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モノとナラティブ

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自分自身が日常生活で接する「モノ」を起点に、それに付帯する超個人的「ナラティブ」を、デザイナー視点で紐解いていく連載をはじめました。
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2021年1月の記事一覧

003. Plant Pot|用途の金継ぎ

002. Teapot Tray|新しい居場所 でご紹介した店舗では、他にもいくつかの古道具を購入していた。その中で用途を決めて購入したものがある。それがこの白い磁器である。 ただ、この磁器は「火入」という茶道具の一つだった。江戸時代後期頃から登場したといわれる「火入」は、煙管などと一緒に煙草盆に一式揃えて客人の前に置かれる。今では実際に吸われる方はほとんどいないとのことだが、茶会の前に出されるところもあるそう。「どうぞ一服してください」と、「もてなしの心を表す」習慣は絶え

002. Teapot Tray|新しい居場所

今回は約1年ほど前に金沢の古道具店で出会ったTeapot Trayに焦点を当ててみようと思う。 金沢のような観光地では、いわゆる名産品や伝統工芸のラベルが擬態したようなプロダクトがどうしても表に出てきてしまうが、そこに載らないような、ある意味、意匠的地域性を削ぎ落としたニュートラルなプロダクトや店舗に出会い、そこから滲み出るその土地で培われたモノの見方や捉え方を感じることができた。 急須のための盆ぎゅーっと圧縮されたような細やかな木目の急須盆。何十年も前に作られた器たちが