石川大我議員(立憲)に対する答弁 2024年4月19日参議院本会議
参議院議長
小泉龍司法務大臣。
小泉法務大臣
石川大我議員にお答えを申し上げます。
まず、本改正案の提出の経緯についてお尋ねがありました。
離婚後の共同親権の可能性を含む親権制度のあり方の検討は、平成23年の民法改正の際に、衆議院及び参議院の法務委員会において全会一致で採決された附帯決議の中に盛り込まれたものであります。
その後、令和3年2月の法務大臣の諮問を受け、法制審議会において様々な角度から調査審議が重ねられ、令和6年2月に要綱が採択され、法務大臣に答申されました。
本改正案はこのような検討を経て提出されたものであり、急ぎ提出したとのご指摘は当たらないと考えます。(議場からえーという声)
次に、選択的夫婦別氏制度についてお尋ねがありました。
選択的夫婦別氏制度については、直近の世論調査を見ても、国民の意見が分かれています。(場内がざわつきだす)
家族のあり方の根幹に関わる問題でもあり、最高裁判決でも国会で論ぜられ、判断されるべきであると指摘されています。(複数の場外発言あり)
法案提出の是非は国民各層の意見、国会における議論の動向を注視しながら検討する必要があると考えております。
次に、同性婚制度についてお尋ねがありました。
同性婚制度の導入の問題は、我が国の家族のあり方の根幹に関わる問題であり、国民生活の基本に関わる家族法制や、これと相互に密接な関係にある国民の家族観に関わる問題であると考えています。
その導入について議論を進めるには、国民各層の意見を十分に踏まえる必要があると考えております。(場内のざわめきやまず)
次に、離婚の際の意に反する共同親権は憲法24条に反しないかについてお尋ねがありました。
現行民法において夫婦の合意がなくても裁判上の離婚及び親権者の指定が認められていることを踏まえると、本改正案において当事者の合意がなくても、裁判所が子の利益を考慮して父母の双方を親権者と定めることができることとしたことは、憲法24条に違反するものではないと考えております。
次に、本改正案と国民世論との関係等についてお尋ねがありました。
本改正案は、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが子の利益の観点から重要であるとの理念に基づくものです。
また、本改正案は、子への虐待の恐れがある場合や、DV等を受ける恐れにより親権の共同行使が困難となる場合には、裁判所は必ず単独親権と定めなければならないとするなど、DVや虐待の恐れがある事案にも配慮したものです。
本改正案については、衆議院での審議でこうした点を丁寧にご説明し、ご可決をいただいており、国民の理解も得られる内容となっていると考えておりますが、引き続きその趣旨・内容が正しく理解されるよう適切かつ十分な周知に努めてまいります。
次に、本法案が特定の団体等に向けられたものではないかについてお尋ねがありました。
本改正案は、父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や、子の養育のあり方の多様化等の社会情勢に鑑み、子の利益を確保する観点から民法等の一部を改正しようとするものです。お尋ねのように特定の団体等に向けられたものではありません。
次に、本改正案と子の養育のあり方の多様化との関係についてお尋ねがありました。
離婚後、単独親権制度を採用した昭和22年当時は、共同生活を営まない父母が親権を共同して行うことは事実上不可能であると考えられていました。
しかし、その後離婚後の子の養育のあり方が多様化し、離婚後も父母双方が子の養育についての協力関係を維持することも可能であり、実際にそのような事例があるとの指摘もございます。
本改正案は、こうした社会情勢の変化を背景とする子の養育の多様性を反映したものであります。
次に、父母の離婚後の子の養育に関して議論すべき事項についてお尋ねがありました。
ご指摘のように、離婚後の父母の役割分担等を含め、子の監護に関する事項が父母の協議や裁判所の手続で適切に定められることや、離婚後の父母双方が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことは重要です。
これらに関する法制審議会の議論を踏まえ、本改正案には離婚後の父母双方を親権者にできるようにする規定や監護の分掌に関する規定、父母の責務等に関する規定が設けられております。
次に、離婚後の父母双方を親権者とすることと、DV・虐待の事案との関係についてお尋ねがありました。
本改正案で離婚後の父母双方を親権者にできることとしているのは、離婚後の父母双方が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことを可能とすることで、子の利益を確保しようとするものであります。
その上で、本改正案は、子への虐待の恐れがある場合や、DV等を受ける恐れにより親権の共同行使が困難となる場合には、裁判所が必ず単独親権と定めなければならないこととしています。
また、本改正案では父母相互の人格尊重義務や協力義務に関する規定を新設するとともに、親権は子の利益のために行使しなければならないことを明らかにしています。
このように本改正案は、別居の親権者に同居親による養育への不当な拒否権や介入権、支配権を与えるものではありません。
