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『解像度を上げる』

今回は書籍『解像度を上げる』の要約と、自分なりの見解について記述している。
お薦めしたいのは以下のような方たち。
明晰な思考がしたい
鋭い、かつユニークな洞察をしたい
取得した情報を綺麗に構造化したい


1, 書籍情報

以下、本書籍の簡単な情報。

・タイトル:『解像度を上げる―曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法
・金額
 > 紙  :2,420円
 > Kindle :2,178円
・ページ数:519ページ
・発売年月:2022年11月




2, 著者情報

著者は馬田 隆明氏。Amazonの「著者について」を引用し、以下に簡単な略歴を記載する。

University of Toronto 卒業後、日本マイクロソフトを経て、2016年から東京大学。東京大学では本郷テックガレージの立ち上げと運営を行い、2019年からFoundXディレクターとしてスタートアップの支援とアントレプレナーシップ教育に従事。




3, 要約と見解

本書籍は「解像度とは何か、そしてそれを上げるには?」ということについて言及している。ざっくりではあるが、目次は以下の通り↓↓

第1章 解像度を上げる4つの視点
第2章 あなたの今の解像度を診断しよう
第3章 型を意識しながら、まず行動からはじめて、粘り強く取り組み続ける
第4章 課題の解像度を上げる―「深さ」
第5章 課題の解像度を上げる―「広さ」「構造」「時間」
第6章 解決策の解像度を上げる―「広さ」「構造」「時間」
第7章 実験して検証する
第8章 未来の解像度を上げる


それでは、各章ごとに見ていきたい。


■ 第1章 解像度を上げる4つの視点

この章では「解像度とは何か?」ということついて言及している。


そもそも、解像度とは「物事への理解度、物事を表現する際の繊細さ、思考の明晰さ」を表しており、"解像度が高い"というのは「相手の持つ課題を時間軸を考慮しながら深く、広く、構造的に捉えている」という状態である。

"解像度"は以下の4つに要素分解できる。

深さ
広さ
構造
時間


深さ
原因や要因、方法を細かく具体的に掘り下げること。
深さがなければ課題を考えるときも何が根本的な問題であるか理解することができない。

広さ
考慮する原因や要因、アプローチの多様性を確保すること。
広く原因を把握し、異なるアプローチや視点を幅広く検討することで、もともと考えていたのとは別のところにある原因や可能性に気づくことが可能となる。

構造
"深さ"や"広さ"の視点で見えてきた要素を意味のある形で分け、要素間の関係性やそれぞれの相対的な重要性を把握すること。
構造化することで、要素間の関係性や相対的な重要性を理解することができる。それぞれの事例の共通点、違い、関係性、最重要箇所とその理由を理解していなければ、その事例から新しい洞察を導くことはできない。

時間
経時変化※1や因果関係、物事のプロセスや流れを捉えること。
※1…時間の経過による物事の変化
時間というものは常に流れており、解像度を上げる対象となる世界は変化し続けている。そのため、深さ、広さ、構造は常に時間とともに変わり続けている。

本章の最後に、著者が起業家に対して感じていることとして、4つの中でも「"深さ"が足りていない」と主張している。起業初期に受ける相談の8割が"深さの足りないアイデア"とのこと。そのため、まずは深さを確保することで解像度を上げるサイクルが回り始める。そしてその上で、「行動すること」を促している。繊細な情報を手に入れてより深く思考し、解像度を上げるために行動をすることが重要としている。



■ 第2章 あなたの今の解像度を診断しよう

この章では「いまどれだけ解像度高く思考できているか?」ということについて言及している。


具体的な事業アイデアや顧客に自社製品を提案するときの話し方、自社内の業務を改善するための施策などに関する解像度を測るには、以下文章の[]内を埋めるというやり方がある↓↓

[状況]という状況で[課題]という課題をもつ[対象顧客]向けの[製品名]という[サービスジャンル]です。これには[利点]という利点があります。[既存の代替品 / 競合]とは違い、[差別化要素]が備わっています。

そして、上記の文章に対して、それぞれ以下4つの視点をもつ↓↓

簡潔に話し、ユニークな洞察があるか?(=構造のチェック)
多面的に話せるか?(=広さのチェック)
その話はどこまで具体的か?(=深さのチェック)
道筋は見えているか?(=時間のチェック)

