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吉良よし子議員(共産)2024年4月1日 参議院決算委員会

吉良議員(共産)が子どもの権利についての質疑のなかで共同親権について触れてくださったので、関連する質疑部分を書き起こしました。

吉良議員
日本共産党の吉良よし子です。
(中略:自民党の裏金問題について)
次に、今日は子どもの権利について伺いたいと思います。
(中略:子どもへの性犯罪について)
この子どもの権利侵害というのは、性犯罪だけではありません。子どもに対する虐待、深刻な社会問題として存在しています。
昨年、不登校は約30万人に上りました。いじめ件数も増加し続けています。子どもの貧困も深刻で、日本の子どもたちの自己肯定感は国際比較で顕著に低く、10代の自殺率というのは過去最高水準となり、下がらない状態です。
これらは今の日本の社会の中で、子どもたちが権利を持つ主体として尊重されていない、むしろ社会の中でその子どもたちの意見とか存在が軽視されていることの象徴なのではないかと私は思うわけです。
ようやくこの間、令和4年度に成立したこども基本法に子どもの権利というのが盛り込まれました。そして、基本法に基づき昨年作られたこども大綱には、子ども・若者を権利の主体として認識するということが強調され、乳幼児期から生まれながらに権利の主体であること、子ども・若者を多様な人格を持った個として尊重し、その権利を保障し、その最善の利益を図ると明記されました。
ということは、つまり政府は、学校をはじめとした子どもたちが生活するあらゆる場所、場面で子どもたちを権利の主体として扱うようにすると、そういうことでよろしいですか。総理、いかがですか。

岸田総理大臣
こども基本法、それからこども大綱についてご指摘がありましたが、まずこども基本法においては、基本理念として、すべての子どもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されることや、福祉にかかる権利が等しく保障されること、また、年齢及び発達段階に応じて、自己に直接関係するすべての事項に関して意見を表明する機会が確保されていること、これが規定されています。
また、同法に基づき昨年末に閣議決定したこども大綱においては、子ども・若者の視点に立って、社会が保護すべきところは保護しつつ、子ども・若者を権利の主体として、その意見表明と自己決定を年齢や発達段階に応じて尊重し、子ども・若者の最善の利益を第一に考えることを政府の子ども政策の基本的な方針としています。
こうしたこども基本法、そしてこども大綱に基づいて、子ども・若者が権利の主体であることを社会全体で共有してまいりたいと考えます。

吉良議員
社会全体で子どもが権利の主体であることを共有していきたいというご答弁でした。しかし、本当にこの子どもたち、権利の主体として扱われているのかということが疑念なんです。パネルをご覧ください。

これは、日本政府が国連の子どもの権利委員会からの勧告に対して報告した回答なんですけれども、ここでは、学校における校則等に対する意見表明権についての政府の考え方が書いてあります。
学校においては、校則の制定、カリキュラムの編成等は、児童個人に関する事項とは言えず、意見を表明する権利の対象となる事項ではない。
文科大臣、つまり学校では子どもたち、校則等について意見を表明する権利がない、それが文科省の立場だということですか。

盛山文部科学大臣
子どもの意見表明につきましては、こども基本法において、すべての子どもについて、年齢や発達の程度に応じて、自己に直接関係するすべての事項に関して意見を表明する機会が確保されていること、国及び地方公共団体は、子ども施策の策定等にあたって、子ども等の意見を反映させるために必要な措置を講じることなどと規定されているところです。
文部科学省としては、令和4年12月に改訂した生徒指導提要において、生徒指導とは、児童生徒が自発的・主体的に成長や発達する過程を支える教育活動のことであるとするとともに、例えば「校則の見直しを検討する際には、その過程に児童生徒が参画することは教育的な意義を有する」としており、各学校においてこれらを踏まえた取り組みが行われていると認識しております。

吉良議員
いや、正面から答えていただいてないんですね。
あの校則について、確かに私この間取り上げてきて、そういう中で、校則の見直しに関して生徒の意見を聞くのは望ましいとか、学校で校則について意見をするのはいいことだと、歴代文科大臣からの答弁を確認しているわけです。 そうした中で、校則を見直し進める学校も、教育委員会も増えているわけです。
しかし、それは学校での意見表明権を認めているということではなかったと、そういうことなんですか、大臣。はっきり答えてください。

