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仁比聡平議員(共産)2024年3月22日 参議院法務委員会(2回目16:50~)

参議院法務委員会で、仁比聡平議員が共同親権の質疑を2回してくださいました。
この書き起こしはその2回目、16:50~の書き起こしです。

仁比議員
日本共産党の仁比聡平でございます。先ほどの大臣所信質疑に続いて、共同親権に関わって、まず最高裁にお尋ねしたいと思います。
先ごろ、深刻なDV被害を訴えておられる当事者が超党派の勉強会にご参加になられまして、裁判所から「貴方には保護命令は下りないから取り下げなさい」と言われて深く傷ついている、そうした思いをお訴えになりました。裁判所はDV被害にまともに向き合ってくれないと、そう訴えている当事者、国民の皆さんはかなりの数いらっしゃると思います。私自身広く聞かれると思うんですけれども、こうした声について、最高裁はどう受け止めていますか?


最高裁事務総局民事局長
まず申し立ての取り下げに関してでございますけれども、裁判所において申し立てを強制的に取り下げるといった例があることは承知しておりませんが、却下決定が見込まれる場合において、裁判所が申立人に対して申し立てを維持するかどうか意向を確認することはあると承知しております。
もっとも、その際に取り下げを強制していると申立人に受け止められることがないよう十分に配慮をする必要があると考えておりますし、また申し立てに対しては適切に審理・判断する必要があると考えております。

仁比議員
男女共同参画白書のR5年版には、そうした保護命令の運用状況についての図が掲げられているんですけれども、R4年で言いますと、取下げ等が249件あるということが明らかです。もちろん、その中には色んなものがあるでしょうけども、被害者が保護命令の申立に至るというのはよほどのことなんですよね。そう簡単に保護命令を申し立てることはできないですから、当の申し立てている裁判所から貴方には保護命令が下りないと言われてしまうというのがどれだけ深刻なことか。
今回、共同親権を裁判所が判断することがあり得ると、そうした制度が議論される中で、一つの例だと思うんですけれども、こうした保護命令の取り下げを促すということだったり、そうした事態に至った事情を分析し検討したと。これを家族法制部会に示したということがありますか?

最高裁事務総局民事局長
取下げは申立人の判断において行われるものでありますところ、取下げを行うに際し理由は求められておらず、また取り下げ書に通常理由は記載をされませんことから、裁判所としては、申立人が取下げに至った事情について把握をしておりません。
このため、取下げに至った事情について分析・検討したことはございません。そして、今委員ご指摘のこうした内容を法制審議会家族法制部会において示したことがあるかどうかということに関しましては、示したことがないというふうに理解しております。

仁比議員
部会のほうから求められたこともないんじゃないかと思うんですけども、そうした審議になっているんじゃないか、強制的に取り下げさせるというのはあり得ないことだと思います。にも拘らず、取下げということに至って、深く傷ついた訴えがずいぶん時間が経ってからさえなされると。そのこと自体、沈黙を強いられてきたのではないか、重く受け止めるべきだと思うんですね。
大臣に別の角度で伺いたいと思いますが、親が子の権利や福祉を害するという多くの事態が、本当に残念なことながら現にあると、それが社会の現実なんだと思うんです。そうした権利侵害を行う加害親の弁解として、例えば「親権者なのだからどうしようが自由だ」とか「親としての躾だ」といった類の親権が弁解としてしばしば持ち出されるということがありますけれども、このことをどのように考え、それが共同親権の行使、これは現行法でも婚姻中は共同親権ですからその行使だったり、あるいは改正案による離婚後共同親権を認めるのか認めないのかといった判断にあたって、どのように判断をしようというのでしょうか?

法務大臣
この法案にも書いてございますが、親権は子どものために行使しなければならないものであって、親権行使の名目で親が子の権利を不当に侵害するということは許されないものであります。また本改正案においても、そのような親権の性質を明確化しています。親権に服するという現行法の書き方を改め、親権は子の利益のために行使しなければならないということを明確化しております。
また、本改正案では裁判所が親権者の定めをする場合には、父母と子の関係を考慮しなければならないこととしており、父母が親権を適切に行使しているかどうかも親権者を決めるときの重要な考慮要素の一つになります。例えば、子どもに対する虐待があるような場合は単独親権とするなどの配慮が働くわけでございます。

仁比議員
重要な考慮要素の一つというような仰り方で本当に安心できるのかと。そこが今問われているんだと思うんですよ。どんな深刻な実態があるのかということに関わって、お手元にこども家庭庁のほうで出していただいた、「児童相談所長または施設長等による監護措置と親権者等との関係に関するガイドライン」をお配りしております。こども家庭庁、この趣旨をご説明いただけますか。

こども家庭庁長官官房審議官
今しがたご指摘のありましたガイドラインですけれども、これは平成23年の民法等一部改正法による児童福祉法の改正において、児童の親権者等が児童相談所長や児童福祉施設の施設長、あるいは里親などが行う監護及び教育に関する措置を、不当に妨げてはならない旨を明確化したことに踏まえて策定したものでございます。
このガイドラインでは、児童相談所・施設・里親等の対応に資するように、親権者による不当に妨げる行為の考え方であるとか例示であるとか、対応方法等についてお示しをしたものでございます。

