青春

幼い頃、私は近所の小さな花屋さんが好きだった。そこで働くおばさんと、その娘さんはいつも学校帰りの私に温かい笑顔を向けてくれる。
私は2人と軽く会話をして家に戻る。2人は私を可愛がってくれた。誕生日には素敵な花を一輪、プレゼントしてくれた。
私はプレゼントされた花が枯れていくことがとても嫌で悲しくて、泣いてしまうのだ。
それを伝えると、2人はある時ドライフラワーを拵えてくれた。
ドライフラワーは半永久的に楽しめるから。
私は早速部屋に飾り、四六時中眺めていた。

月日が経ち、私は地元を離れて就職した。
毎日押し潰されそうになりながらも、2人のくれたドライフラワーが癒しになっていた。あの時よりかは少し色褪せたけれど。





「速報です。〇〇県XX市の生花店に、ナイフを持った男が押し入り…」


永遠なんてない。




視界を殺すくらいに眩しい春だった。
花はあちこちに、活き活きと咲いていた。

テレビの画面にいつもの花屋が映し出されていた。
人々の騒々しさとは関係なく、美しく咲き誇った花が店先に出ていた。

それとは真逆に、身体は腐敗していった。

街ゆく人々に、春は何も関係が無いようだ。皆周りを見ずに急いでいる。
無論、私もその一員だった。

しかし、悲しいかな、私はこの時初めて春を感じた。



…薄気味悪い空だった。


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