盛山文部科学大臣
学校での意見表明権を認めていないというようなことを、私申し上げたつもりではありません。
特に校則の見直し等において、これはとおっしゃったのはこのことでございましょうけど、これにつきましては、平成29年の当時でございますか、当時の日本政府の報告ということでございますから、児童の権利条約におきましては、児童個人に直接関する事項について児童生徒が意見を表明する権利が認められておりますけれども、 校則の制定やカリキュラムの編成などの学校の管理運営、これについては学校の管理運営であるということで、その対象ではない。
しかしながら、さっき申しましたように、そういうようなものの制定その他に対しましては、校則の見直しその他ということでございますが、その過程に児童生徒が参画することは教育的意義を有するというふうに我々は考えているということです。

吉良議員
つまり、意見表明権を認めてないってことですよね。
この見解はこのままだということでよろしいんですか。イエスかノーかではっきりとお答えください。(複数の「そうだ」の声)

盛山文部科学大臣
現時点では、平成29年当時の見解、これを変えるということではございません。

吉良議員
変わってないってことなんですよ、校則についての変えようっていう教育的意義は認めるけど、それは権利じゃないんだ。これ、おかしいじゃないですか。
で、こども家庭庁、加藤大臣にも伺いたいと思うんです。この子どもの意見表明権については、こども基本法についての論戦の中でも、こうした答弁があるんです。パネルご覧ください。

子どもの意見表明、非常に大事だという前提でと言いながら、しかし、その子どもの、ある意味何でもかんでも子どもの意見、わがままで全部聞いてそれを受け止めろということではなくて、そうご理解いただければと思いますと。
これがこども基本法の政府の説明資料にもわざわざ抜粋されて載せてられていると。子どもの意見はわがままなのですか。だから聞かなくてもいいというのがこども家庭庁の立場なんですか。いかがでしょうか。

加藤国務大臣
子どもの意見がすべてわがままと、そういうことを申し上げてることではないと理解をしております。こども基本法は、第3条において子ども施策の基本理念を定めてございます。
そのうち第3号において、児童の権利に関する条約第12条の児童の意見の尊重の趣旨、これを踏まえまして、年齢及び発達の程度に応じて、子どもの意見を表明する機会と多様な社会的活動に参画する機会が確保されることを規定してございます。
また、第4号におきまして、子ども自身に直接関係する事項以外の事項であっても、子どもの意見がその年齢及び発達の程度に応じて尊重され、その最善の利益が優先して考慮されることを規定してございます。これらの規定は、国や地方公共団体が子ども施策を進めるにあたり、当該施策の目的等を踏まえ、子どもの年齢や発達の段階、実現可能性などもしっかりと考慮しつつ、子どもの最善の利益を実現するという観点から、子どもの意見を受け止め、尊重し、施策への反映について判断することを定めたものであると認識をしております。

吉良議員
ここにね、わがままっていう答弁があって、それをこども家庭庁の資料にわざわざ載せている。このこと自体がね、私は、おかしいと言わざるを得ないんです。
この間、私、この子どもの意見表明権について、こども家庭庁にも、文科省にも話聞いてきましたが、最善の利益、最善の利益って先ほど来言いますけれども、最終的にこの意見を反映するとは限らない、そういうこともこども家庭庁もおっしゃってるんです。実はこれ、30年前、日本政府が子ども権利条約に批准したときからの立場で、その当時、文部省の通知には、この子どもの意見表明権について必ず反映されるということまでを求めているものではないとはっきり書いてあるんです。
これ、この通知は撤回されていないわけですが、こんなふうに必ず反映されるということではないんだと言えば、どうせ言っても意味がない、子どもたち、意見言うこと諦めさせることになるんじゃありませんか。こんな通知は今すぐ撤回するべきではありませんか。総理、いかがですか。

盛山文部科学大臣
ご指摘の、この事務次官通知につきましては、児童の権利条約の公布を踏まえ、児童生徒が意見を表明する権利を有することをはじめとした条約の概要を周知した上で、教育に関する留意事項として、児童生徒の意見については、年齢や成熟の度合いに応じて考慮されるものであることを周知したものであります。
具体的には、児童の権利条約において、意見を表明する権利があることを前提とした上で、児童生徒の人権を十分に配慮し、一人ひとりを大切にした教育が行われなければならないこと、学校において児童生徒に権利等を正しく理解させることが重要であること等について周知を行っております。
文部科学省としては、この事務次官通知は学校での児童生徒の意見を表明する権利を阻害する趣旨のものではないと考えておりまして、撤回の必要はないと認識しております。

