり方を書きますので、やってみようと思われた方がやってみれば、それで良いと思っております。
ところで、なぜそんな【沼】について書くかというと、それはボカロファンの層が実に多様化してきたことにあります。もっとも、それは今に始まったことではありません。初期より、まず楽曲にミュージックビデオが付けられたり、「歌ってみた」や「演奏してみた」といった派生動画、はたまた「MMD(MikuMikuDance)」が開発されたりと、二次創作の広がりとともにボカロ曲はすでに幅広くファンを獲得していますし、また、より一般的な認知度の拡大として、リズムアクションゲーム『初音ミク –Project DIVA-』シリーズや、最近ではスマートフォンのリズムゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』からファンになった方々もいらっしゃるでしょう。ですので、既存のリスナーのみならず、多くのファンにボーカロイド文化の側面、というよりはより奥深い部分を知ってもらえればと思いました。
今回、ボカロ曲の「全て」を題材とした以上、その歴史にも一部触れる必要はあるかと思い、なるべく詳細を書き、資料のひとつにもなるように心がけたつもりです。そのため、ファンにとって周知の事実であろうことにも出来るだけ説明を入れておりますので、少しばかりくどい表現が続くかもしれませんがご容赦ください。
それでは本章に移ります。
■全曲チェックとは何か?
「全曲チェック」は文字通り、ボカロ曲を「全曲」チェックすることです。こう書いた時点ですでに、することのハードルがとても上がったように感じますね。
ただ、詳しくは後述しますが、この「全曲」というのを厳密に考えると、実行するのは不可能です。ですので、ここでは常識の範囲内での「全曲チェック」をするために、あらかじめ幾つかの定義をしておきたいと思います。
まず1つ目は、観測の範囲、すなわち「どこからどこまでチェックするか」という定義をします。
ボカロ曲は現在、ニコニコ動画をはじめとする様々なサイトに投稿されています。代表的なところでは動画投稿サイトの『Youtube』、『ニコニコ動画』、『bilibili(哔哩哔哩)動画』、また、音楽専門の投稿サイトとして『SoundCloud』あたりが大手といえるでしょう。実際はもっと多くのサイトにボカロ曲は存在しており、例をあげれば枚挙にいとまがありません。
また、ボカロブームの発端「VOCALOID2 初音ミク」の販売元であるクリプトン・フューチャー・メディア(株)は、『piapro(ピアプロ)』という作品投稿サイトを運営しております。ここでは、音楽のみならず歌詞・イラストといった作品をクリエイターが投稿して、共同して動画を作成するなどの創作活動が行われております。ですので、ここにも当然多くの音楽作品が存在しています。
さらに、これらネット上にアップされた作品に加えて、同人音楽CDの収録曲もありますので、冒頭に書いた通り、全てのボカロ曲を聴くことはおろか、それらを見つけ出すことすら無理難題でしょう。
ではどこを観測範囲とするかというと、ひとまずは『ニコニコ動画』にアップロードされた作品のみに限りましょう。その理由の一つは『ニコニコ動画』がボカロブームの発端、つまり「初音ミク」ブームの原点であり、初期から今に続くまで、新たなクリエイターがまず投稿するサイトと言えば、ニコニコ動画といった状況にあるからです。
動画サイトの最大手といえば言わずもがな『Youtube』であり、これを超える視聴者層を有するサイトは他に存在しないでしょう。もちろん、ボカロ曲もたくさんYoutubeにアップロードされています。しかしここで理由の二つ目として、動画の検索性というものが大きく影響してきます。
