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カネコアヤノ メモ

そう言えば、今日はカネコアヤノのライブに行く予定があります。以前から通勤中に聞いてはいましたが、作業用BGMとして聞いていたこともあって、一つ一つの歌詞に目を向けることがありませんでした。

良いきっかけだとも思うので、歌詞にフォーカスを当てながら、個人的に好きな曲を以下に挙げたいと思います。

今回、歌詞に着目しながら聞いて思ったことが一つ。愛を語る曲が多い一方で、どうやら博愛主義でもないらしい。みんなこよなく愛せよ、というよりも、確固たる自分の哲学を持った上で愛について論じている。万人に受けるわけではないと思う。そんなカネコアヤノ独特の世界観に引き込まれる。

また、あたかも自由に呼吸をするような、型にはまらない曲が多く、歌詞も曲調もなかなか掴みどころがないことが多い。「序章」が最たる例か。



季節の果物

ぼくたちは 優しくいたい
海にはなりたくない
全てへ捧ぐ愛はない
あなたと季節の果物を
わけあう愛から

季節の果物(2023)より

どこにでも誰にでも平等に降り注ぐ「海」との対比として、「季節の果物を分け合うこと」をピックアップするセンスに脱帽。愛は無制限ではなく限りがあって、だからこそそれを分け合うことに価値があるよね、というメッセージ。内容としては至極当たり前の話かもしれませんが、面白い比喩を曲に落とし込んだなあと感心しながら曲をリピートしています。

脱線しますが、僕なら「季節の果物」を「雪見だいふく」に変更します。歌詞の意味はそのままに、より切実な様子が表現できそうです。あなたは恋人に雪見だいふくを分けられますか?私にはそんな勇気はありません。歌詞を変更したら確実にファンは減るでしょうね。


セゾン

たぶんこれからも続いていく
テーブルの上
雑に置かれた財布と鍵
丁寧な愛 油断した心に
安心するんだよ 不思議とさ

セゾン(2019)より

ギャップ萌えについて、カネコアヤノの言葉を介して曲に落とし込んだらこうなりました、という感じの歌詞。恋人の全てが完璧だとどこか不安で、どこか息苦しいけれども、少しこう言った人間味があると安心できてゆとりが持てる。そんな曲。

そして、今回恋人のモチーフとして登場するのは「雑に置かれた財布と鍵」。このワード選びも秀逸。語彙力の無さで上手く言葉で表せないのですが、この歌詞を見ると心がギュッとなります。え、なるよね?

端的ではあるけれど、まるで曲を聞いている自分がそこに居合わせるかのようにありありと日常が投影されている。全体を通して、自分の恋愛観をぴたりと言い当てたかのような歌詞にハッとさせられました。


燦々


しっかりとした気持ちでいたい
自ら選んだ人と友達になって
穏やかじゃなくていい 毎日は
屋根の色は自分で決める

燦々(2019)より

何を食べて育ったら、こんな歌詞を思いつくんだろう?優柔不断で、周りに流されてしまう自分には刺さりすぎる歌詞。

流行に合わせて服を変えたり、周りの意見に流されて自分の思ったことを言えなかったりはよくあるし、その度に自分でも「流されてるなあ」と痛感しているけれど、友達を選ぶと言う発想はさすがになかった。流石にポケモンよろしく、6人に厳選するわけにもいかないのですが、そのくらいの気概を持って自分自身の足で人生を生きてこうぜ、って言うメッセージだと受け取った。

「屋根の色は自分で決める」っていう歌詞も美しい。屋根という言葉一つで、自然と上を向いてしまうのはなぜだろう。その結果、なんとなく前を向いて生きていこうかなというポジティブな気持ちにさせられる。そして、「屋根(中略)」については、頑張ればなんとか手が届きそうな、現実的に可能な絶妙のラインですよね。人間味を感じる、等身大の歌詞に惹かれます。

この人の視点で人生を歩んでみたいと思わせる歌詞。これがファンってやつか。そして、その価値観を押し付けるわけでもなく、側にそっと居てくれるような、背中をそっと押してくれるような。この曲に限らず、カネコアヤノの曲ってお守りみたいな曲が多いですよね。


予感

君といるこの日々は可愛くない顔で
写真で映るのも良いと知った
天使を抱えてる
恨みと引き換えに
天使を抱えてる

予感(2023)より

1曲の中で曲調がコロコロと変わる。時には甘ったるく、時にはガッツリ音を歪ませたプログレのニュアンスも。歌詞についても曲調についても、バラバラの引き出しが滑らかに繋がっていて、その圧倒的なバランスゆえに故意的な雰囲気を一切感じさせない。まるで、すたみな太郎*に来た気分です。

*焼肉、寿司、デザートを食べられることができる聖域のこと。地元の農学部の友達は、授業の一環で育てていた牛にスタミナ太郎と命名していた。サイコパスすぎる。

ちなみに、歌詞の意味はいまいち咀嚼できていません。ここでいう恨みがなんなのか、見当がついている人は是非教えてください。


月明かり

弓を引いた夜を忘れないで
震える手で抱きしめた
僕もあなたも許されてる
真夏 夜の散歩 月明かりとか

月明かり(2023)より

どこか掴みどころがなく、幻想的な歌詞。「弓を引く」の意味が分からなかったので調べたところ、「手向かう/反抗する」といった意味があるらしい。ここで言う、忘れたくない夜は何かに反抗した夜だったのかな。理性?モラル?許される対象が僕もあなたもってことは、「浮気/不倫」の曲とも読み取れなくはない。これが、深読みおじさんです。

また、サビ後の間奏がこれまた面白い。ビブラフォンが先陣を切って空間を広げ、脈絡もなく裏で入るブラス群が拍節感を乱し、歪んだギターが次いでそれに呼応し、ドラムを筆頭に6/8の2拍目に音が詰められ、次々に想像もしない方向から意図が分からない音が集まってくる。ボーカルが入っているわけでもないし、普通なら空中分解してもおかしくはない。まるで初見合奏のような、とりとめのないサウンドにもかかわらず、それでもどこか高揚感、一体感を感じるのはなぜだろう。

まるで天敵を見つけたイワシの群れのように、曲全体がある種のまとまりをもって最高潮に向かっていく中で、回帰したサビでは壮大でゆったりとしたフレージングに戻る。風邪を引いた時って、こういう夢見がちだよね。その後、左耳、右耳と交互に聞こえるノイズが不穏な空気を纏わせながらも、曲自体は少しずつ終わりを迎えていく。大音量で聴いていると、このノイズで左耳が死にます。気をつけてください。


またあとで追記します。ライブ楽しみ!

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