吉良議員
学校での子どもの意見表明を阻害するものではない。いや、阻害するものになってると思うんです。子どもの意見表明権っていうのは、子どもが意見を言うのが、大人が認めてあげますよ、そういうものなんかじゃないんです。
むしろ、大人に対してすべての子供の意見を聞く義務があるんだと、それを示しているのが子どもの意見表明権なんです。その子の成長、発達段階によってうまく言語化できないような意見もある。だからこそ、その状況を考慮して、その意見・意思をしっかり汲み取る責任が大人の側に、政府の側にあるんだと。それは国連の子どもの権利委員会でも何度も強調されていることなんです。
なのに、この文科省の通知は、その大人の義務を免責するような中身になっている。子どもの意見を聞かなくていい、そういう場合があるんだと、中身になっている。こういう子どもの権利条約の中身に反する通知は、すぐに撤回するしかないんだということを言いたいと思うんです。
事実、こういった対応を取っている中で、学校の中で子どもたちの意見が尊重されない、権利侵害されているという例があります。昨年、東京品川にある私立品川翔英高校の生徒が東京弁護士会に人権救済申し立てを行いました。お配りした資料をご覧ください。
しんぶん赤旗や朝日新聞等でも報道されているものですが、入学前には校則がないとアピールしていた高校が、 ドレスコードという事前の説明になかった指定の上着の購入・着用の強制、髪染めを禁止するルールなどを設定して、髪染めをしている生徒に、髪染めし直さないと文化祭に出さない、推薦を出さない、または退学を迫るなど、脅しを伴うような厳しい指導を行って、実際に自主退学に追い込まれる生徒も出てきている。そういうことを告発して、生徒の権利保障を求める申し立てです。
総理、一般論として伺います。事前に何ら説明もなかった校則ルールに基づいて、退学など脅しをかけながら指導する、これ人権侵害だと思いませんか。

盛山文部科学大臣
ご指摘の学校の事例については、今おっしゃられた報道を通じて承知しているわけでございますけど、事実関係の詳細を把握しておりませんので、一般論として申し上げます。学校において脅しをかけながら指導するというようなことは、あってはならないことでございます。
令和4年に改定した生徒指導提要においても、威圧的・感情的な言動で指導することは不適切な指導と捉えられうる例として示しているところでございます。
そういうことでありますので、体罰はもちろんのことでございますが、学校教育法が定める懲戒権の範囲を逸脱した不適切な指導は許されないものであり、文部科学省としては、引き続きその趣旨の周知徹底を図り、体罰や不適切な指導の根絶に取り組んでまいりたいと考えています。

岸田総理大臣
一般論としてということでありますが、一般論として、学校においては、児童生徒の教育上必要があると認められる時に行われる教師等からの指導は、校則の有無にかかわらず、 進路等を巡って脅かしをかけながら指導することはあってはならない、趣旨としては、今文科大臣からお答えした通りであると考えます。

吉良議員
脅しをかけるような生徒指導はあってはならないんですよね。
私、声をあげた高校生・保護者の方々からお話を聞く機会がありました。
驚いたのはですね、 学校側、先生や校長先生たちと話し合おうとした生徒に対して、学校側が、私学には裁量権があり、子どもの権利条約、基本法、憲法等は関係ない っていう発言があったとか、校長から生徒や保護者の声を聞くのは公立がやることという発言があったとか、驚きの発言なんですよね。これ、確認しておきます、文科大臣。
私立学校であっても、当然、憲法、こども基本法、子どもの権利条約は尊重すべきだし、人権侵害は許されないし、校則の見直しに関して生徒や保護者の声を聞くのは望ましいという子ども大綱や生徒指導提要の考え方、変わりませんよね。

盛山文部科学大臣
こども大綱や生徒指導提要におきましては、校則の見直しを行う場合には、その過程に児童生徒や保護者等の学校関係者からの意見を聴取した上で定めていくことが望ましいとしております。文部科学省としては、これは国公私立の別を問わず当てはまるということでございます。
先ほど来先生がおっしゃっておられますように、憲法その他の法令に則って行動するというのは、もう当然言わずもがなでございますので、引き続き先ほど来ご指摘いただいているようなことにつきましては、その児童生徒の参画することの教育的意義その他を含めまして、周知や情報の発信に努めていきたいと考えます。

