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本郷

本郷通りが好きだ。

なんというか、程よい静けさ。
すっきりとした緊張感があって、毅然とした感じ。
この通りに靖国通り白山通りを加えた3辺に囲まれた地帯がたまらなく好きだ。

ピンクの線に囲まれた地域

本郷弥生の交差点から本郷三丁目を越えて、
消防署前通りとの交差点からそのまま坂を下ると
順天堂病院のところに出る。
万世橋を渡って御茶ノ水駅の交差点を経て、お茶ノ水楽器店街、明大通りを一気に下る。駿河台下の交差点から靖国通りを少し右に行くと神保町に着く。
神保町交差点で白山通りの方向に右を向くを水道橋が遥か彼方に見える。

これが散歩道。

万世橋から順天堂をのぞむ

「本郷台」と呼ばれるだけあって本郷通りは高台に位置し、両脇は谷。都営三田線と東京メトロ千代田線に挟まれている感じ。
(東43)と(茶51)、荒川土手・駒込駅南口ー御茶ノ水駅前・秋葉原駅前/東京駅丸の内北口の都バスと、駒込病院、日本医科、東大病院、順天堂病院、医科歯科のどこに向かうのか分からない救急車の往来でにぎわう通り。なのに、澄み渡っている。

東大前の駅から突如として現れる赤いレンガ塀。
この中が東京大学だ。
この塀は弥生キャンパスの農学部正門、本郷キャンパスの正門、赤門を越えて、本郷三丁目駅の交差点で途切れる。

レンガ塀

4車線ある広い道路、大きな交差点が複数ある。
特に好きな交差点は以下の4つ。

白山上の交差点(白山通り/白山-千駄木)
本郷弥生の交差点*(言問通り/春日-根津)
本郷三丁目の交差点(春日通り/春日-湯島)
順天堂前の交差点(外堀通り/水道橋-御茶ノ水)

本郷弥生の交差点はその付近に暮らしていたこともあって、とりわけ思い出深い。

本郷弥生の交差点。王子方面に向かう車は右折禁止。
*交番のお巡りさんによる「右折禁止!」の怒号が有名。
言問通り、根津方面をのぞむ
春日方面、直進すると白山通りと交差し三田線の春日駅へ

谷中・不忍方面から昇る太陽

本郷弥生の交差点を言問通り沿いに下ると根津駅に着く

まばゆい朝の陽光がやわらかく降り注ぐ本郷通りは非常に清らかで美しい。神秘的で、静かだ。

本郷弥生の交差点から御茶ノ水方面をのぞむ朝

歩いていると苦しみ、悲しみ、嫉妬、囚われ...
心の奥底の淀みのすべてが浄化され、平安が齎される。
東大生、職員、近隣の小学生と送迎の両親、サラリーマン、住民が行き交う様子を見ていると希望に満ち満ちた1日のはじまりを感じる。

余談だが、私は高校生の頃から赤門前にあるスターバックスに通っていた。通塾前の出勤前の朝のひとときのみならず課題に追われているときもここで過ごした。

朝からケーキ、の日もありました。

本郷郵便局の角を少し入ったところには創業125年、東大生御用達の食堂 もり川がある。
幾度となく足を運び、大抵日替わりの焼き魚か煮魚の定食を食べるが、店員さんも認める量の多さなのでライスはいつも半分、サービスの梅干しとトッピングの納豆を追加オーダーする。店員さんからの「いつも有難うございます」が嬉しい。

1人だとたまに相席になる。
とある日の日替わり。焼き魚多すぎでは?

薄暮の本郷通りもなんとも抒情的である。
高校生の頃は本郷三丁目駅前にある塾に通うために、御茶ノ水駅から順天堂の横、ゆるやかな上り坂、本郷通りから少し入った静かな小道を散歩していた。オレンジ色からうす紫色へのゆるやかなグラデーションの空を眺めていると穏やかな心持ちになれる。
現在でもこの穏やかな空を求めて、度々ここを訪れては散策する。

西陽が銀杏並木を照らし出す

赤く滲んだ太陽が東京ドームの方へと沈みゆくにつれ、空は深い藍色になる。
バイトのために本駒込方面へ自転車を走らせながら眺める空、その静かさの中に切なさと焦燥感があって、それもまた味わい深かった。

本郷郵便局横、食堂もり川の看板が見える


そうだ。
イチョウ並木に言及せずして本郷通りは語れない。

黄金色の葉が生い茂る様子は壮麗で見事だ。
強風の夜、街灯に照らされ輝く葉は流れるように上空を舞い、金色の絨毯となって地上に降りつもる。木枯らしが吹き上げると葉も同様にくるくると回転しながら巻き上がる。

インスタ映えスポットと化した東大構内

葉の擦れる音があまりにうるさいので思わず耳を塞ぎたくなるし、勢いよく吹雪くイチョウの葉で顔が切れそうだけど、立ち止まる。
そして、この時とこの場所と、自分とが結びついていることを感じる。

(銀杏の実が落ちてからはマスクが必須であり、歩道をランニング、または自転車で勢いよく通過することはおすすめできない。)

もう一つ、散歩途中で必ず足を止める場所がある。
万世橋聖橋だ。
通りも御茶ノ水方面、神田方面にかけてゆるやかに下り勾配がある。JR御茶ノ水駅を挟む万世橋聖橋から眺めるJR中央・総武線東京メトロ丸の内線が交差する様子、秋葉原から水道橋方面にかけて流れる神田川。心洗われる、極めて美しい。

聖橋から眺める地下鉄・丸の内線

万世橋を渡ると、お茶の水楽器店街に入る。
このエリアはシモクラ、クロサワetc.楽器店が多いが、何より明治大学日本大学のキャンパスがある学生街である。

明大通り、本郷通りからは少し逸れるがここもまた好きな通りである。
前方に皇居を感じつつ、淡路町方面に下るのも良し。医科歯科のM&Dタワーを目指して登るも良し。
通り沿いにはカリーライス専門店エチオピア、スープカレー屋 鴻、レストラン カロリー、カリー&ワヰン ビストロべっぴん舎など数々の古くからの名店が軒を連ねる。

エチオピア、ビーフ野菜カリー

2020年の秋、神田カレーマイスターを目指すべく神田カレー街のスタンプラリーに参加し、この辺りのカレー店をほぼ毎日巡り歩いたなあ。
この話はまた別の機会に。

長くなってきたので、もう締めることにします。
本郷通りに広がる四季折々の風景は自身の原風景といっても過言でない。
学生時代の辛い時、苦しい時、勇気が欲しい時、
希望に満ち溢れる時、常に見守り寄り添って、
力をくれた美しい空と美しい街。
豊かな記憶をありがとう。

雪の日の本郷通り

今月から私は「大人」になって、
以前より本郷からは離れることになる。

たまには少し立ち止まって、ここに帰ってきてもいいですか?
時間を忘れてこの美しい風景を眺めにいってもいいですか?

街の風景は刻一刻と変わりゆくけれど、
ここは今までも、これからも自身の拠り所。

次回はグルメについて綴ろうかな。

正門をくぐる。葉が落ちると安田講堂がよく見える。

(つづく)

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