仁比議員
3~5ページ目あたりをご覧いただきたいと思うのですけれども、詳細に具体的な親が子どもを害する場合を列挙されているわけですが、親権者等の意向に沿った場合に児童に不利益を与えてしまうという場合について、例えば「正当な理由なく児童が必要とする契約や申請に同意せずまたは妨げる行為」、例えば携帯電話や奨学金、自立する際の賃貸住宅や旅券など。あるいは「児童が希望しており、適切と考えられる就職やアルバイトについて、正当な理由なく親権者等が同意せず、または妨げる行為」、または「児童に必要とされる医療と診察・検査・治療(入院を含む)を正当な理由なく受けさせない行為」、いわゆる医療ネグレクト、「児童に必要とされる予防接種や健康診査等の保険サービスを正当な理由なく受けさせない行為」、「学校で通常行われている授業や行事について、正当な理由なく出席や参加をさせない行為」、「児童の意思に反し、学力等に見合わない学校への進学を要求する行為」、「正当な理由なく児童が希望する進路に同意しない行為」、「児童の望まないまたは参加困難な部活動・習い事・学習塾等を要求する行為」等などですね、親がこうあれという意向によって行う行為が子どもの権利を害するという場合が具体的に様々指摘をされているんですが、こども家庭庁、こうした不当に妨げる行為はどのようにして取りまとめられたんでしょうか?

こども家庭庁長官官房審議官
このガイドラインですけれども、児童相談所長であるとか、児童養護施設等々における監護措置と親権者の行為との間で葛藤と言いましょうか、違いがある前に、どうするのかとということで整理したわけでございますけれども、取りまとめに際しましては、この平成23年の児童福祉法の改正に向けての議論でございますとか、あるいは施行準備の過程を通じて、当時は厚生労働省の担当部署ということにはなりますけれども、そちらの方で児童相談所あるいは社会的養護の現場において、対応に苦慮する場面として指摘されたり、あるいはそういったものとして想定されたものを検討・整理し素案をお示ししたうえで、実際等の関係者に広くご意見をお伺いして作成したものでございます。

仁比議員
ありがとうございます。つまり、担当者が頭の中で考えたとかいうんじゃなくて、現実に日本社会の中で起こっている虐待あるいは不当行為の抽出なんですよ。とても重いものだと思うんですが、そうしたなかで医療ネグレクト、この実情とそれが子の心身に与える重大な影響についてご紹介いただけますか。

こども家庭庁長官官房審議官
このガイドラインにおきましては、いわゆる医療ネグレクトに該当するものとしては、「児童に必要とされる医療」、医療といいますのは精神科を含む医療機関での診察・検査・治療で、治療といいますのは薬物療法・処置・手術あるいは入院によるもの等を含む、こうした医療を正当な理由なく受けさせない行為といったものを例示としてあげさせていただいております。いわゆる医療ネグレクトにつきましては、児童虐待に該当し得るものであって、子どもの生命・身体に危険が及び得るものでありまして、こういった医療ネグレクトを含めた児童虐待の発生防止に引き続き取り組んでいく必要があると考えております。

仁比議員
厚生労働省にお尋ねしますが、こうした医療ネグレクトという現実もあるというもとで、医療現場において、親権者はどのように位置付けられているんでしょうか。

厚生労働省大臣官房審議官
医療は、医療従事者と患者との信頼関係に基づいて行われることが重要でございまして、医療法においては、医師等の医療の担い手は、医療を提供するにあたり適切な説明を行い医療を受ける者の理解を得るように努めなければならないと規定されております。
一方、現行の医療法上親権者を含め、本人以外の第三者の決定・同意について、医療法上にルールは存在しませんけれども、患者の個別の病状や判断能力に応じて、医療現場で適切な医療を提供しているものと承知しております。

仁比議員
医療法上とご紹介あったのは、医療法第1条の4第2項にインフォームドコンセントの理念として「医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない」という規定をされている条文です。
この条文が医療を支えている土台なのであって、医療法上親権者という規定はないんですよね。この医療と親権の関わりについて、大臣は衆議院本会議で一部お答えをされているんですけれども、ちょっと私よくわからないんですよ。
つまり離婚後共同親権となった場合、子どもの医療は同居親だけで決められなくなってしまうのか?別居親の合意が得られなければ、家裁の判断を必要としてしまうのか?そもそも医療における親権者の同意って何ですか、と。医療法の世界には規定はない。そういう概念はないのに、なんでそれが今親権で語られてしまうのか?いかがですか?