簡潔に話し、ユニークな洞察があるか?(=構造のチェック)
仮に、[]内にいれる言葉が思いつかなかったり、冗長にしか述べられない場合は"構造"が十分ではない。重要なところを明確、かつ簡潔に話す必要がある。
また、人に話してみて「だから何?(= So what?)」という反応があったら事例の羅列に終止しているに過ぎない。解像度が高い場合は、事実から自身の考えを抽出し、ユニークな洞察をすることができる。


多面的に話せるか?(=広さのチェック)
幅広い選択肢の中から、"なぜこれを選んだのか?"と言えるのが構造化できている状態だとすると、「幅広い選択肢」をきちんと知っているかどうかが広さにあたる。

広さを持ったうえで構造化もできていれば、その行動が起こる理屈を整理して伝えられ、複雑な物事の関係性を多層的・多視点的に説明することが可能となる。


その話はどこまで具体的か?(=深さのチェック)
先述した穴埋めは表面的な情報だけで埋めることもできる。が、それではほとんど意味がない。埋めた言葉の背景や理由をどこまで細かく具体的に言えるかが、「深さ」のバロメーターとなる

その際に5W1Hで分解して具体的に説明できるかどうかをチェックすることをお薦めする。

道筋は見えているか?(=時間のチェック)
先述した穴埋めにおいて、[製品]について短期的な目標、長期的な目標、そこに至るまでの道筋とそれが最適な理由、そして途中の到達目標を数値で明確に言えるようになる必要がある。



ここまで、深さ、広さ、構造、時間の4つの視点で解像度をチェックしてきた。こうしたチェックをし易くする方法のひとつとしてお薦めのが、解像度への理解をツリー構造で整理してみることである。
ツリー構造で自分の理解を整理してみることは、自分の解像度の現在地を確認するための簡単で有効な手法である。



■ 第3章 型を意識しながら、まず行動からはじめて、粘り強く取り組み続ける

この章では「解像度を上げるための基本姿勢」について言及している。


これまで解像度の概要について見てきた。では、その解像度を上げるにはどうすればよいのか?

解像度を上げるべく、基本姿勢に注目する。
それは以下の4つ。

まず行動する
粘り強く取り組む
型を意識する


まず行動する
多くの情報、この優れた思考能力を持っているにもかかわらず、高い解像度に辿り着けていない人に共通しているのは「行動が足りていないこと」である。

高い解像度へ辿り着くには以下の式における各項目を高くする必要がある↓

[(量&質)×(情報+思考+行動)]

特に「行動」が重要で、行動して得られた経験によって、実感を伴った自分だけの思考も促されるようになる。つまり、"行動量を増やすことで、質の高い情報と思考を獲得するサイクルが回り始める"ということである。

粘り強く取り組む
解像度の高さを手に入れるためには情報・思考・行動、すべての項目において時間を十分にかけることは重要で、3項目合わせて少なくとも200時間、多くて1000時間ほどの活動が必要となる。

型を意識する
[(量&質)×(情報+思考+行動)]」の"行動"に注目した際、行動量を上げるためのベストプラクティスは「その方法を少し学んでから行動を始めること」である。これは「」だ。

著者がこれまで見てきた、急速に解像度を上げた組織は解像度を上げるための「型」を意識していた。そういった「守離破」の精神で組織は型を学び、愚直に実践、そして自分たちの型を作った。その一方で、自己流から始めたり、考えもせずアレンジする組織は往々にして事業進捗のスピードが遅かったり良いアイデアに辿り着けていない。



■ 第4章 課題の解像度を上げる―「深さ」

この章では「解像度を上げるべく、"深さ"に注目しよう」ということについて言及している。


前提として、ビジネスで価値を生み出すには「課題」と「解決策」の解像度を上げる必要がある。

まずは「課題」に注目したい。
理由は、"良い課題を選べるかどうかで生み出される価値がほぼ決まる"と言っても過言ではないから

仮に、もの凄い高度な解決策を思いたとする。しかし、解決策が課題を完璧、もしくはそれ以上に解決していたとしても、課題の大きさ以上の価値は生まれない。解決策が課題に対してオーバースペックであっても、そのオーバーしている部分に対して追加のお金を払ってくれる人はほとんどいない。

