令和6年度日大ロー入試第2期についての雑感(暫定版)

初めに

R6年度日大ロー入試2期の既修者試験についての講評を投稿いたします。なお、試験が終了してから間がないタイミングでの投稿となりますので、後日改めて正式なものを投稿する予定です。その点について、ご理解いただければ幸いです。

憲法について

今回の問題で問われているのは、「不許可決定の可否の合憲性」です。本問では、Bの講演のために講堂を使用することに対して不許可決定をしても良いのかということが問題となると思います。

今回の問題は、様々な構成があり得ると思います。ですので、ここで挙げるのは、受験生の多くが現場で考えられ得る構成について、紹介しようと思います。

さて、受験生の多くが想定したのは表現の自由(21条1項)に対する制約という構成ではないかと思います。このように構成した場合、表現の自由が防御権であることを前提にした上で、「講演をさせろ」という請求権まで認められるのか、ということが問題となります。

この問題については、反論として、表現の自由はあくまでも防御権であり、請求権的な側面はないという反論が考えられます。

そこで、21条1項の主張に加えて、ないしは単独として、今回の自由を学問の自由、具体的には研究発表の自由として捉え当該自由の制約があるという主張が次に考えられます。これに対して、大学の自治(23条)の範囲内でしか、大学の施設利用が認められないといった反論が想定されます。この点については東大ポポロ事件が参考判例として挙げられると思います。

また、大学の施設利用については、大学側に施設管理権がある以上、大学側に裁量があるという反論もあり得ます。

他にも様々な構成が考えられます。もっと深く考察することも可能ですが、現実的な答案として考えると、これが現実的な構成かと思います。表現の自由の位置づけ、学問の自由と大学の自治のバランシングについて、説得的な論述ができていれば、高い評価が得られると思います。

民法について

民法については、動産の物権変動に関する基本的な理解が求められる問題でした。

設問1は、XA間の売買契約の時点において、Xは占有改定(183条)により「占有」(178条)を取得しており、動産対抗要件を備えているので、この時点で、本件パソコンの所有権はXに完全に移転するので、Aは無権利者になることを説明した上で、Yの即時取得の可否を検討することが求められています。

設問2についても、Yの即時取得の可否が問題となります。もっとも、設問1と異なり、AY間の売買契約の時点では、Yは占有改定により「占有を開始」していることから、占有改定で即時取得が成立するのかという論点を検討する必要があります。判例はこれを否定しているので、AY間の売買契約の時点では、Yは即時取得できません。そこで、次に現実の引渡し(182条1項)時を基準に考えると、問題文上からは明らかではありませんが、少なくとも、YはXと引渡しについて争いになった以上、現実の引渡し時に善意無過失は認められないと考えた場合、Yには即時取得が成立しなくなります。その結果、Xが所有権者となると考えることが出来ます。

設問3については、193条・194条の要件を丁寧に検討することが求められます。もっとも、配点が20点ですし、事案も少ないので、各要件について、解釈すべきものがあれば端的にし、当てはめをすれば良いと思います。

刑法について

例年は、多論点型の問題が出題されていましたが、今回は、有印私文書偽造・同行使罪の成否についてしか聞かれていないように思えます。

こういった問題の場合、受験生としては、他にもいろいろあるのではないかと考え、関係のないことを書いてしまいがちです。しかし、仮に他に書くべきことがあったとしても、配点の多くは、上記罪責の成否に振られていると思われますので、上記罪責について、丁寧に検討することが出来れば問題ないと思います。

なお、上記見解は、私個人の見解であり、日大ローの見解とは一切関係ありません。
また、当記事は無断転載禁止とします。

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