クマのお仕事

すべての人間には、担当のクマが決められています。
偉い人も、強い男の子も、おじいちゃんおばあちゃんも、
どのクマがその人間を担当するか、必ず一人一人さいしょから決まっているのです。

何歳の時に出会うか、どのように出会うかは人によって違います。
赤ちゃんの時からお世話をするクマもいれば、
人間がずーっと大人になってから、やっとクマの仕事が始まる場合もあります。

クマの仕事は主に、寝かしつけ業務です。

そのほかに、お話を聞いたり、一緒にお出かけをしたり、店番や子守りを手伝ったりなど、
業種によって色々な仕事もあります。

世界中からそのクマたちが一所に集まるのが、サミットです。

今月の議題は専ら、スマートフォンについてです。
1人のクマが発言します。
私が担当している子がスマートフォンを買ってから、全然寝かしつけられず、私は毎晩残業ばかりです。

ほかのクマたちが、口々に勝手に愚痴を言い始めました。
うちも、遊んであげようとしても、ゲームばかりで見てくれないよ。
私のところもずーっと寝てくれなくて、今日も朝まで働いて過労になっちゃう。
うちの女の子は、「睡眠導入剤」を飲んでるんだけど、それでも寝られないみたいなの。
カーテンを変えてみたらどうかな?

議長の黄色いクマが、
勝手な発言はお止め下さい!と注意しましたが、クマたちのお喋りは止みません。

うるさい、著作権切れたくせに!と野次が飛び、議長は例のしかめっ面をしました。

その後も、議論は丸一日続きました。

まりあちゃんのクマも、サミットに参加して、お家に帰ってきました。
ただいま、と、まりあちゃんが寝ているベッドにそっと入ります。

それから何日か経った日。
まりあちゃんは、クマに、相談がありました。

ねえ、私にもし赤ちゃんがうまれたら、もう遊んでくれないの?
クマは答えました。
ぼくは、まりあちゃんの担当のクマだから、ずーっと、遊んであげるよ。
ところで、人間の赤ちゃんって、クマを噛んだりする?
まりあちゃんは少し考えて、
うーん、私もまだ知らないけど多分、噛んだり、よだれをつけたり、引きずったりするかも。
クマは、人間の赤ちゃん、どんなだろう、怖いなあ、と思いました。

(つづく、このあと赤ちゃんがうまれる)
※前回投稿の、絵本だった想定バージョン

他のものも読みたいな、と思っていただけましたら、 よろしければ応援よろしくお願いいたします。