つまり、"どの課題を選ぶか、良い課題を選べるかによって、生み出される価値は大きく変わる"のである。


では「良い課題」とは何か?それは以下3つの条件を満たすもの。

大きな課題である
合理的なコストで、現在解決しうる課題である
実績をつくれる小さな課題に分けられる


○ 大きな課題である
大きな課題とは、「解決すると大きな価値が生まれる課題」のことを指す。

大きな課題であれば、その解決策の改善幅だけ生み出される価値は大きくなる。一方、小さな課題であれば、解決策をどれだけ改善しても、どれだけ高度に解決しても、課題の大きさ以上の価値は生まれない。

そして、課題の大きさを考えるときは、「強度と頻度の掛け算」で考える。

課題の強度とは、"課題が一度起こったときにどれぐらいの痛みを感じるか、解決できなければどの程度のリスクがあるか、解決できたらどの程度のリターンを得られるか"ということを指す。

課題の頻度とは、"その課題がどのくらい頻繁に起こるか"ということを指す。


合理的なコストで、現在解決しうる課題である
前述した「大きな課題」が見つかっても、少ししか課題解決できなければ大きな価値は生まれない。そこで「良い課題」の条件の2つ目として、「現在解決しうる課題」であることが挙げられる。

ここで考えたいのは「コストパフォーマンスの観点」である。どれだけお金をかけてもよければ、解決しうる課題の幅は広がる。が、そんなことはほぼあり得ない。そのため、合理的なコストで解決可能かという観点、つまり"ある程度の解きやすさ"も重要となる。課題を解決できたとしても、コストが多大でそこから生まれる価値に見合わないことは往々にしてある。

ここまで触れてきた「合理的なコストで、現在解決しうる課題である」、「大きな課題である」という条件を満たすことは非常に難しい。

そこで、3つ目の条件が必要となる。


実績をつくれる小さな課題に分けられる
最初から大きな課題に直接アプローチするのはコストもかかり、困難になりがちである。

そのため、大きな課題を特定したら、解決可能な小さな課題に分解して、その中で最も大きな影響をもたらす課題に取り組むのが良い
つまり、「解決可能な課題に分割できるかどうか」が3つ目の良い課題の条件となる。


以上3つが「良い課題の条件」である。


大きな価値が生まれる可能性があり、それでいて合理的なコストの範囲内で解決しうる課題を見つけ、その中で小さな実績を出せそうな課題を選ぶ。そのためにはやはり課題の解像度を上げる必要がある。

そこで、ここからは「深さ」「広さ」「構造」「時間」の4つの順に、課題の解像度を上げるための方法論について言及していく。


まずは「深さ」から。

第1章でも触れたように、課題解決のシーンでは深さが足りていないことが多い。そのため、本章ではひとつだけ独立しており、その重要性が伺える。

まず、深さの視点で課題を捉えることが重要で、つまりは「症状ではなく、病因を突き止めること」ということである。

例えば体温が38.5度の時に「熱がある」という課題が発生する。この課題に対して解熱剤を飲むという解決策が思いつく。しかし、熱が出ているのなら何かしらの「病因」ある。その病因は風邪、インフルエンザ、熱中症かもしれない。いずれにせよ、根本的な治療のために注意を払うべきなのは、"熱がある"という症状ではなく、その病因の方である。

真の病因を考えないまま、つまり「深さ」の面で解像度が十分でないまま、表面的な解決策に飛びつくと、第三者からは不思議な行動に見えてしまう。

病因を探っていくうえで有効なのが「深さのレベル」を意識すること。表面に出ている症状をレベル0として、そこから何回深堀りしているのかカウントしていく。7〜10程度のレベルの深堀りができていればOK。そうでないと重要な洞察を得られず、すぐに解決策へ飛びついてしまい、結果的に的を得ていない解決策を作ってしまう。

深さのレベルごとにサーベイ(※全体像や実態の把握のために広く行う調査)やインタビューをなど様々な行動を起こすわけだが、一定以上の深さレベルに至るにはそれに応じた情報・思考・行動が必要になる。