例えばニコニコ動画では、アップロード者と視聴者の双方とも、検索性を上げるためのタグを(決められた個数まで)付与することができ、基本はそれを元に動画検索していくことになります。Youtubeでもアップロード者がハッシュタグを付けることはできますが、ボカロ曲に共通のタグというものが無い状況ですので、タグでのボカロ曲検索は全く有効ではありません。
そうした作業性の観点からも、『ニコニコ動画』で全曲チェックを推奨するのは必然となります。
ちなみに『Youtube』『bilibili動画』『SoundCloud』などは、主に国内のサービスである『ニコニコ動画』よりも広い視聴者層を持っていますので、海外のクリエイターの作品など、ワールドワイドに作品を視聴したいと思われるのであれば、これらのサイトを探すことは大いに意味があります。ボカロ文化が海外にも広がっていることを実感できます。
次は「どういった作品をチェックするのか」を定義します。
ところで最初から「ボカロ曲」と書いておりますが、ここで改めてご説明いたしますと、「ボカロ曲」とは『VOCALOID(ボーカロイド)』という音声(歌声)合成技術によるボーカルを使用した楽曲のことを指します。
ちなみに、音声合成技術は現在、『VOCALOID』以外にも『UTAU』『CeVIO』といった技術的、そして提供する組織・団体が異なるものがありますが、その詳細はここでは割愛します。
つまるところ「VOCALOID」という名称は、この技術開発元であるヤマハの登録商標であり、音声合成技術の総称ではありません。ですので、本来それ以外の音声合成システムに使うのはルールに反するところではあります。しかしながら一般的にリスナーの間では、上述した別の音声合成ソフトによる作品も「ボカロ曲」として扱われております。
(なお、初音ミクに関しても『VOCALOID』ではない「初音ミクNT(ニュータイプ)」が発売されたため、関係性は以前よりも複雑化しています)
話を戻しますが、「どういった作品をチェックするのか」について、基本的にはボカロP(クリエイター)のオリジナル作品、またはリミックス作品といった、作者が作曲もしくは編曲した作品をチェックしていきます。私の場合はそこまでを全曲チェックの範囲としています。
ちなみに、人によってはボカロカバー作品(オリジナル作品のボーカルのみ、使うキャラクターを差し替えた動画)も含めてチェックしているかもしれません。
最後に「どうチェックするか」を定義しますが、これも人によってやり方は分かれると思います。
まずニコニコ動画には、カテゴリー分けとして「VOCALOID」タグがありますから、
基本的にはそれで殆どの音楽作品を網羅できると考えていいと思います。
先ほどの、音声合成技術にも種類があるという話に繋がりますが、『VOCALOID』を使った作品だけを狭義の「ボカロ曲」であると捉えれば、そこまでで充分と言えますし、逆に広義でのボカロ曲をより正確に拾い上げるならば、タグ検索で「"VOCALOID" OR "UTAU" OR "CeVIO" OR "SynthesizerV" OR "NEUTRINO"」といったように指定すればよいでしょう。
ただし、「VOCALOID」だけでの検索にしても、他のものも加えた検索にしても、派生動画(「歌ってみた」系の動画や、カラオケ用のVocal Off音源、実況動画など様々)や単なる検索妨害といった動画も拾ってしまいます。
「VOCALOIDオリジナル曲」「UTAUオリジナル曲」といった、オリジナル作品に限定するためのタグもありますが、この系統のタグが付いていない動画も散見されます。
それ故に融通の利く検索方法というのも、実は無いですので、「全曲チェック」が多少曖昧になるのは、どうしようもないことと割り切る必要があります。
少し曖昧にした部分はありますが、以上の定義によって「全曲チェック」という活動のベースが整いました。
しかしながら、これでも多くの読者が「本当に全曲チェックができるのか」と思われると思います。仮にも「全曲」と書きましたので。
■全曲チェックは可能か?
