絵本 "スイミー" 本当の主題と、草間リチャード敬太くん

しごできで有名な隣の部署の先輩が、ある日の夕方ふらっと私と同僚の元に現れて聞いた。
"スイミーの物語の主題ってなんだと思う?"

「役割を持って協力する大切さ?」
「自分にしかない良さに気づく…?」
あらすじを思い出しながら私たちは答える。
ふっふっふ甘いな、とスイミーを仕事のバイブルと豪語するその先輩はパラパラと実際の絵本を開いて見せてくれた。

今2人が言ったのは、結果でしかない。
物語の半分はスイミーが海を旅するシーン。
ここに本質があると考えられない?


理解しきれず、手渡された絵本の美しさだけが印象に残った私は、「はあ…」と曖昧な返事をしてしまった。



……前置きが長くなったが、勘の良い方はすでにお分かりなのではないだろうか。

Aぇ!  groupの目印担当、草間リチャード敬太さん(以下リチャくん) について、私はこれまでいかに表面的・結果論的に物事を捉えていたか。Netflixドキュメンタリー「Borderless」第4話を見て気づくとともに、冒頭のスイミーの話を私は思い出したのだった。



以下私が「スイミー 考察」で記事を漁りながら、リチャくんを重ね考えたことを語ります。(あくまで個人の妄想解釈です。)


1.およぐのは だれよりもはやかった

冒頭から、私は重要なことを見落としていたことに気づく。スイミーは元々スペックが高い。

つい当たり前に捉えがちだが、音楽・ダンス・笑いとマルチな才能があると言われるAぇ!  groupにおいて、全ての分野で満点を取れるのはリチャくんだけだ。しかしそれは叱られながら伸びた後天的な能力であり、後輩へのダンス指導においても"最低限"を意識する彼は、自分らしさは二の次、冷静にまずは必要な能力や技能を重んじる。

そんな彼を「お前は目立つからいいよな」と揶揄した先輩に、なす術なく一網打尽にされたスイミーのきょうだい、赤い魚たちが重なる(申し訳ないけど)。絵本でも、スイミーだけが別方向へと泳いで逃げることができていた。冷静に素早く動くことができなければ、自然界も芸能界も、淘汰あるのみなのだ。

にげたのは スイミーだけ


2.うみには すばらしいものが いっぱいあった

1匹暗い海の底を泳ぐスイミー。冒頭の先輩だけでなく多くの記事が、このシーンの意義を述べている。

その中の一つが、世界の様々な美しさが喪失を経験したスイミーを前向きにしたこと。淘汰されない、から、この世界を楽しんで生きる、へ。この価値観が物語後半、怯える他の赤い魚たちを鼓舞する力と理由になる。
一度アイドルのサバイバルから降りようとしたリチャくんの考え方を変えたのは、ファンからの手紙だったらしい。その内容をどう受け止めていいか視聴者の私は戸惑ったけど、「自分が、もはや自分1人を超えた存在になっている」と気づいたことが彼の転機だったんだなということはわかった。

リチャくんはいつも冷静なのだけど、不思議と職人のような閉じた頑なさは感じられない。泣いたり笑ったりしながら前に進み、先輩のアドバイスも素直に受け止められる彼。冒険と1人の時間の繰り返しを経てこの世界の中で、自分は、自分1人の存在を超えてどうあるべきか、を常にアップデートし続ける柔軟な思考を持った人なんだろうな。

スイミーも、海で出会った生物たちの様子——どういう質感でどういう大きさでそれぞれの環境の中でどういう動きを見せるのか——それらは自分にどんな印象を持たせるのか、注意深く見ている。自分がどうあるべきかまでスイミーが考えたかどうかはわからないが、少なくともその豊かなものの見方は、その後の、いち生物を超えた「大きな魚」を演じるビジョンに繋がったと言えるだろう。

にじいろの ゼリーのようなクラゲ
すいちゅうブルドーザーみたいな いせえび
みたこともない さかなたち
みえない いとで ひっぱられている


3. "ぼくが めになろう"

この言葉がダブルミーニングであることを初めて知った。大きな魚の目担当であることに加え、その「大きな魚」を俯瞰して見る、という意味も含むらしい。旅を経て培われたスイミーの豊かなものの見方は、最後に彼自身の個性と合わさって他者を巻き込んだ自己実現となる。

少しこじつけかなと思いつつ、目印担当でありながら求められる世界観の中での自分(たち)を正確に捉える目を持つているのもリチャくんだ。ていうか逆か。彼がAぇを俯瞰して見る目を持つから、彼は目印担当を引き受けられたのだ、と私は思う。


ヤンタン名物なりきりキャラ・YouTubeいざこざ芸・スタイリッシュなパフォーマンス、どれをとってもリチャくんは声色や表情、着こなしひとつひとつ繊細に変える。
Aぇ内部を見てバランスを取るのが正門さんなら、外から見たAぇを1つの表現として整えているのはリチャくんだし、そのビジョンの中で彼は個性的な「目」になる。

物語の最後、赤い魚たちの生命力が戻るシーンが好きだ。ひとりひとりが生き生きと役割を全して広い世界を無敵に泳ぎ回る様子が、最近のAぇさんの快進撃に重なって見える。外からの見られ方を意識し、彼を「目」にしながら意志を持って動き、ひと1人の存在を超えた芸術を作り出す、熱くスマートなAぇ!  groupおよびスタッフさんチームが好きなんだよ、私は。

スイミーは おしえた
けっして はなればなれに ならないこと
みんな、もちばをまもること



結局スイミーの色が違うこと、リチャくんが外国ルーツの特徴を持つことが高いパフォーマンスきっかけでも本質でも全然なくって。

その個性は俯瞰的なビジョンあってこそ活かせるし、そのためには繊細な心で世界を見ることが重要だし、そのためには孤独や喪失に向き合う勇気が必要だし、その機会は常に能力を高め動き回っている人にしか手にできない。
このプロセス、彼がベースを持ち披露するにいたる流れを当てはめても同じく納得できる。

大事な場面を短縮した教科書バージョンのスイミーのように、ドキュメンタリーもつい物語の結果だけが伝わりがちなんだけど、語る言葉が少なめな(だけど話は薄くて長いといじられる)彼の素晴らしき過程に思いを馳せてみたのでした。🐟


<参考にさせていただいたサイト>

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