そのための「型」となる9つの手法があるので、それらを見ていきたい。


型となる9つの手法を学んで実践する前に、意識しておくべき「外化」と「内化」という考え方を知っておく必要がある。

外化:読む・聞くなどを通して知識を習得したり、活動後のふり返りやまとめを通して気づきや理解を得たりすること

内化:書く・話す・発表するなどの活動を通して、知識の理解や頭の中で思考したことなど(認知プロセス)を表現すること

なぜ外化と内化を意識するのかというと、「深めていく」という作業には詳しく物事を知り、そのために情報を集める「内化」がイメージされがちであるが、「外化」、つまり試行錯誤して自分の中にあるものを表現するプロセスも同時に必要されるからである。

外化と内化は、それぞれがそれぞれを支え合う関係であり、片方だけではダメ。外化と内化を行ったり来たりしつつ、日常的に精度を上げる取り組みを粘り強く続けることで、十分な深さレベルに至る。それすわなち解像度を上げることができるのである。


それでは、「型」となる9つの手法について言及していきたい。それは以下↓

言語化して現状を把握する(外化)
サーベイをする(内化)
インタビューをする(内化)
現場に没入する(内化)
個に迫る(内化)
Why so?を繰り返し、事実から洞察を導く(外化)
習慣的に言語化する(外化)
言葉や概念、知識を増やす(内化と外化の精度を上げる)
コミュニティで深掘りを加速する(内化と外化の精度を上げる)


現時点での自分からすると本書籍において最も重要、かつ有益な章であった。自己評価(おそらく他己も同じだと思うが)では、思考する際の「深さ」が圧倒的に足りないと感じている。思考の基礎とも言える深さを外化・内化に分解して、それぞれをさらに分けていく。そうすると思考に深みがデて次のフェーズに移れるのかと。



■ 第5章 課題の解像度を上げる―「広さ」「構造」「時間」

この章では「解像度を上げるべく、"広さ&構造&時間"に注目しよう」ということについて言及している。


「広さ」「構造」「時間」の視点で、課題の解像度を上げる手法を順に紹介していきたい。


「広さ」の視点で解像度を上げる手法
「広さ」の視点で課題の解像度を上げることは、「探索範囲を広げ、より広い視野を持って課題を捉えるということ」である。

視野を広げていくうえで前提となるのは以下の4つ。

前提を疑う
視座を変える
体験する
人と話す

前提を疑う
物事の前提を疑い、より多くの選択肢を考える。そうすると視野が広がる。その際に有効なのが、「前提を疑うためのパターンを持っておくこと」である。「Why so?」が"深める"ための問いであったのと同じように、広げるためのパターンを見つける必要がある。

パターンは3つ。

そもそもを問う(ゼロベース思考)
10×の問い(いまより1桁違う改善策を考える)
リフレーミング(物事を異なるフレームで見てみる)

視座を変える
視座を変えることで時には広い視野を持ち、時には細かいところを集中的に見るなどすると、多くのものが見えるようになる。「広さ」の視点で解像度を上げていくときには視座を上手に変えることが重要となる

そこで、「相手の立場になって考える」ということは視座を変えるのに役立つ。例えば、仕事でセールスをしていて、顧客候補の"この作業は面倒だな"といった感情には「感情的共感」を覚えながら、同時に"なぜそうなっているのか"を「認知共感」を使って考えてみる。そうすることで、顧客にはどんな課題があるのか等、これまで見えていなかったものが見えてくる。

体験する
「広さ」の視点での解像度は徐々に上がるものなので、日常的に広げる行動をするのが重要となる。お薦めは「体験すること」。体験は新たな気づきや視点、情報への新たな意味付けをもたらしてくれる。

人と話す
人と話すことで、他人から見た時の視野や自分の持っていない知識を得ることができたり、視座を変えるきっかけになったり、自分が思いつかなかった発想を手に入れることもできる。

「情報×思考×行動」が解像度を上げるために重要であるが、その中でも独自の情報があるだけで解像度はかなり上がる。独自の情報は「現場での経験」か「他人」からもたらされることが多い。