法務省民事局長
まず法制度の面ですが、子の利益を確保するためには、父母双方が離婚後も適切な形で子の養育に関わっていただいて、その責任を果たすことが望ましいと考えております。
もっとも、父母双方が親権者である場合でも、父母間の協議を経ていては適時に親権を行使することができないようなときは、父母単独の判断であっても迅速に決定するほうが子の利益に資することになると考えられます。そこで、本改正案では父母双方が親権者であるときは、父母が共同して親権を行うこととしつつ、子の利益のため急迫の事情があるときや監護または教育に関する日常の行為をするときは、親権の単独行使が可能であるとしております。
委員ご指摘の子の医療行為に関する決定に関しましても、子の心身に重大な影響を与えるような医療行為については、一般的には父母双方が熟慮のうえ慎重に協議し、判断することになると考えられ、そのことが子の利益に資することになると考えております。
他方で、緊急を要する治療につきましては、急迫の事情があると認められますし、また軽微な怪我や風邪等の治療につきましては、監護に関する日常の行為と認められ、そのような協議を経る必要がないこととなると考えられまして、そのことが子の利益に資することになると考えております。

仁比議員
家庭裁判所の実態からして、審判や調査・調停の期日だってそんなに簡単に入らないのに、2ヶ月先みたいな話になっちゃうのに、適宜適切に判断なんかできるわけがないという批判があるのはもちろんなんですけれどね、私が今問うているのは、医療の世界で今局長が仰ったような重大な影響とかね、裁判所が判断するような、そんな枠組みの話なんですか、と。インフォームドコンセントというのはそういうことではないようにも思うし、その辺りの議論はどうなっているんですかと。全国の病院、あるいは医療の関係者から懸念の声が急速にあがっているというのは、医療という問題についてどう考えるのかというのが問われているからなんだと思うんです。
保育についてお尋ねします。保育所への入所や保育の実施や退所等における保護者の役割と親権者との概念の関係についてはどう考えるんですか。

のうせい審議官(省庁不明)
保育所の入退所に関する手続きにつきましては、子ども子育て支援法に基づいて保護者が市町村から保育の必要性認定を受けたうえで保育所の入退所の申請を行うこととされております。そして同法におきまして保護者とは、親権を行うもの、未成年後見人、その他の者で子どもを現に監護する者と定義されているところでございまして、現に監護する者にあたるかどうかにつきましては、どの程度子どもの監護を行っているか、関わっているかを市町村が確認して、各家庭の事情を十分踏まえたうえで判断することになりますため、子どもの親権を有している事のみを以て当該子どもの保護者になるものではありません。従って、子どもの親権を有していたとしても、子どもを現に監護する者にあたらない父または母については、同法上の保護者にはあたらないため、例えば両親が高葛藤な状況で別居しているような場合におきましては、保育所の入退所のための手続きは子どもを現に監護する者のみによって行うことが可能となってございます。

仁比議員
保育についてそういう議論があって、それは受験や進学、転校や居所の変更、パスポートの取得や手当の給付金、税務上の控除といった子育ての様々な場面で、保護者とかあるいは親権者とか、法定代理人とか、そうした条項というのは相当な数があるんですよ。私もちょっと調べかけていますけれど。それぞれ利益状況が違う、問題の状況が違う、それぞれ規定があり基準があり運用をされていると思うんですが、そこの場で真の子の利益とは何かを見極めていくためには、それらの基準や運用をすべて明らかにして、ちゃんと確認をしなきゃいけないと思いますが大臣いかがですか?

法務省民事局長
法令において親権者ですとか、あるいは保護者等の合意や関与が必要とされている事項に関しまして、本改正法が影響を及ぼすかどうかなどにつきましては、一義的にはそれぞれの法令を所管する各府庁等において検討されるべき事柄でありまして、法務省において関係法令の規定や運用の基準を明らかにすることはなかなか困難な面もございます。
しかし当然のことながら、法務省としましては、この法案提出に至るまでのあいだに関係府省庁と検討を行ってきたところでありまして、その際には法律関係が類似致します婚姻中別居の場合の各法令における取り扱いを参考に致しまして、離婚後共同親権を導入した場合にどのような取り扱いがされることになるかについて検討してもらうよう協議を重ねてきたところでございます。
今後も本改正案の趣旨が正しく理解され、離婚された方々が各種手続きにおいて困惑することがないよう、関係府省庁と連携してまいりたいと思います。

仁比議員
法の連携の問題じゃなくて法案の前提でしょう。他省庁に下駄を預けてどうするんですかと私は思います。
乳幼児を含む子どもの意思や信条を把握して配慮するというために、特別の取り組みが今行われております。時間が無くなってしまったのでこども家庭庁にご答弁をいただくことはできないかもしれませんけど、子どもの福祉と権利を考えた時に、法案に子どもの人格の尊重というだけに留まらず、そこに子の意見表明権をしっかり明記し、子どもの利益をしっかり考えていくんだと、そうした議論をこの国会で進めるべきだと思います。よかったらこども家庭庁、ご答弁頂きたいと思います。

こども家庭庁長官官房審議官
子ども基本法の基本理念において、「全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会が確保される」ということが基本理念に掲げられております。従いまして、子ども大綱のなかにもそういった旨が盛り込まれているところでございます。
こども家庭庁としましては、こういった子どもの意見を聴こうという取り組みをひろげていけるように各種取り組みを進めてまいりたいと考えております。

仁比議員
ありがとうございます。

書き起こしは以上です。
突貫作業につき、誤字脱字があると思いますがご容赦ください。

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