さて、厳密な「すべてのボカロ曲」については前章冒頭のとおり、様々なサイト・CDを網羅することは不可能です。そこで、ニコニコ動画に限定したのですが、検索を駆使したとしても「全曲」を視聴できる確証が無いことも先ほど記したとおりです。もう一度書きますが、ある程度の検索から見つけられる範囲を「全曲」だと割り切りましょう。
また、全曲を聴くことについても、1曲全て聴くかどうかという問題があります。むしろ、試聴するスタイルを決める部分でさえあります。
まず、1曲の再生時間について考えましょう。今、アップロードされているボカロオリジナル曲は、1曲約3分~4分半の作品が多いです。そこで、1曲をざっくり4分としましょう。
次に作品数ですが、平日であっても、まず一日50曲は超えると考えていいです。
これらを単純に掛け算すると、全てをフル視聴するのに約3時間半かかるという計算になります。もっともこれは最少レベルでの試算にはなりますが、どうでしょう。これなら出来ると思われる方は是非、全曲チェックをしてみてください。
ただ、生活上、3時間も音楽を聴くだけというのは難しいという方も当然おられるはずです。
前置きの通り、この方法を強いるつもりはありません。
つまるところ、全曲チェックをしたい方は、ご都合に合わせてやり方を考えていただければいいです。まずワンコーラスだけ必ず聴くのでも、もっと時間を絞ってもいいです。
ちなみに、先日『ボカコレ』というイベントが行われました。これは12月11日~13日の3日間で行われたニコニコ動画内でのオンラインイベントですが、この期間中の投稿作品でランキングイベントが行われたため、膨大な作品数の投稿がありました。
ランキングの種類に応じたタグを付けることで参加できるイベントでしたが、しろばなさんのツイートをお借りすると、その作品数はイベント終了時点の集計で、「ボカコレ2020冬」タグ:974件、「ボカコレ2020冬ルーキー」タグ:595件、「ボカコレ2020冬REMIX」タグ:269件という状況でした。
実際にはタグの重複もありますので大雑把な試算にはなりますが、3日間で実に1,000作以上が投稿されたことになります。こうなると、約67時間を要することになり、とてもリアルタイムで視聴できるものではありませんね。
また、VOCALOID初音ミクに代表される各種キャラクターは、その発売日を誕生日とみなして、作品の投稿が増えます。特に顕著なのはやはり初音ミクで、誕生日(発売日)の8月31日は毎年、1日で300を超える作品が投稿されます。2017年は初音ミクの生誕10周年ということもあって、500作を超える楽曲が投稿されました。
話を戻しますが、前述のとおり全曲チェックはフル視聴であっても可能です。(さすがに今から過去の作品を全て聴くというのは大変だと思いますが)
投稿数が激増する日があっても、べつに時間制限がある訳でもないので、好きな作品をじっくりと聴き込むこともできます。全曲チェックをしたい方は、自分なりのやり方でやってください。
■なぜ全曲チェックをするのか?
ここまでの話は、いわば方法論についてでしたが、なぜ全曲チェックをするのかを書きたいと思います。
まず、私が新着曲チェックを始めた目的ははじめに書いた通り、「ボカロ曲をもっとたくさん知りたい!聴きたい!」という理由に他なりません。
私がニコニコ動画でボカロ曲を聴き始めた2008年、当時は一週間のボカロ曲の再生数・コメント数・マイリスト数から算出したポイントに基づいて順位付けするランキング動画「週刊VOCALOIDランキング」(通称:ボカラン)の存在もあり、ボカロブームのトレンドをランキングで追っていました。(当時のボカランは、ポイント集計期間の始めの時間に合わせて動画投稿が集中するほど、ボカロ文化の中でも注目度の高い動画でした)
当初はこのボカランの上位作品を中心に聴いていましたが、次第にもっと多くの作品を聴きたいと思って、新着曲チェックを始めました。
人気のボカロPの新作投稿や、新たなボカロPの登場、毎週目まぐるしく状況が変わっていく、そんなボカロ界隈を追いかけるのはとても楽しかったです。なにしろ、毎日新曲を聴けるので、一切飽きる感じはしませんでした。
もっと伸びてほしいと思う作品にもたくさん出会いましたので、マイリストの公開も始めました。新着作品から私が気に入ったものを紹介する目的でした。(今ではほとんど公開マイリスト機能は使われていないかもしれませんが、公開マイリストを辿って良作を探す人も昔はおり、楽曲の特徴で分類するなど、特色あるマイリストを公開してされている方もおりました)
では、次はなぜ全曲チェックを勧めるのかですが、またニコニコ動画のボカロ界隈が盛り上がってほしいと思ったからです。
全体的にボカロ曲の再生数は初期より少なくなりました。もっともそれは、単純にボカロ曲から視聴者が離れているというわけでもなく、ニコニコ動画が以前より「オワコン」と囁かれるように、Youtubeのサービスの品質差が非常に大きくなってしまったことが一因にあるかと思います。