効率を求めると、体験したり人と話したりすることの優先順位が下がってしまいがちになる。そうすると想定外の情報や視点が入ってくることが少なくなり、広がりを持つことができなくなる。

「人と話す」、そして前述した「体験する」をうまく組み合わせ、広さの探索に時間と資源を当てておくことで、中長期的な生産性は最大化される。


「構造」の視点で解像度を上げる手法
構造を見極めるには、まずごちゃっとしているものを要素に分け、それぞれの要素を比べて関係づけ、重要でないものを省く。そうすることで全体としての意味を理解できるようになる。

つまり、構造化のために以下の4ステップが必要。

分ける
比べる
関係づける
省く

分ける
構造を把握するための基本は、"ごちゃっとしてるものを分ける"、つまりは
"現象をうまく要素分解し、それぞれの要素を個別に認識すること"である。

分ける際は「ツリー構造」が基本で、その際に重要なのは「どのような切り口で分けるか」である。切り口が悪いと分けた後に深めることができない、比較しづらい、意味のある洞察を導けない等の問題が発生する。


比べる
"分ける"ことができたら次はそれぞれの要素を"比べる"。そうすることで、より構造が見えてくる。

そして、物事は抽象度を合わせることで比較可能になる。抽象度を合わせたうえで物事の大小重みで比較し、整理のためにグラフやチャートで視覚化する。


関係づける
"分ける"と"比べる"と同時に行う重要な作業が"関係づける"ことである

物事を極端に分けすぎると要素が細かくなってしまって洞察を引き出すのが難しくなる。そこで、細かく分けた要素どうしを特定の共通の性質で関係づける。そうすることで、比べやすくなって新たな構造が見えてきて、洞察を得られることがある。

具体的にはグループ化して、並べつながりを見る。

特につながりは重要で、各種のつながりを把握できているのは解像度が高いことの証明になる。"Aが起こればBも起こる"といったようなルールや法則、因果関係を見つけることができれば現象の予測可能性が上がり、課題の構造を理解できているということになる。


省く
"省く"ことは"分ける"、"比べる"、"関連づける"のすべての項目のなかで行うべきことであるが、共通して意識的に行うべきことである(そのため、独立して取り上げている)。

目的に応じて情報の一部を省く、言い換えるなら抽象度をあえて"粗く"することで比較や計算が行いやすくなるというメリットがある。



「時間」の視点で解像度を上げる手法
課題の解像度を上げるには"課題がどう移り変わっていくのか"を意識する必要がある。優先度の高い課題も明日には低くなるやもしれない。そこで、時間を意識する必要がある。ここでは以下の4つを意識していきたい。

変化
プロセスやステップ
流れ
歴史

変化
物事は時間ととも変化する。そのため、変化に着目することで時間の視点で解像度をあげることができる。変化にはパターンがあり、そのパターンを把握すると構造や因果関係も見えてくる。


プロセスやステップ
時間の流れにしたがって何が起こるか把握することで見えてくるものがある。それは、"物事をステップごとに分解し、プロセスを見ていくと解像度を上げることができる"というものである。

例としては"ファネル"が挙げられる。購買行動では認知→関心・興味→比較検討→購入の順で対象となる人がどのくらい減っていくかを整理し、どの部分に取り組むべき課題があるかを見極めることができる。


流れ
時間に注目することでモノや情報の流れを見ることができるようなる。流れを把握することは構造を理解するための基本の一つである。

ここで注目するのが"ボトルネック"で、この概念を様々なモノや情報に適用してみると、流れがどうなっているのかをより詳細に把握できるようになる。


歴史
過去や歴史について知ることも解像度を上げるうえで役立つ。課題には必ずそれが生まれた歴史がある。課題を見つけようとしているのであれば、時間をさかのぼり、業界の変遷の歴史に注目するのが良い。



■ 第6章 解決策の解像度を上げる―「深さ」「広さ」「構造」「時間」

この章では「"解決策"の解像度を上げるべく、"深さ&広さ&構造&時間"に注目しよう」ということについて言及している。これまでは"課題"の解像度を上げてきたが、今回は"解決策"に注目していく。


