(2019/7/22 作成の掘り出し物)


僕は、僕は一体何者だ?
どうして生きているんだ?


毎日そんな事を考え、煙草に火をつけ、酒を飲み、ゴミを放ったらかして、いつの間にか寝ていて、気づいたら朝になっている。同じ繰り返しを、かれこれ数年は続けている。テレビをつけると、胡散臭いコメンテーター、幸せそうなOLが写っている。僕はすぐにテレビを消した。

「つまんねぇ。」

そんな事を口走りながら、また煙草に火をつける。

何なんだこれは。これじゃあ僕は死んでるも同然じゃないか。いや、もはや社会的には既に死んでいる事になっているだろう。

「あー…死にたい。」

でも死ぬ理由が無い。

「…死ぬ事に理由っているのか?生きる理由が無いんだ、死んだって構わんだろうに。」

どうせ、どうせ死ぬなら、何か爪痕を残したい。生きていたっていう印を。ダサいのは分かってるが、最後に足掻いて死にたい。

「よし。そうと決まれば。…メシでも食って、自殺するか。」

カッターナイフを手に取った。パーカーのポケットにそれを突っ込む。そして少量の金を持って外に出た。煌々と辺りを照らす太陽の暑さで、跡形もなく溶けてしまいそうだった。まるで、今目の前を通り過ぎた餓鬼が舐めていたアイスキャンディーの様に。


…最後の晩餐。コンビニで弁当を買う。
適当な場所で食らう。何だか妙に美味い。


「ねえ、お兄さん。」


誰かが話しかけた。

振り返ると、アイスキャンディーを舐めている餓鬼が立っていた。

「…何だよ?」

「これ、あげる!」

僕に何かを差し出した。蝉の死骸。屍。

「…っ、何なんだよてめぇ!気持ち悪りぃ!」

「その見た目で虫苦手なんだー 弱いね」

「何の真似だ!」

僕は声を荒らげた。

「この蝉、道端に転がってた。お兄さんがこの蝉みたいに見えたんだ。」

餓鬼は僕の方に蝉を投げ捨てると、走ってどこかへ行ってしまった。

「…お、おい!てめぇ!待て!」

僕は追ったが、所詮暫く運動していないこの老耄には追いつけなかった。

……

…………

………………?

もう死んでるも同然のこの体で何が出来るんだ。
この蝉の屍同然の……

俺は。


生きてるのに。

生命を全うしたこの蝉以下か。

情けない。



蝉を踏み潰した。
走った。只管走った。

無我夢中で走って、いつの間にか辿り着いたのは駅だった。
無けなしの金で電車に飛び乗った。

そこには、さっきの少年が、こちらを笑顔で眺めていた。
「頑張ってね。」
無邪気な声で。

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