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自分が与えた意味を、私たちは体験する。

先日、学生のときからの、仲のいい友人からメールがあった。

今、世の中で起こっていることに心を痛めているようだった。

忙しい暮らしの中にでも、自分にできることはないかと、模索していると。

彼女からのメールを読んで、私は思い出した。

1990年に始まった湾岸戦争の時のことを。

まだ1才にもならない長女をベビーカーに乗せて、私は、サンフランシスコでの大規模なデモに毎週、参加していた。
世界が、どうしてこんなことになってしまったのかが知りたくて、集会や勉強会にも顔を出していた。
「自分ができること」を、私も模索していた。

サンフランシスコの高層ビルの間を抜けていく、数百人のデモはニュースでも、たびたび取り上げられた。それぞれがプラカードを作り、シュプレヒコールがなり響いていた。

その人々の流れから外れて、女の人が立っていた。

そばを通りかかると、優しい微笑みを浮かべて、一輪の花を手渡してくれた。彼女は、そうやって、ひとりひとりに花を手渡しているようだった。

彼女がやっていたのは、反戦運動ではなく、平和運動だったのだ。

それは、一瞬で私を和ませた。
その光景は、心象風景となり、その後もずっと、私の内側で泉のように湧き出る、希望となり、そして道しるべとなった。

シルビア。
104歳になる、私の、15年来の友人。
彼女の家に行ったとき、ちょうどコレクションを片づけていたところなの、と見せてくれた。
コレクションとは、彼女のこれまでのデモに参加したときに 買ったり貰ったりした、バッジやステッカーの数々。100は超えていた。それぞれにスローガンが書かれていた。ベトナム戦争のときのものもあった。

彼女はそれを私に指し示しながら、こう言った。
「こんなにたくさんのデモに行ったけど、世の中にはまだ、デモに行かなければならない出来事があるわね。」

実際、彼女はこの間まで、この町で、歩行器を使いながらデモに加わっていた。

彼女の一貫性が、私に刺激を与える。
自分の信じたことを、自分と世の中とのかかわり方を、誰が何を言おうと、私たちは選ぶことができると。


どんなことが目の前に起こっても、自分がそれに与えた意味を、私たちは体験する。

引き裂かれた世界の様相の中で、あの時、私が見ていたものは、「繋がり」だった。私が信じる、私の住むべき地球は、人々の温かな思いやりに支えられた、繋がりの感じられる場所でなければならなかった。

デモに行っていたとき、
私は希望を持っていた。
あれだけたくさんの、しかも人種も様々な人々が、ともに戦争に反対しているのを肌で感じ、人々との繋がりを感じることができて、私は、幸せだったのではないかと思う。

勉強会で、皆で綴った冊子を作ると、それに賛同してくれる手紙や、寄付が海外からも届いた。
声をかけあいながら、一緒に歩く人たちから、
花を手渡してくれる女性から、
同じ、平和の思いを持つ人たちとの「繋がり」を
私は、あの戦争を通して強く体験していた。

私たちは、世界で起こることに、どんな意味も、好きなように与えることができる。(そしてどんな意味をも、もたせないことだってできる)。世界が、意味を私たちに押し付けるのでは、なく。

どんな意味づけにも、正解も、不正解もなく、
それは、受け入れられる。
私たちの人生に、受け入れられ、私たちはそれを体験していくのだ。

私は友人にメールの返事を書いた。

あなたは、どんな意味を、あなたの生きる、この世界に持たせたいのか、と、逆に尋ねた。

問いと答えは、いつもセットでやってくる。
彼女は私とやりとりを続けるうちに、
すでに自分の中にあった答えに、たどり着いていたようだった。


シルビアは、先月、ブラジルへと引っ越した。
私と同い年の、大好きな孫娘と一緒に暮らすために。
104歳で、言葉の通じない、見知らぬ国へ引っ越してしまったのだ。

私たちはしょっちゅう、メールでやりとりをする。

私は、ニューヨークで生まれ育ったユダヤ人の、世代のまったく違う彼女との、不思議な「繋がり」を、感じる。

彼女がブラジルに行ったことは、私に、彼女との深い繋がりを思い起こさせ、彼女の新しい土地や、人々に、思いをはせることでもあった。

それら土地や、人々が、平和で、朗らで、だから、このうえなく彼女に優しくできる場所であるようにと、願う。


この世界とは、私にとって今も、

自分自身との、
空や木々、花々、海、鉱物といった大自然、
亡くなった人たちとの、
すべての縁ある人々や、モノたちとの、
「繋がり」を確かにしてくれる場所だ。

けれど、本当のことを言えば、
あるレベルで言えば、
「繋がり」という言葉が必要ないほどに、
私たちは、はじめから一つなのだと、
それを、見せてくれる場所なのだ。


あなたは、この世界に何を見ますか?

何を体験したいのですか?





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