良い解決策の3条件
良い解決策の条件は以下の3つ

①課題を十分に解決できる
②合理的なコストで、現在実現しうる解決策である
③他の解決策に比べて優れている

解決策を定義付けしたうえで"どのような視点を持つべきか?"について論じていきたい。視点とは"深さ"、"広さ"、"構造"、"時間"の4つである。


深さの視点
重要なのは以下5つの型。

プレスリリースという外化の型
行動可能な単位までHowを問う
専門性を磨く
手で考える
体で考える


プレスリリースという外化の型
外化:読む・聞くなどを通して知識を習得したり、活動後のふり返りやまとめを通して気づきや理解を得たりすること

課題の解像度と同じく、「言語化」は解決策を深堀りをするうえでも重要で、現在地を確認することは解決策のアイデアを洗練させるための第一歩である。

そんな時にはプレスリリース、文章にまとめるのが良い。その際に気をつけることは、
「優れた〜」や「最高の〜」といった誇張表現の削除
不要な形容詞、形容動詞の削除
独自の専門用語を不用意に使用しない

実際に言語化したものを読んで、"当たり前すぎる解決策だな…"と思った場合は十分な深さではない可能性が高い。そのため、「その解決策ならではの"固有の強み"」を書けるようにするのが良い。

行動可能な単位までHowを問う
課題では「Why So?」を5回問うことを勧めたが、解決策では「How?」を繰り返し問うことで深めていくことができる
そうして生まれた選択肢の中で効果的、かつ行動可能な手段を選んで解決策を実行していく。

専門性を磨く
言語化し、Howを繰り返し問う中で必ずと言って良いほど、どこかで専門的な知識が必要になる。解決策を深めていくうえで最も素直で効果的な手法は、専門的な知識を身につけることで、その中でも最先端の知識を身につければこれまで解けなかった課題を溶けるようになる。

手で考える
解決策を深めていく際も「外化」は有効な手段。課題と違い、解決策における外化の場合は言語化だけでなく解決策を実際に自分の手を動かしながら作る方が効果的である。まずは行動してみる。

解決策のアイデアが思い浮かんだらプロトタイプを作る。それが難しいようであればスケッチをしたり、模型を作るのでもOK。

体で考える
解決策を思いついたら簡単にロープレをしてみる。実際に体を動かしてみることで状況や解決策に違和感を見つけることができ、改善すべき点が見つかる。

ロープレをする際は事前に起承転結をイメージしてやってみる。
製品やサービスが必要となる文脈

課題

解決策

顧客が手に入れるアウトカム


広さの視点
重要なのは以下4つの型

使える道具を増やす
外部資源を獲得する前提で広げる
探索に資源を割り当てる
解決策の真の意味を考える

使える道具を増やす
"ハンマーしか持っていなければ全てが釘に見える"という諺がある。ハンマーという手段にこだわるあまり、そのハンマーをむやみやたらに全ての課題に適用しようとしてしまう傾向を指摘したものである。

解決策を広く知らなければ課題を解決できることに気づけない

外部資源を獲得する前提で広げる
解決策を広げていくうえで、多くの人が陥りがちなのは「自分ができないことは解決策の選択肢から外してしまう」ということである。そうすると、解決策の選択肢が十分に広がらない。

"ない"のは"今はない"だけであって、その一部を外部から調達してくることもできる。したがって、"今はない"からといってその選択肢を諦めるべきではない。

探索に資源を割り当てる
解決策の幅も課題と同じく、徐々にしか広げていくことはできない。日常的に、地道に探索して自分の興味・関心の幅を広げ続けるしかない。

人は解決策を「深める」ことに資源を投下しやすい傾向にある(専門性を高める、1つのスキルを磨くetc…)。一方で、探索はあたりはずれが多く、コスパが悪いように見えてしまう。その結果、探索へのリソース投下は少なくなりがちである。

このトラップに陥らないために、「2割り程度の時間やお金を探索に使う」というのがお薦めである。

解決策の真の意味を考える
課題では「構造を見極める」ことで解像度を上げたが、解決策は「構造を築く」ことを意識すると解像度が上がる。解決策の構造はその解決策の中で人やモノがどう動くかを大きく規定する。

