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何もないことが全て。今目の前にいることが君への全て。

本屋ばかりを巡る日。
身支度に思ったより時間がかかってしまい待ち合わせに遅れる。しかし背が高いので見つけやすいのは毎度助かる。走ったせいで汗が止まらない10月の始め。
改めて顔を見上げると今までで一番個性的な髪型な気がするが似合っていると思った。起き抜けの寝癖も見てみたくなるよと思う。そのレンズ越しの私はいつもより透明感があるはずだと思うくらいの水色。水泳のゴーグルみたいなやつじゃなかった。

さっそく大型書店に向かう。
お互い別々に行動して本を選ぶこと、見つけたら声をかけることという二つの約束をして一度解散。
私にとっては馴染みの書店なのでわりと直ぐに相手を見かけたけど隠れて通り過ぎることにした。バレてたっぽいけど。



誰かに本を贈ったのは恐らく初めてで、自分の内側を見せている気がして恥ずかしいのでこれで最後にしたいと思った。もっと気軽に勧めたり出来ない謎の0か100な性格が発揮されるのどうかと思うけど仕方ないので諦める。私の内臓をどうぞお納めください。


最後に少しだけ一緒に本棚を眺めてから次の街に移動。手を伸ばした時に届かないものがあるとして、君はなんでも届きそうで良いね。
電車の窓から遊園地が見える側の方向だったのでアタリ。小学生の頃の遠足で片想いの子と同じ班になれなかった記憶。あの乗り物からみた景色は思い出せるのに私の隣には誰がいたんだろうとぼんやり思った。


古本屋の街に降り立つと先ずは人気のカレー屋さんに向かう。ビルの裏から入ると既に行列ができていたので並ぶ。暑い。いつから季節はこんなに曖昧になったのか。
配られたメニューをうちわ代わりにしてると直ぐにオーダーを取りに来た店員に回収される。再び暑くなるが比較的早く店内に通される。ラッキー。

2回目の来店で同じ席に通される可能性は1/100らしい。どんな計算でもしてくれるところが好き。
ご飯が速攻で冷たくなるほど空調が効いた席でカレーを食べる。何口目でも美味しいことは重要なことだと繰り返し言い合う。美味しいの共有。福神漬けは数種類あるしご飯にカリカリ梅も一粒乗ってたからおじさんは大喜びだろうなと思う。私も喜びました。食べてないけど。

無造作なのか巧妙なのか積み上げられたり並べられたりした古本からは独特の香りと湿っぽさと、圧倒的な時間の経過を放っていて表紙から背表紙から沈黙のおしゃべりが聞こえてきてうるさいくらいだし何故かくしゃみがとまらない。何故か。
普段出会わないような本に沢山出会った。旅先で辞書を買えるようになったら一人前ということ。ホースの白い馬ではなくスーホの白い馬ね。よろしく。

マスクをしてるから匂いがわからない。季節の匂いも、相手の匂いも何もかも。
メロンソーダとバナナジュースという最高に子どもな組み合わせしかできない私たちはいつ大人になるんだろう。
大人はずっとお喋りしたりずっと歩いたりしないのかもしれない。だってもっと手っ取り早い方法があるでしょう。私はとっくに大人です。
メロンソーダに沈むさくらんぼが上手に取れなかったので諦める。種のある実が好きなのにカリカリ梅もさくらんぼもスルーした今回。大人過ぎて失神しそう。

川沿いは少しだけ。そんな回もある。


最後はひたすら電車に乗っていた。
ひたすら喋っていて、それでもどんどん景色が変わっていくのと空が暗くなっていくから寂しい。
なのに時計の針は殆ど進まない不思議。時空が歪んでるのかと思った、
両手を組んだ時親指が左が上ならインプットは右脳タイプ。両腕を組んだ時に左腕が下ならアウトプットも左脳タイプ。

何度会っても変わらないと言ってくれたけど、こんなに毎日死に向かって生きてるのに変わらないはずないんだよなぁ。当然まだ分からなくて良いことだけど。




近くて遠い。


帰りの電車では直ぐに眠ってしまって、起きてからは貰った本を捲る。
インプットは右脳タイプにぴったりのやつだと思った。
一年前、私が飛行機に乗る時の方がもっと寂しかったなと思った。寂しさの度合いは一緒にいた時間の長さと関係あるのかもしれない。寂しいのは嫌。もっとずっと一緒にいてと思うのはどれくらいのわがままなんだろう。



家に着いてからチョコレートを一粒食べてベランダで煙草を吸う。
お風呂から出ると恋人が納豆おろしうどんを作ってくれたので食べて寝た。

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