次に、DV・虐待がある事案に関する裁判所の判断についてお尋ねがありました。
本改正案では、DV等のある事案では裁判所は必ず父母の一方親権者と定めなければならないと規定しており、DV等の有無が適切に審査されることが重要であります。一般論としてDV等の主張がされた事案について、家庭裁判所では当事者双方の主張・立証を踏まえて適切な審議が行われているものと承知しております。
引き続き、裁判所で適切な運用のあり方を検討されるものと承知しており、法務省としても、裁判所の取組に協力してまいりたいと思います。
次に、結婚前のDV講習等についてお尋ねがありました。
本改正案を円滑に施行し、子の利益を確保するためには、DV等を防止して安全・安心を確保することが重要です。
法務省としては、こうした環境整備のため、円滑な施行に必要な環境整備等について、関係府省庁と連携して適切に検討してまいります。
次に、離婚後の父母双方を親権者とすることと虐待防止との関係についてお尋ねがありました。
離婚後の父母双方が親権を有することによって、同居親による児童虐待を防止できるかどうかについては、別居親の関与のあり方等を含め、個別具体的な事案によっても異なると考えられるため、一概にお答えすることは困難であります。諸外国でも離婚後の父母双方が親権を有することのみで、同居親による児童虐待を確実に防止できるようになった例があることは承知をしておりません。
次に、裁判所が父母の双方を親権者と定める場合についてお尋ねがありました。一般論として、父母の間に感情的対立があったとしても、相互の人格を尊重し、子の利益のため共同して親権を行使するために最低限のやり取りをすることが可能なケースなどでは、裁判所が父母の双方を親権者と定めることがあり得ると考えております。
このほかご指摘の民事局長がご説明したケースでも同様に考えられ、同居親について親権制限や親権変更がされるべきかどうかは、個別具体的な事案によるものと考えております。
次に、児童虐待防止の観点からの調査・検討についてお尋ねがありました。
離婚後の父母双方を親権者とすることの必要性については、様々なご意見があり、例えばパブリックコメントには、ひとり親世帯では同居親による児童虐待のリスクが高いとのご指摘や、別居親が離婚後も引き続き親権を有し、子との交流を継続することがそのリスクを低下させる、とのご意見も寄せられました。
離婚後の父母双方が親権を有することで同居親による児童虐待を防止できるかについては、個別具体的な事案により異なると考えられますが、法制審議会ではこのような意見等も参考にした上で議論がなされたと承知をしております。
次に、離婚後の父母双方を親権者とすることによる虐待の増加の危険性についてお尋ねがありました。
法制審議会における調査審議の過程では、離婚後の父母双方が親権者となることに対し、児童虐待がある事案への懸念が示され、その対応策も議論されたと承知しております。
本改正案では子への虐待の恐れがある場合のように、父母双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、裁判所が必ず単独親権を定めなければならないとするなど、虐待の恐れがある事案にも適切に対応できる内容となっています。
なお、別居親が親権を有することで虐待の危険性が高まるといった調査結果があるとは承知しておりません。
次に、監護者指定の必要性についてお尋ねがありました。
お尋ねのようなケースは、婚姻中の父母について現行法の下でも生じ得ます。本改正案では、父母相互の協力義務等に関する規定を新設し、親権は子の利益のために行使しなければならないことを明らかにしており、お尋ねのようなケースは、事案によってはこれらの義務に違反することがあり得ると考えています。
いずれにせよ、監護者指定の必要性については、子の利益を優先して具体的な事動に即して判断すべきものと考えます。
次に、共同親権と単独親権の基準についてお尋ねがありました。
共同親権を原則とするという表現は、多義的に用いられているため、お尋ねについて一義的にお答えすることは困難であります。
また本改正案では、離婚後の親権者を父母双方とするか、その一方とするかについて、子の利益のため、父母と子どもの関係、父と母の関係、その他一切の事情を考慮しなければならないと定めており、個別の事案における具体的な事情に即して子の利益の観点から判断すべきこととなります。
次に、同性カップルによる子育てについてお尋ねがありました。
子の養育のあり方について、様々な形態があり得ることは承知をしております。もっとも、本改正案は、父母の離婚に直面する子の利益を確保するためには、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが重要であるとの観点から、民法等の規定を見直すものであります。
最後に、同性婚の法制化を含め、同性カップルが子育てしやすい環境の整備についてお尋ねがありました。同性婚の法制化を含むこれらの問題は我が国の家族のあり方の根幹に関わる問題であり、国民各層の意見を十分に踏まえる必要があると考えております。
以上
誤字脱字がありましたらすみません。
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