今や多くのボカロPがYoutubeにもチャンネルを作っていますし、正直、ボカロ曲をニコニコ動画で見る必要は無くなりました。ニコニコ動画も回線増強や、非会員でも動画視聴ができるようになるなどのサービス改善は行われてきましたが、「ニコ動離れ」に追いつけなかったのが現状です。
ところで、話が少しそれてしまいますが、『ボカコレ』というイベントが行われたことを前章に書きました。これが今回、私がこの文章を書くきっかけでもあります。
正直、私はこの期間中に1,000曲を超える作品が投稿されるとは思っていませんでしたし、この機会に初投稿する人が、予想以上に多くいたと感じています。
ランキングの行方なども、期間3日の結果としては近頃のボカロ界隈より全体的に再生数は増していましたし、初期のボカロ界隈を彷彿とさせる勢いを感じました。
その印象を深く覚えたのは「ボカコレルーキーランキング」が行われたためかと思います。これは、初投稿作から2年以内の投稿者が参加できるランキングでありましたが、初投稿でも視聴されやすいような雰囲気が生まれていたのは良かったと思います。実際、平常時では初投稿作品は余程のクオリティの高さと作者自身の宣伝が無いと、すぐに埋もれてしまう実態があります。今も昔もそれはありますが、近年は顕著です。
また、「ボカコレREMIXランキング」も盛況でした。これはボカロPから募ったStemデータ(ボカロのボーカル音源素材データ)を公式に配布し、リミックス作品で参加するランキングでしたが、こちらにも新規参入のクリエイターがちらほら見受けられました。この状況を、普段VOCALOIDを使わないクリエイターが投稿したから、と読んだ方のツイートを見かけましたが、幾つかの作品から辿った限りでは、その可能性は高いと思います。
以上2つは特に、ボカロ文化の地盤的な部分を盛り上げるイベントとして練り込まれた施策だと感じました。他にも、「歌ってみた」「踊ってみた」「演奏してみた」といった派生動画のランキングがあったり、オンライン配信ライブもあったりと、非常に濃い内容のイベントで、運営の意気込みを感じられました。
また、ボカコレによってボカロPもリスナーも、まだまだニコニコ動画にはいると思えましたし、ボカロファンが全体的に、こうしたお祭りを待っていたようにも見えました。
話を戻します。
ボカロPとリスナーが渾然一体となって盛り上げてきたボカロ文化ですが、今はある種の一体感のようなものは無くなってきたような気がします。例えば、動画に付くコメントも減ってきました。
今回の『ボカコレ』については、ニコニコ動画の運営がある意味、ボカロ界隈を後押ししたものと考えています。
ボカロ文化にとって、ニコニコ動画は発端の場所、いわば「聖地」のような所です。せっかくなので、また昔のような活気に戻ってほしいな、と。ヒット作が生まれて盛り上がる場であってほしいし、未来のヒットメーカーが次々と生まれる場であってほしいと願っております。
その喚起として、敢えて「全曲チェックの勧め」と題しました。
いったん知名度を上げたボカロPの新作は早く伸びますし、そうでなければ伸びにくい。
「人気のある作品以外にも、良い作品はたくさんある」と言いますが、聴かれる機会がまず必要です。数多の作品に埋没する前に作品が見られるタイミングというのは、投稿後の初動にかかっている所が非常に大きいです。後々になって爆発的に評価が上がる作品というのは、非常に速いサイクルを誇るボカロ文化の中では、今も昔も殆ど出てきておりません。
(ちなみに、ボカランのことを先述しましたが、ボカロ曲に関するランキング動画は他にも「日刊VOCALOIDランキング」というものもありました。毎日の投稿数が非常に多いから成り立つ、ボカロ文化のサイクルの速さを象徴する動画とも言えます)
ヘビーリスナーの反応がヒットを左右するとまでは言い切れませんが、それなりの方向性は生まれてきます。次々とヒット作が現れて盛り上がった、初期のような活況を再び作るには、初動のタイミングで、良いと思った作品を「推す」リスナーができるだけ多い方がいい。
まずはタイトルやサムネイル画像、また、好きなボカロが使われているなど理由は何でも構いませんので、新着動画に気になった作品があれば、是非見てみてほしいと思っております。
■終わりに
新着曲のチェックをしておられるリスナーはTwitterのハッシュタグ「#vocanew」などを使って作品紹介されていますので、チェックしてみてください。厳選したピックアップと、コメントを付けていらっしゃる方もおられますので、良い作品に出会えると思います。
また、アレクさん(@voc_alek)によるvocanewまとめや、茜涼夏さん(@akanesuzuka39)がvocanewをリツイートする、広報的なアカウント(@vocanew1)を公開していらっしゃいます。
いつもありがとうございます。
ついでに、私のマイリストも貼っておきます。
以上
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