吉良議員
私立学校であっても、校則の見直し、その過程で声を聞くのは望ましいし、人権侵害はダメだっていうことなんですね。とすれば、先ほどの品川翔英への事例というのは問題ですし、やっぱりそういう声を聞かれない事例が今なお学校の現場に存在するっていうことで言えば、学校における子どもの意見表明権、ちゃんと真正面から認めるべきだということを強く申し上げたいと思います。
で、子どもの意見表明権に関わって、もう1点、 審議が始まろうとしている民法改正案、離婚後の共同親権についても伺います。
この法案には、子どもの意見表明の機会を設けること、子どもの意見の尊重もしくは考慮という文言が条文にはありません。これ、なぜかと法務省に聞いたところ、法案に子の人格を尊重するとあると。だからその中に意見を、意見表明権が含まれるんだとか、もしくは、家事事件手続き法の65条に子どもの意見を配慮し、把握し、考慮すると規定しているから、この民法のにはその条文は必要ないんだと、そういうご説明を受けました。

※第六十五条 
家庭裁判所は、親子、親権又は未成年後見に関する家事審判その他未成年者である子(未成年被後見人を含む。以下この条において同じ。)がその結果により影響を受ける家事審判の手続においては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。

しかし、この家事事件手続き法65条についてまず伺いたいと思うんですが、子どもの意見の把握、考慮と現時点であるわけですけど、では本当に子どもの意見、考慮されているのかと。
令和4年、面会交流に関わって家事審判や家事調停を行った記載件数、また、同じ令和4年に、面会交流に関わって子どもの意見を聞くなど未成年の子を対象とする調査を行ったその件数を最高裁、お答えください。

最高裁事務総局家庭局長
まず、お尋ねの記載件数についてですが、令和4年に家事調停事件と家事審判事件等を通じて終局した面会交流の事件数は1万2737件でございます。
また、お尋ねの子に対する調査につきましては、家事事件手続法第65条に基づく子の意思の把握は、事案に応じた適切な方法によって行われ、その方法のひとつとして家庭裁判所調査官による調査がございますが、面会交流事件につきまして、令和4年に未成年の子を対象として家庭裁判所調査官に対する調査命令が出された件数は、各裁判所からの情報提供による実務実情調査の結果に基づく概数として、家事調停事件と家事審判事件とで合計5066件でございます。

吉良議員
1万2000件を超える事案があって、単純に比較はできないと言いますが、一方で、この調査をしたのはその半数以下の5000件に留まると。
離婚前のDV等が認められず、面会交流を強いられているという当事者の方からは、面会交流後に子どものおねしょが1週間続いたとか、面会交流後に指の爪がなくなるくらい噛む子どもの自称行為が止まらなくなっているなどの声があり、面会交流が子どものストレスになっていることが明らかな例もあるわけです。
日本乳幼児精神科学会も、こうした面会交流前後の情緒、行動、身体症状を軽視してはならないと訴えるとともに、幼い子どもも含めて子どもには意思があり、言語のみならず、そうした子どもの行動の異変も含めた全身の言葉を捉えて傾聴し、その意思を汲み取るべきと、離婚後の子どもの養育の在り方について、子どもの視点に立った慎重な議論をと声明出している。
こうした子どもたちの切実な意見し表明、意思表明を尊重できない法案では、子どもの最善の利益、守れないと思いませんか。総理、いかがですか。

岸田総理大臣
お尋ねの子の意見表明権の明文化については、離婚の場面で子に親を選択するよう迫ることになりかねず、かえって子の利益に反する、こういった意見もあるということを承知をしています。
いずれにせよ、子の意見、意向を適切に考慮すること、これは重要であり、改正法案が成立した暁には改正法の趣旨が正しく理解されるよう、関係府省庁等をしっかりと連携させ、適切かつ十分な周知、広報のほか、子の利益の確保に向けて、子の意見、意向を適切に把握するために何ができるか検討してまいりたいと考えます。

吉良議員
子どもの意見の意思の確認、尊重が必要なのは離婚の場面だけではないんですね。進学とか医療とか様々な場面で、共同親権だっていうところで、様々、父親と母親に両方の手を引っ張られる、そういう事態になりかねないわけだから、だから本人の意見を尊重しなきゃいけないでしょうと言われているわけです。子どもには子どもの暮らしがあるし、子どもの意見を聞いてくれない法律はいらないです。ひとり親支援団体などが集めた、共同親権に関する当事者の子どもたちからの声なんです。この声に向き合うならば、子どもの意見・意思を聞かないまま親権のあり方を議論するなんていうのはあり得ません
拙速な審議、採決などは絶対に許されない。子どもの権利を本当に尊重できる慎重な議論を強く求めて、質問を終わります。

岸田総理は「改正法案が成立した暁には、子の意見、意向を適切に把握するために何ができるか検討したい」と述べているけど、それは法案成立する前に考えなきゃいけないことではないのでしょうか?

以上
誤字脱字がありましたらすみません。

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