何も考えずに作っても構造は必然的に生まれてしまうものだからこそ、効果的な構造作り上げるためには意識的な努力が必要である。


構造の視点
解決策の構造はある種のシステムである。解決策の解像度の構造を考えるときにはこのシステムを自らの手でうまく築くことが求められる。

システムを築くときに強く意識したいのは、「システムを作り上げる目的、つまり"どういった課題を解決したいか"」である。

そして、構造は論理的である。しかし、人は論理だけでは動かない。解決策が実際に活用されるものにするうえで、「受けての理解を促し、感情をかき立てる構造を築く、つまり"ストーリーという観点から物事をつなぎ合わせる"」ということが挙げられる。


時間の視点
"構造"の中で解説したシステムに時間軸を組み込むことで、解決策の完成度はさらに上がる。

何かを解決しようとしたとき、全ての課題が一気に解決できることも、全ての課題に手を付けられるほど資源が豊富なこともほとんどない。多くの場合、「課題を一つ一つ順に解決していく、つまり"ステップを刻みながら進んでいく"」ことになる。

アイゼンハワーマトリクスで有名なアイゼンハワー大統領は「計画に価値はないが、計画することは役に立つ」と述べている。つまり、「どういったステップで進んでいくのかという計画を立てること自体が解決策の解像度を上げる一つの手法」なのである。
その計画に対して、1ステップ1ステップに十分な説得力をもたせる必要がある。



■ 第7章 実験して検証する

この章では「仮説を検証するために行動する」ということについて言及している。


ここまでは課題と解像度をどう上げるかについて言及してきた。

勿論、解像度は上がっていくが、課題や解決策はあくまでも"仮説"であるとるということ。そのため間違っている可能性もある。

仮に間違っているのであればその仮設を検証してどの程度正しいのか確認する必要がある。ではどうすれば良いのか?それは「検証のための行動(実験)」である。

「情報×思考×行動」が解像度を上げるための鍵であると度々言及してきたが、実験という行動をすることによって、解像度を上げるための独自の情報思考のきっかけを得ることができる

つまり、これまで仮説構築のために積み上げてきた"情報の量&質"、"思考の量&質"を"行動の量&質"によってフィードバックし、これまでの仮説をより鋭利に、そしてより選択肢が広げていくことができる。

そして行動は実験という側面だけでなく「機会を創造する」という側面をももっている。行動することで周りの環境が変わり、新しい機会を作り出すことができる

例えば、実験という行動をすることであなたが何をやっているのか知る人が増え、その結果あなたの周りにそのことに興味をもつ人が増えてくるかもしれない。そうすれば、その人たちに手伝ってもらって新しい機会を追求することもできるようになるかもしれないし、新しい情報が舞い込んで一気に物事が前進するかもしれない。



■ 第8章 未来の解像度を上げる

この章では「目指したい未来像についての解像度の上げ方」について言及している。


多くの人にとっての課題とは、そのほとんどが経営者や上司、顧客から与えられた課題である。

しかし、マネージャーや経営者の立場に近づくにつれて自由度は増え、徐々に課題を選べるようになるわけだが、その際に考えるべきは"課題がどこになるか?"だけでなく、"未来の理想"についてもである。なぜなら、"課題とは理想と現実のギャップ"だからである。

つまり、「課題を選ぶということは理想を選ぶこと」でもある。

では、理想の解像度を上げるためにはどうするのか?まずはある程度高い解像度で未来を予測する必要がある。これは課題と解決策の解像度を上げるときと同じで、「情報×思考×行動」の3つが重要である。

未来(理想)がどうなるか?についての情報を集め、考えながら歩み出せば一歩先にたどり着く。一歩先の地点から見える景色は元の場所から見える景色とは少し違う。10歩進めばその分だけ未来(理想)の解像度は上がるはずである




4, Appendix

"解像度を上げる"という思考は、仕事で日々発生する課題・解決策に対しては勿論のこと、日常生活でのそれらに対しても頻繁に活用する。本書籍は解像度を上げることについて体系立てて、わかりやすく説明されている。

何かしらの問題が発生した場合、そこから課題を抽出、解決策を立案したらガシガシ行動に移し、そこからフィードバックして、さらに鋭利な仮説を抽出する、というサイクルを作っていきたい。その際、本書籍を今後も参考にしていきたい。

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